即 効 薬
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即効薬 第二話 幼馴染みから Side-A
・序章
「神城ー そろそろ帰るぞー」
「おう、青氏。今行くからちょっと待てって。」
「たまには寄り道でもして帰らないか?」
「あ、悪い。今日は店に出なきゃいけないんだ。」
「そっか… 結構親孝行なんだな…」
「また大げさな… 小遣いの額に関わってくるんだから、半強制的バイトみたいなもんだよ。」
「前言撤回、超現実的だな。でも、たまにはハメ外して遊んだ方がいいぞ? このままじゃ彼女ひとり出来ないまま青春時代とお別れだぞ? それとも、今更募集する必要も無いのか?」
「? 何だよそれは?」
「知ってるぞ? 確か幼なじみだっけ? 近所の、あの小柄で元気で可愛らしい、ええっと…」
「上瀬真奈ちゃん?」
「そう、その子。すんなりとフルネームが出てくるなんてニクいね〜 実はもう彼女になってるとか?」
「あのなー、まだそんなんじゃないよ。ただの幼なじみだって。それより、そんな事言ってるおまえの方はどうなんだ?」
「うっ …きっと、何時か、必ず、俺にも素晴らしい彼女が出来るかもしれないような出会いがあればと心の中で願いつつ…」
「…それって、かなり後ろ向きだぞ? おっと、僕、こっちだから。」
「ああ、じゃあな。それじゃ、また来週。」
…とっさに言ってしまったけど、気付かれなかっただろうか? 『まだ』そんなんじゃない、と。
マナちゃんに初めて治療を行ってから3ヶ月が経った。いい薬を見つけたので、あそこまで酷くなる事はないが、『前みたいに苦しくなるのはヤダ』という事で、あれからも、大体2週間おきに治療を行っている。
治療を始めてから、僕の心の中に、ひとつの感情が現れ始めた。いや、その感情は昔からあったのだが、よりハッキリしてきたと言うべきだろうか?
…そして、今日は金曜日だ…
・第一章 事故
店を閉じてから、マナちゃんの治療が始まった…
「じゃあマナちゃん、次はお尻の中を調べるから。」
「うん…」
僕の言葉にマナちゃんは、ベッドに上半身を乗せて床に膝を付けて、いつものポーズを取った。もう何回も繰り返した事なので、ふたりとも次に何をやればいいのかは完全に分かっている。
「じゃあ、塗るよ?」
「うん、いいよ… ん、んんっ…」
マナちゃんも、この不快感に慣れてきたのか、初めのような大きな声は漏らさなくなってきていた。もっとも、小さな呻き声はどうしても漏れてしまうが…
「んんっ、うくっ、うぁっ…」
そろそろいいかな? 僕はそのまま、中指をマナちゃんのお尻に埋める。
「ひゃあっ!?」
「うわっ!?」
「くぅあぁっ!!」
突然、マナちゃんが声を上げた。僕は驚いて、マナちゃんの中から指を抜いてしまった。けっこう勢い良く抜いてしまったので、それが刺激となって、さらにマナちゃんが声を上げた。
「…マ、マナちゃん?」
「…んにぃ〜… …ビックリした… …いきなりなんて、ひどいよぅ…」
マナちゃんが涙目で僕に抗議してくる。そうか、しまった。いつもやってた事なので、つい『入れるよ』の一言を忘れてしまっていた。
「ご、ごめんマナちゃん… いつもの事だから、うっかりしてた…」
「…うにゅ〜… 今度から気を付けてね…」
「ごめんね… じゃあ、もう1回入れるけど、いい?」
「…うん、いいよ…」
「それじゃあ、入れるよ…」
今度はちゃんと断ってから、マナちゃんのお尻に指を埋める。
「…んんっ、んぁっ、んくぅ…」
ここは大丈夫、っと。僕は更に深く指を埋める。
「…うぁっ、うくぅ、ふぁっ、そこイィ、ん、んぅっ…」
…えっ? 今…
「…マ、マナちゃん?」
「!!」
僕が問いかけると、マナちゃんはビクッと体を震わせ、固まってしまった。 …ひょっとして、感じてた?… …僕の指で?… そう思った瞬間、僕の頭の中で、何かが弾けた…
「んくぁっ!?」
マナちゃんに入っていた指を、勢い良く引き抜く。ただし、今度は全部は抜かない。ほんの少し入ったまま止めて、そしてそのまま、指先を上下左右に動かす。
「くぅぁぁっ! ちょ、ちょっとタカちゃん… うぁぁぁぁぁっ!」
ベッドに顔を埋めているので聞こえにくくなっているが、マナちゃんの声が、僕を更にヒートアップさせる。指先を動かしながら、左手で紙コップからオリーブオイルを掬い取って、マナちゃんに入れている中指に塗り直す。充分滑りが良くなったところで、指を回転させながら、徐々に奥へ押し込んでいく。
「ひぃぁぁぁぁっ! ダッ、ダメ… うあぁぁぁぁっ! うくぁぁぁぁっ!」
中指が全部埋まったら、回転は止めないまま、今度は抜ける寸前までゆっくりと引き戻す。抜けそうになったら、また奥まで… それを何回か繰り返す。
「くぅぅぅぅっ! タ、タカちゃん、も、もう… ひゃぁぁぁぁっ!」
今度は回転させずに、指の腹をお腹の方に押し付けながら、さっきマナちゃんが感じた深さで、素早く抜き差しを繰り返す。同時に、左手の人差し指と中指で、差し込んでいる指を挟むような感じで、お尻の穴の周りを刺激する。
「うくぁっ! く、くぅぅぅぅっ! も、もうダメッ!! ひゃあぁぁぁぁっ!!」
その瞬間、マナちゃんの体が硬直した。僕の指を強力に締め付け、離さない。僕はさすがに指を止める。
「…はぁっ はぁっ はぁっ…」
突然、マナちゃんの体から力が抜けた。息も絶え絶えになり、僕の指をビクンビクンと締め付ける。僕はゆっくりマナちゃんから指を抜いた。
…僕は何て事を… マナちゃんが脱力するのを見て、僕は少し落ち着きを取り戻していた。 …最低だ… …マナちゃんは僕を信じているからこそ、こんな恥ずかしい治療を受けていたのに、僕は…
…? どこからか小さな水音が聞こえる。マナちゃんはまだ脱力して動けないようだ。そのマナちゃんの穿いている白い紙パンツが、黄色く染まっていく…
「…えっ? うわっ!」
僕は慌てて、そばにあったタオルをマナちゃんの股間に押し当てる。
「…えっ? …イ、イヤァッ…」
まだ力が入らないのだろう。全く動かないまま、マナちゃんが力無く悲鳴を上げた。幸い、パンツを染めている黄色い液体の量は、それほど多くなく、ほとんどをタオルで吸収する事が出来た。
「…うぅっ… …ひっく… …うえぇ… …うわあぁぁぁぁぁっ…」
「…ごめんね、マナちゃん… …ごめん…」
さすがに耐えきれず、マナちゃんは泣き出してしまった。マナちゃんが僕の治療を受けているのは、昔、病院でとても恥ずかしい治療を受けた事があるからだ。
『…こんな事、タカちゃんにしか頼めない…』
そんな彼女の信頼を、僕は完全に裏切ってしまった… …本当に、僕は何て事をしてしまったんだ… …僕の目に涙が滲む…
「…うぅっ… …タカちゃん、手…」
「…あっ…」
僕は慌ててマナちゃんの股間から手を離す。タオルはそのままゴミ箱へ捨てて、新しい紙パンツとタオル、ウェットティッシュを用意して、マナちゃんの近くに置いた。
「…マナちゃん、とりあえず、これに着替えて… …僕は部屋から出てるから…」
「…うん… …終わったら呼ぶね…」
僕は部屋から出て、ドアを閉める。涙が流れ、止まらない。 …マナちゃん… …どうすれば僕は償えるのだろうか… …マナちゃんに許して貰えるのだろうか…
「…タカちゃん、もういいよ…」
僕は涙を拭いてから、ドアを開けて部屋に入った。マナちゃんはベッドに腰掛けていた。俯いて、こっちを見ていない。僕は金縛りにあったみたいに、部屋に入口から動けない…
「…タカちゃん、ここ、来て…」
マナちゃんが、自分の隣を示す。僕はゆっくりと、部屋に入っていき、そこに腰を下ろした…
・第二章 自白
しばらく、ふたりとも何も話せなかった。謝りたいのだが、なかなか言葉を出す事が出来ない。時間だけが過ぎていく…
「…タカちゃん、ごめんね…」
先に声を出したのは、マナちゃんだった。しかも、僕に謝っている。 …何で? 悪いのは僕の方なのに…
「…何でマナちゃんが謝るの?… …謝らなきゃいけないのは僕の方だよ… …許して貰えるとは思わないけど… …あんな事しちゃって、本当にごめん…」
「…ううん、そうじゃないの… …お部屋も汚しちゃったし…」
「…それは、僕があんな事しなければ…」
「ちがう! それだけじゃないの!!」
「…マナちゃん?」
突然、マナちゃんが叫んだ。 …それだけじゃないって、どういう事?
「…初めて治療してもらった時、本当は、とても恥ずかしくて、気持ち悪かった… …それでも、タカちゃんだったから、苦しいのよりはずっといいから、治療してもらってたの…」
…確かに、あの治療は恥ずかしくないはずがない。僕だから信じてくれていたのに、僕は…
「…でもね、3回目くらいから、何かだんだんと気持ちよくなってきたの… …こんなの、ひどいよね… …タカちゃん、マナの事心配して、一生懸命治療してくれてたのに、マナは…」
…大分前から、お尻で感じちゃってたんだ… …でも、それならそれで、酷いって事も無いのに…
「…でも、その気持ちよさが忘れられなくて、マナは… …お風呂でお尻に指を入れてみたり… …自分で浣腸を買ってきて、使ってみたり… …そんな事、してたの… …でも、タカちゃんがしてくれる程、気持ちよくなれなかった… …だから… …わざと便秘になって、タカちゃんに治療してもらってたの…」
「…わざと、便秘に…?」
「…うん… …時々、お薬飲むの止めてた…」
…本当は、少しおかしいと思っていた。治療が出来るのは、ふたりの親の帰りが遅くなる金曜日の夕方。治療の時に、どれくらい出ていないかと聞くと、マナちゃんは、必ず『3日』と答えていたから…
「…マナって、ひどいよね… …タカちゃんだって、人のトイレの世話なんかイヤでしょ?… …でも、マナのお腹を治すために、汚いの我慢して治療してくれてたんだよね?… …それなのに、マナは… …気持ちよくなりたいためだけに… …タカちゃんをだまして…」
「…マナちゃん…」
マナちゃんの肩が震え、膝に涙が落ちる… …そうだったのか… …でも僕は、全然我慢なんかしていない… …嫌な事じゃ無かったから…
「…マナ、もう… …ここに来ないから… …もうタカちゃんに会わないから… …お願い、マナの事なんか、もう忘れて… …お尻で感じちゃう変態で、こんなひどい事を平気でやっちゃう女の子の事なんて… …タカちゃんも、本当は治療するの、汚くて、イヤだったんでしょ?… …だから、もう、マナの事なんて…」
「…違う… …そうじゃないよ、マナちゃん… …お願い、聞いて…」
僕は、マナちゃんの肩に、そっと手を回す。手が触れた瞬間、マナちゃんはビクッて震えた。まるで、怯えているかのように…
「…確かに、他の人のトイレの世話なんて、好き好んで出来る事じゃない… …他の誰かにこの治療をしてと言われても、そんな事は絶対やりたくない…」
「…やっぱりイヤだよね… …だから、マナの事なんて、もう…」
「…でもね、マナちゃん… …好きな人が苦しんでいるのを助ける事が出来るんだから、嫌じゃなかったよ… …むしろ、嬉しかった…」
「えっ!?」
全く予想外だったのだろう。驚いて顔を上げ、涙で濡れた顔で、僕を見つめている。そう、マナちゃんが好き。これが、僕の中に昔からあって、最近ハッキリしてきた感情…
「…感じちゃってた、っていうのはちょっと驚いたけど… …少し、嬉しいよ…」
「…タカちゃん…」
「でも、僕にはマナちゃんを『好き』といえる資格なんて無いのかもしれない…」
「…えっ?」
僕はマナちゃんから視線を外し、肩から手を離した。マナちゃんは正直に話してくれた。ならば、僕も全てを話さなければいけない… この事を話せば、僕はマナちゃんに間違いなく嫌われる… それでも、もう黙っているなんて出来ないから…
「僕も…ね、マナちゃんに謝らなきゃいけない事があるんだ… …マナちゃんの治療をしながら、マナちゃんの声を聞いて、マナちゃんが恥ずかしがる姿を見て、僕は… …本当は、興奮してた…」
「…タカちゃん…」
「…それだけじゃないんだ… …僕は、マナちゃんが帰った後、時々… …マナちゃんの穿いていたパンツを使って…」
「…えっ?…」
「…僕は… …僕は…」
「…タカちゃん…」
後は言葉にならなかった。いつの間にか、僕は俯いて泣いていた。堪えてはいたが、涙が零れるのを止める事が出来ない…
マナちゃんは、僕を抱きしめ、そして…
チュッ
…えっ? …唇に、キスされた?
「マナちゃん!?」
「…おあいこ、だね…」
泣き笑いのまま、マナちゃんは僕にそう告げる。おあいこ、って…?
「…おあいこ、って… …何処がなの?… …僕は、信じてくれていたマナちゃんを裏切って…」
「…マナは、気持ちよくなりたくて、エッチな目的でタカちゃんをだまして治療してもらってた… …タカちゃんは、マナを治療しながら、エッチな気持ちになっちゃってた…」
「…でも…」
…僕のしていた事は、そんな事よりも…
「…それに、タカちゃんは、マナの事を好きって言ってくれた… …そして、マナもタカちゃんが好き…」
「えっ!?」
…今、何て?… …マナちゃんも、僕の事を… …本当に?…
「…マナも、タカちゃんが好き… …だから、とっても恥ずかしかったけど… …全然、イヤじゃなかったよ… …とっても、嬉しかった…」
「…マナちゃん…」
「…タカちゃん…」
僕は、思わずマナちゃんを抱きしめる。マナちゃんも、僕の背中に手を回して、抱き返してくれる。そして再び軽く唇を合わせ、抱き合ったままふたりで泣き続けた。今の涙は、さっきまでの後悔と自責の涙じゃない。全て嬉し涙に代わっていた…
・第三章 治療
「…タカちゃん、大丈夫?」
「…うん、もう大丈夫だよ… …ありがとう、マナちゃん…」
「…そういえば、前にマナが病院の事を話した時とは、反対だね?」
「…うん…」
僕達は、もう泣いてはいなかった。安らぎが満ちる中、普通に微笑みながら話している。
「あのね、タカちゃん… …マナのお願い、聞いてくれるかな?」
「うん、何?」
「…やっぱり、今日も治療してほしいの… 今日のためにお薬止めてたから、少し苦しいの…」
「うん。でも、時間が…」
時計を見ると、かなりの時間が経っていた。今からいつもの治療を全部やっていたら、間違いなく母さんが帰ってきてしまう。
「分かってる。けど… ここで止めて、また前みたいに苦しくなるのはイヤ…」
「分かったよ。すごく酷い訳じゃないし、後半の石鹸だけやってあげる。」
「うん… ありがとう…」
僕はいつものように薬を用意する。マナちゃんも、いつものようにベッドに上半身を預けて、床に膝を付いたいつものポーズを取る。さっき、オリーブ油を塗りこんだままだから、改めて塗る必要はないだろう。
「じゃあ、入れるよ?」
「うん、来て… ふぁっ… くうぅぅぅぅ…」
僕はゆっくりと、マナちゃんに差し込んで、薬を注ぎ込んでいく。
「…どう? 苦しくない?」
「うん、苦しくないよ… お尻の中を動き回って入っていくのが、その、気持ちいいの…」
僕の質問に、マナちゃんは顔を赤く染めて答える。
「はい、1本終わり。一度抜くから、お尻、気を付けて?」
「うん、いいよ… うあぁっ…」
いつものように、マナちゃんが声を上げる。やっぱり、この声って…
「マナちゃんのその声、とっても可愛いよ。僕だけしか聞いていないから、我慢して抑えなくてもいいんだよ?」
「も、もう… そんな事言われても、マナ、恥ずかしいから…」
「ちょっとそのままでいてね? もう1本入れるから。」
「…えっ、2本? ずっと1本だったのに?」
そう。2回目の治療から、僕は薬の量を浣腸器に2本ずつから1本ずつに変えていた。初めほど酷くなかったから、それで充分と思ったからだ。だけど、今日は…
「今日は1回目をやってないし、時間がないから、多めに入れて確実に出しちゃった方がいいと思っただけど… もう苦しい?」
「う、ううん、大丈夫。いつもと違うから、ビックリしただけ… それに初めは2本入れたんだし…」
「うん。それじゃあ、入れるけど、いい?」
「うん、いいよ… ひゃぁ… うあぁぁぁぁ…」
「…よし、これでお終い。じゃあ、抜くよ?」
「う、うん… ひゃぁっ…」
「じゃあ、また時間まで、ベッドに横になっててね?」
僕は、マナちゃんに角折りのトイレットペーパーを渡しながらそう言った。
「うん… …あのね、お願いがあるの…」
「…何?」
「あのね… その、えっと… タカちゃんに… ひざまくら、してほしい… …ダメ?」
「うん、いいよ… おいで?」
マナちゃんの顔に赤みが差している。僕は微笑んで、ベッドの上に腰を下ろす。正座では高すぎるので、足を延ばして座る。マナちゃんがゴソゴソとはい上がってきて、僕の太股に頭を置いた。ただ残念な事に、ベッドの位置の関係と、体の向きの関係で、マナちゃんは向こうを向いてしまい、僕からは顔が見えない。もっとも、逆向きだったら、マナちゃんからは僕のお腹しか見えなかっただろうから、まあいいか。そのまま僕は、マナちゃんの頭を撫でてあげる。
「…えへへ、タカちゃんの手、気持ちいい…」
顔は見えないけど、マナちゃんの体から力が抜けていくのが分かる。僕はそのまま、撫で続けた。
「…やっぱり、そうだったんだ…」
マナちゃんが、突然そう呟いた。
「どうしたの?」
「あのね、さっきも言ったけど… マナはね、タカちゃんにしてもらうのがとっても気持ちよかったから、自分で指を入れたり、浣腸を買ってきて使ったり、した事あるの。でも、自分でしても、指は気持ち悪いし、浣腸は苦しいだけだし、ほとんど気持ちよくなれなかったの…」
「…気持ち良くなれなかった?」
「うん、全然気持ちよくならなかったわけじゃないけどね… 何で気持ちよくならないか、ずっと不思議だったの。でも、今日、はっきり分かったような気がするの…」
「分かったって… 何が?」
「…その… …マナはお尻や浣腸が気持ちいいんじゃない… …タカちゃんがしてくれるから、気持ちいいんだ、って…」
マナちゃんの顔は見えない。でも耳まで真っ赤になっているのが見える…
「マナちゃん… …ありがとう、嬉しいよ…」
「…お礼を言うのは、マナの方だよ… …タカちゃん、ありがとう…」
「…マナちゃん、ひとつ、いいかな?」
「…何?」
「薬は、ちゃんと飲んでね? 薬を飲んでいない時に治療出来なくなると、また昔みたいに酷くなっちゃうからね。」
「…うん、でも…」
マナちゃんが、不安そうにそうつぶやいた。何で不安なのかは、何となく分かる。でも、大丈夫だから…
「大丈夫だよ。便秘じゃなくても、治療してあげるから… …気持ち良くなるための治療を、ね?」
「…いいの? …本当に?」
「もちろんだよ。マナちゃんが気持ち良くなってくれるのは、僕も嬉しいから…」
「…ありがとう、タカちゃん… …うぁっ…」
「そろそろ効いてきたかな? トイレに行こうか?」
「う、うん…」
僕は、マナちゃんの手を取って立たせて、そのまま手を引いて、トイレまで連れていってあげる。マナちゃんはトイレに入り、ドアを閉める寸前に、僕に話し掛けてきた。
「タカちゃん… イヤじゃなかったら、耳、押さえてなくていいからね…」
「…えっ?」
聞き直す前に、トイレのドアは閉じられてしまった。中から、パンツを降ろす音、そして… …良かった、いっぱい出たみたいだね… まだその音は途絶えていないけど、僕は一度部屋に戻り、道具を持って洗面台に行き、洗い始める。洗面台はトイレのすぐ近くなので、洗いながらでも、その音は耳に入ってくる…
僕が丁度洗い物を終えたとき、マナちゃんがトイレから出てきた…
「あっ…」
マナちゃんは、恥ずかしそうに僕の手の中の物を見つめている…
「どうだった?」
「…いっぱい出たよ… …音、聞こえたんでしょ?…」
「一応、確認をね。でも、ちゃんと出て、良かったね?」
「…うん…」
どうしたんだろう? マナちゃんは恥ずかしそうな顔をして俯いている。さっきまで、あんなに平気そうにしてたのに…
「…マナちゃん、どうしたの? 何かあったの?」
「あ、ううん… タカちゃんは、それ、汚いって思わないの…? それ、さっきまで、マナのお尻の中に…」
あ、そう言う事か。大丈夫だよ。だって…
「そんな事、思わないよ。だって、マナちゃんのだもん…」
「本当に? …ありがとう…」
「それじゃあ、治療は終わったから、着替えておいで? 僕は、部屋にいるから。」
「うん…」
マナちゃんは、着替えに使っていた空き部屋に入り、ドアを閉める。僕は、そのまま部屋に戻り、浣腸器をしまう。そうすると、着替え終わったマナちゃんがやって来た。
「…タカちゃん、これ…」
マナちゃんの手には、さっきまで穿いていた紙パンツが握られていた。
「ああ、じゃあ、それはゴミ箱に…」
「…ううん… …ベッドの上… …置いておくね…」
そうか… さっき、使ってたって言っちゃったんだ…
「…あ、うん… …でもマナちゃん、いいの?… …僕がそれを使ったら… …嫌じゃないの?…」
「…ううん、恥ずかしいけど、イヤじゃないよ… …それでタカちゃんが、その、マナの事想って、気持ちよくなってくれるなら…」
「…ありがとう、マナちゃん…」
マナちゃんは、俯いたまま耳まで真っ赤になっている。そんなマナちゃんの頭を撫でてあげる。しかし、今のはすごく恥ずかしかったみたいで、顔を上げてもくれない…
「…マナちゃん、1階へ降りよう。」
「…うん…」
僕は、マナちゃんの手を取って、階段を下りる。マナちゃんは、俯いたまま、僕に付いてくる…
・第四章 恋人
1階に下りても、マナちゃんは耳まで真っ赤になって、俯いたままだった。うーん、どうしようか… …よし。僕は冷蔵庫から、スポーツドリンクの缶を取り出す。そして、そっとマナちゃんに近づいて行って、首筋に当てた…
「ひゃゎわっ!?」
マナちゃんは、飛び上がって驚き、僕の方を見る。
「はい、マナちゃん。」
「うにゅ〜、ビックリしたよぅ… でもありがとう、のど乾いてたんだよ〜」
驚いたせいだろう、恥ずかしさが吹っ飛んで、いつものマナちゃんに戻っている。僕達は、並んで椅子に腰掛け、無言でスポーツドリンクを飲んでいた。
「ねえ、マナちゃん。」
「んに?」
「ひとつだけ、ちゃんと言っておきたい事があるんだ…」
「…な、何?」
マナちゃんが、不安そうに僕を見つめる。僕は、マナちゃんの瞳を見つめながら、意を決して、こう言った。
「マナちゃんの事が大好きです。幼馴染み、友達としてだけじゃなく、恋人として付き合ってください。」
「タ、タカちゃん…」
マナちゃんの顔が真っ赤になる。そして、瞳が涙で潤む。
「…さっきのは、とても告白とは言えなかったからね。大事な事だから、ちゃんと言っておきたかったんだ…」
マナちゃんは僕に抱きついてきた。顔だけ上げて、僕を見つめて…
「…マナも… …マナも、タカちゃんの事が大好きです… …マナの恋人になってください…」
「マナちゃん…」
「タカちゃん…」
僕はマナちゃんを抱き返し、そのままそっと唇を重ねる。ふたりの瞳から、涙が零れる…
「…タカちゃん… …いつからマナの事、好きになったの?…」
「…昔から、なんとなく好きだって感じはあった… …それが、はっきりと好きだって分かったのは、治療を始めてから…」
「…うん… …マナも同じ… …なんとなく好きだったから、タカちゃんに治療してもらえた… …それから、本当に好きに… …だから、マナのファースト・キス… …タカちゃんに、あげたんだよ…」
…そっか。さっきのが、初めてだったんだ… …とっても嬉しいよ。だって、僕も…
「…僕も、初めてをマナちゃんに貰ってもらえて、嬉しいよ…」
しばらく抱き合った後、マナちゃんは、僕からゆっくりと離れた…
「ご、ごめんね、タカちゃん… 今日、もう遅いから… もう帰って、パパとママの夕ご飯の準備しないと… ホントにごめんね、タカちゃん…」
「謝らなくていいよ… うちの父さんと母さんも、もうすぐ帰ってくるし… でも、その代わりって訳じゃないけれど…」
「な、何…?」
「明日、一緒に出かけようね? 何処でもいいから、ふたりでデートしようよ?」
「うん! 絶対だよ!」
「うん、絶対にね。それじゃあ、家まで送っていくよ。」
「えへへ、ありがと〜」
そうして、マナちゃんを家まで送ってあげる。3軒隣なのでたいした距離じゃないが、一緒にいられる時間が少しでも長くなるのが嬉しいから…
…幼馴染みから恋人へ、か… …それも、普通ではあり得ない、不思議な縁で…
・終章
「彼女募集する必要、無くなったみたいだな?」
「な、何だよいきなり…」
月曜日の昼休み、僕は青氏とふたりで弁当を食べていた。その時に青氏からの、あまりにも唐突な一言。さすがに固まりかけたが、平静を装って聞き直す。しかし…
「彼女、出来たんだろ? 思いっきり浮かれてるから、見れば分かるぞ。」
「…僕、そんなに浮かれてた?」
「まあ、少しだけな。それに、今だって彼女の事は否定しないし。」
「うぁ…」
こ、こいつってこういう事にはピンポイントに鋭い…
「で、誰なんだ? お前が射止めた意中の人は? それとも、お前が射止められたのか?」
「ばっ馬鹿、これ以上言えるかよ…」
「じゃあ当ててやろうか? 幼馴染みの上瀬真奈ちゃんだろ?」
「な… な… な…」
何故、そこまで分かる! そう叫びたかったが、言葉が出てこない。叫んだところで、青氏の言葉を肯定する事にしかならなかったが…
「自分で白状したも同然なの、気付いてないのか? 金曜日、俺が『実はもう彼女になってるとか?』って聞いたら、『まだそんなんじゃない』って答えたじゃないか。『まだ』って事は、そうなりたいって気があったんだろ?」
「うぁ…」
そうか… …気付いてないかと思ってたら、しっかりと気付かれてるし…
「まあ、俺は口が堅いからな。恥ずかしいってのなら、誰にも言わないよ。その代わり…」
「な、何だよ… その気味悪い目つきは…」
「俺が言いたい事はひとつだ… 頼む! 女の子を紹介してくれ!」
「…はぁ?」
「俺も彼女が欲しいんだ! 頼む!」
「…うーん…」
一応考えてはみるが、身近に恋人募集中の女の子っていたかな?
「今心当たりがなければ、すぐにとは言わないから! 頼む!」
「…分かった分かった。心当たりが出来たらすぐ紹介するから、少し落ち着け。」
「ありがとう! 心の友よ!」
「…ところで、そんな事を大声で叫んで、恥ずかしくないのか? 聞いてるだけで、結構恥ずかしいんだけど…」
「…あ…」
…言い忘れていたが、ここは教室。当然、昼食を食べているのは僕達ふたりだけではない。僕の話の時は、まあ、こそこそ話してたから大丈夫だろう。けど、今の青氏の魂からの叫びは… …当然、辺りからクスクスと笑い声が聞こえている…
−終−
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