SPACE銀河 Library

作:水薙紫紋

即 効 薬

即効薬 第一話 幼馴染みで Side-B


・序章
「ふにゅ〜」
「いらっしゃいま… あ、マナちゃん?」
「ふにぃ〜 タカちゃん、いつものアレ、ちょうだい。」
「うん。60錠のだよね?」
「うん…」
「でも、こんなに使って大丈夫? 前に買ってから1ヶ月半しか経ってないよ?」
「大丈夫じゃないけど、しょうがないよ…」
「そっか… でも、あまり体にいい物じゃないから、気を付けてね。」
「うん… ありがと…」
「それじゃあ、お大事にね。」
「うん、ありがとね。さよなら〜」

 わたしは上瀬真奈(かみせ まな)。いま高校2年生。商店街の中にある家に住んでいるの。パパとママは共働きで、毎日8時過ぎにならないと帰ってこないの。特に金・土は忙しくて、大体10時過ぎになっちゃう。まあ日曜日は絶対にお休みだからまだいいんだけどね。そんなパパとママを助けたくて、マナは家事のほぼ全般を受け持つ事を中学校に入ってから宣言したの。ほぼ、というのは、少し事情があって、金・土はほとんど動けなくなっちゃうから…
 さっきマナがいたのは、3軒隣にある薬局で、水・木・金の夕方と日曜日は、マナの幼なじみのタカちゃんが店番をしているの。幼なじみのマナから見ても、なかなか格好良くて、優しくて、なんとなく頼っちゃいたい感じがする男の子。マナは、いつもここでお薬を買っているの。マナは、昔からひどい便秘で、もう普通に出す事はほとんどできない。だから、金曜日の夕方に下剤を飲んで、1週間分を一気に出してるの。昔は説明書通りにお薬を飲んでいれば出たんだけど、だんだんと効かなくなって、今は1回に10錠くらい飲まないと出なくなっちゃっている。少し量を減らして試した事があるんだけど、お腹が痛くなるだけで全然出てくれないから、かえって苦しかった。あの時は、しょうがないから、さらにお薬を飲み足して何とか出したの。でも、そんな量のお薬が便秘を治してくれるだけで終わらなくて、その後丸1日、つまり土曜日の夜までトイレからほとんど身動きできなくなっちゃうの。家には1階と2階にトイレがあるから、パパとママが使えなくなるって事はないれど…
 今日、とても困った事がおこっちゃった。いつも通りにお薬を飲んでも、全然出なかったの。お薬を追加しても出ないと怖いから、一気に5錠追加して飲んじゃった… もうイヤだよぅ、こんなに苦しいのは… マナの体って、もうずっとこのままなの? もう、こんなお薬飲みたくない… でも、飲まないと全然出てくれないし、それはもっと苦しいから、もっとヤダ… もう次からは15錠飲むしかないのかなぁ?


・第一章 決意
 1ヶ月後。
 1回に15錠も飲んじゃうから、60錠のお薬は1ヶ月で無くなっちゃった… 無くなっちゃったら仕方ないから、またタカちゃんのお店へお薬を買いに行かないと…
「うにぃ〜」
「いらっしゃいま… あ、マナちゃん? どうしたの?」
 タカちゃんが不思議そうな顔でマナの事を見てる。いつもは1ヶ月半ごとにお薬を買うのに、今回は1ヶ月しかたっていないから、そのせいかな?
「うにゅ〜 タカちゃん、いつものアレ、ちょうだい。」
「えっ!? だって、前に買ってからまだ1ヶ月しか…」
「それが… いつもの量じゃ効かなくなっちゃって…」
「効かないって… 今1回に何錠飲んでるの?」
「…15錠…」
「…マナちゃん、そんな量を飲んでると、本当に死んじゃうよ? 少し量を減らすとか…」
 タカちゃんは、本当に心配そうにマナの事を見てる。マナも、本当はお薬の量を減らしたい。飲みたくない。だけど…
「うん… でも、この位飲まないと出てくれないし… でも、量を減らすとお腹が痛くなるだけで全然出なくて、かえって苦しいの。」
「うーん… やっぱりちゃんと病院で…」
 病院!!
「ヤダッ!! 絶対行かないっ!!」
 タカちゃんのその言葉に、マナは思わず叫んでいた。もうあんな思いは絶対にイヤ!!
「…なら、こっちの薬は? こっちの方がお腹に優しいし。」
「その辺のお薬は前に試したけど、ダメだったの。普通に飲むと全然効かないし、多く飲んでもお腹が痛くなるだけだし…」
「じゃあ… これは?」
「あ…」
 一瞬で、顔が赤くなるのが分かる。タカちゃんが取り出したのは、一番恥ずかしいお薬…浣腸だった。下剤を飲むのがイヤで、でもタカちゃんにそれを使っている事を知られるのもイヤで、学校の帰りに隣町の薬局まで行って、買ってきて使った事があるの。それでも…
「…それも前に試したけど、すぐにお腹が痛くなって、ほとんど我慢できなかったの。結局、お薬しか出なかったし…」
 ちゃんとタカちゃんに言おうと思うんだけど、恥ずかしくて、なかなか言葉が出てこない…
「殆ど我慢出来なかったって、どれ位?」
「…1分くらいしか…」
「それじゃあ効かないよ。もっと我慢しないと。」
「…だって、無理だよ… …あんなに苦しいの… …自分じゃ…」
「…なら、僕がしてあげようか?」
「!?」
 バッ、バカ! いきなり何て事言うのよ!! スカートとパンティを脱だマナに、後ろからタカちゃんが… そんな光景が一瞬頭に浮かんじゃって、さらに顔が熱くなっちゃう。でも… タカちゃん、昔からマナのお腹の事、知っているんだよね? そして、本当にマナの事心配してくれているんだよね? マナも、もうあんなに苦しいお薬飲むの、イヤだから…
「…うん、いいよ… …タカちゃんがしてくれるなら…」
「えっ!?」
 気が付くと、マナはその言葉を口に出していた。タカちゃんも意外だったみたいで、思わず聞き返してくる。でも、本当にタカちゃんがしてくれるなら…
「…お願い。それ、マナに使って… …マナも、もうあんなに苦しいのイヤだから…」
 マナが自分でしゃべっているのに… とっても恥ずかしい… 顔が熱い… きっと、もうユデダコみたいに真っ赤になっちゃてるのかな…
「…うん、分かった。 …ただ、閉店とか色々準備があるから、6時頃にまた来てね?」
 時計を見ると、5時半を少し過ちゃっている。あと約30分…
「…うん、それじゃあ、また後でね…」

 …ダッシュで家に帰って、玄関に飛び込んだ。これから、その、あれを、するんだよね? するって事は、ズボンとパンティを脱ぐんだよね? 脱いじゃうと、全部タカちゃんに… そうだ、その前に、きれいにしておかないと… あまりの事に混乱していたみたい。マナは、シャワーを浴びて、体中をきれいにした。そして、見られてもいいように、一番かわいいパンティに、脱ぎやすいようにズボンからミニスカートへ着替えた。そうしているうちに、その時間はやってきちゃった…


・第二章 検査
「うにぃ〜 タカちゃん、来たよ〜」
 6時ピッタリに、マナは、再びお店に行ってタカちゃんを呼んだ。タカちゃんも恥ずかしいのかな? なんとなく顔が赤い…
「うん。じゃあ、僕の部屋で…」
「…うん…」
 うなずいて、タカちゃんに続いて2階へ上がった。2階には、タカちゃんの部屋と空き部屋、そしてトイレと洗面台がある。 …き、緊張するよ〜 タカちゃんの部屋の前まで来ると、さすがに恥ずかしくなって、動けなくなっちゃった… …これから、タカちゃんに全部…
「じゃあ、マナちゃん。まずコレを。」
「ふにゅ? 何コレ?」
 タカちゃんが持ってきたのは、白い短パンだった。手にとってみると、変わった感触がする。これって、紙?
「コレは、病院で使う使い捨てのパンツだよ。コレなら汚れても平気だし、穴が後ろ向きになるように穿けば、お尻しか見えないから… 向こうの部屋を使っていいから、スカートとパンティを脱いで、コレに着替えてきてね?」
 穴? よく見ると、ちょうどお尻の穴の部分に縦に切れ込みが入っている。
「うん。ありがと…」
 パンツを受け取って、隣の部屋にはいる。ドアを閉めて、スカートとパンティを脱ぐ。せっかくかわいいのはいてきたのに… じゃなくって! あわててさっき貰った紙のパンツをはいた。これをもらわなかったら、全部タカちゃんに見られちゃってたんだよね… 気遣ってくれてるんだ… …それとも、見たくないのかな? って、いつまで混乱してるのマナは! ス〜ハ〜ス〜ハ〜 深呼吸をして何とか落ち着きを取り戻す。しっかりしろマナ! 本当に恥ずかしいのは、これからなんだから…
「にゅ〜 着替えてきたよ〜」
 着替え終わって、タカちゃんの部屋に戻る。なんだか照れくさいよ…
「それじゃあ、ベッドの上に横になって、お腹を見せてね?」
「うん。」
 タカちゃんの言葉に従って、ベッドの上に仰向けになる。タカちゃんは、おへその辺りまで上着をたくし上げて、脇腹を指で押している。何だかくすぐったい。そのままタカちゃんの手は少しずつ下がっていった。ウエストの少し上に来た途端…
「痛っ!」
 まるで針で刺されたみたいな痛みが走って、マナは思わず悲鳴を上げていた。タカちゃんが押した途端、何か硬い物とぶつかって、痛みが… …えっ? この硬いのって、もしかして… うそ、こんな上まで硬いのがたまってるの!? タカちゃんは、今度は軽く押したまま、下の方に向かってお腹をなでていった。そうすると、お腹の中からコロコロした感じが伝わってくる。マナのお腹って、こんなにひどくなってたんだ…
「…よし。じゃあ次は、四つん這いに…じゃなくて、ベッドに上半身を乗せて床に膝を付いて。」
「…う、うん…」
 タカちゃんの言うとおりの姿勢をとる。四つんばいになったときの手の代わりに、ベッドが体を支えてくれているので、四つんばいよりは楽。でも、腰から下は四つんばいと変わらない、お尻をつき出した格好…
「そのままちょっと待っててね。」
 とうとうされちゃうんだ。タカちゃんは部屋の隅の方で何かをいじってる。きっと、浣腸の準備をしてるんだ。そのままお尻に入れられて、とってもお腹が痛くなって… うぅぅ、やっぱりヤダよぅ… でも、タカちゃんの次の言葉は、マナが全く予想していないものだった。
「じゃあ今度は、お尻の中を調べるから。」
 お尻の…中!?
「えっ!? ちょ、ちょっと、お尻の中って!?」
 え? え!? いったい何!?
「お尻の中に傷がある状態で浣腸すると、薬によっては刺激が強すぎて痔になっちゃう事があるんだ。だからその前にちょっと見せてね? 痔になりたくはないでしょ?」
「…み、見るって、どうやって…?」
「目で見る訳じゃないから安心して。少し指を入れて触ってみるだけだから。」
 指を入れる!? あの先生みたいに!? こ、怖い! もうあんな痛いのはヤダ!!
「指!? ヤ、ヤダ! 怖いし、痛いし、汚いし、そ、それに…」
 …それに、恥ずかしい… …もう最後は、声になっていなかった。タカちゃんには届いていないだろう。
「大丈夫。潤滑剤を塗るから痛くないし、手袋してるから汚くないよ? 確かにちょっと気持ち悪い感じがするけど、心配しないで?」
 …タカちゃん… マナの事心配して、してくれるって言ってくれたんだよね? 恥ずかしくないように、このパンツ用意してくれたんだよね? …信じて、いいんだよね?
「…うん、わかったよ…」
 顔がユデダコになっていくのが分かる。恥ずかしくて顔を上げていられない。顔をベッドに埋めて、タカちゃんから隠しちゃう。あれ、何のにおいだろう? これって、タカちゃんのベッドだよね… じゃあこれは、タカちゃんのにおい… …不思議。だんだんと落ち着いてくる。何でだろう…?
「マナちゃん、足を少し開いて力を抜いて。このままだと見られないよ。」
 マナの足は、ぴったし閉じていた。恥ずかしいけど、少し足を開く。でも、どうしても体の力を抜く事ができない。やっぱ、恥ずかしいよ…
「じゃあ、潤滑剤を塗るからね。」
「ひぁっ! みゅっ! う、うあぁぁぁぁぁっ!」
 タカちゃんが、マナのお尻を開いて、お尻の穴にあったかくてヌルヌルした液体を塗りつけてくる。タカちゃんに触られる度に、頭の中に電気が走るような感じがして、思わず声が出ちゃう… …何だか変な感じだよぉ… …お尻の穴がムズムズする… …あ、また塗ってる… …今度は、お尻の穴が熱い…
 ハァ… ハァ… タカちゃんが塗り終わった頃、マナの息は完全に上がっちゃってた。
「じゃあ、潤滑剤塗り終わったから、指を入れるよ?」
「ハァ… ハァ… …うん、いいよ…」
 …来ちゃう、タカちゃんが入って来ちゃう… …っ! …お尻の穴に指の先っぽが…
「う、うあぁぁぁぁぁっ! くうぅっ!」
 は、入って来たっ! あっ、熱い! まず感じたのは、とんでもない熱さだった。次に、全身に鳥肌が立つような感じがして、背筋がザワザワする。 …でも、本当に痛くないよ…
「よし、入ったよ。どう? 痛くない?」
「い、痛くはないけど、あ、熱いし、気持ち悪いよ…」
「少し我慢してね? じゃあちょっと動かすけど、痛かったら言ってね?」
「えっ? ひゃあっ! くあぁぁぁぁぁっ!」
 タカちゃんが、お尻の中でクルンと指を回した。さっきと同じとても強力な違和感。ううん、それが何倍にもなって、マナに襲いかかってくる…
「痛くない?」
「う、うん …大丈夫、痛くない…」
 とっても気持ち悪いけど、本当に痛くないよ…
「うん、じゃあ、もう少し深く入れるよ?」
「え? う、うん、いいよ… うくぁぁぁぁぁっ!」
 タカちゃんが指をもっと深く入れてきた。やっぱり気持ち悪い。でも、指を回すより、そして初めに入れた時よりも気持ち悪くない。これなら大丈…
「きゃぁっ!!」
「あ…」
 突然、頭の中に星が飛び交うような強力な刺激が襲いかかってきた。い、今のは? お腹の中で、コツンって…
「ひぁっ!! みゅっ!! くぅあっ!!」
 ま、また… しかも今度は続けて何回も… 何かお腹の中の硬い物を突つかれたみたい… …お腹の中の硬い物? それって… …イ、イヤァッ…
「どう? 痛くなかった?」
「…だ、大丈夫だよぉ… …痛くないよ… …で、でも、今のは、すごく気持ち悪いよ…」
「ご、ごめんね… じゃあ、抜くよ?」
「う、うん… うあぁぁぁぁぁっ!」
 指が引き抜かれている間、またさっきの強力な刺激が襲ってきて、声が出ちゃう。 …でも、さっきほど辛くない、お尻から出ていく感覚、入ってくるよりはいいかも… …あれ、なに、この臭い… …もしかして、マナの中の臭い?
「…あっ? ヤ、ヤダッ!」
「大丈夫、気にしなくていいよ? それより、お尻に異常が無いみたいだから治療出来るけど、少し休もうか?」
 パチンパチンとゴムの音が聞こえてくる。ちらっと後ろを見ると、タカちゃんが手袋を脱いでいた。そして、くるりとひっくり返して、外側と内側を入れ替えて、縛ってゴミ箱へ捨てた。そうすると、すぐにさっきの臭いはしなくなった。 ハァ… ハァ… まだ、呼吸が荒い。全然収まらない。少し休みたい。でも、恥ずかしいし、お腹が苦しいから、早く終わらせたい…
「ううん、大丈夫。早く楽になりたいし… おねがい、このままやっちゃて…」
 マナは顔を上げて、タカちゃんにお願いした…


・第三章 治療
「うん、わかったよ。じゃあ、準備をするから、ちょっと待っててね?」
 タカちゃんは、また部屋の隅の方へ行っちゃった。さっきは気付かなかったけど、そこにはティッシュみたいな箱と、大きなクーラーボックスと紙コップ、大きな注射器みたいな浣腸器がが置いてあった。タカちゃんは、箱から新しい手袋を取りだして両手にはめた。まるで手術前のお医者さんみたい。ボックスの蓋を開けると、もわっと湯気が上がる。お湯が入っているのかな? タカちゃんは中から大きな黄緑色の瓶をとりだして、黄緑色のどろっとした液体を紙コップに注いでいる。そして、大きな注射器みたいな浣腸器を手に取った。
「な、何? その黄緑色の瓶?」
 ただ待っているのが怖かったので、タカちゃんに正体不明の液体の事を聞いてみる。
「これから使う浣腸の薬だよ。」
 言いながら、タカちゃんはその黄緑色の液体をコップから浣腸器に吸い上げている。アレをマナに入れるの? あの液体はいったい何?
「でも、普通の浣腸って、そんな色してないよ?」
「うん、普通使わないけど、時々病院で使われる浣腸なんだって。効き目は弱いから、お腹も痛くならないよ。その代わり、普通の薬より多めに入れないと効かないけどね。この浣腸器で2回入れるから。」
 浣腸なのに、お腹が痛くならないの? でも、あの大きい浣腸器で2回分… そんなにいっぱい入るの? どれくらい入れちゃうの?
「そ、それに2回って… いつものカフェオレパックくらい?」
 いつもお昼に飲んでる、500mlの紙パックのカフェオレが頭に浮かんだ。もし、そんなに入れられたら、マナのお腹、パンクしちゃう…
「まさか、そんなに多くないよ。ほら、この紙コップ1杯分だから、大体牛乳のブリックパックくらいだね。」
 紙コップ1杯分、あの小さなパック1個分。それくらいなら、普通に入っちゃうかもしれない…
「よかった、思ったより少なそう… でも、本当に痛くないの?」
「大丈夫だよ。量が多いからお腹が膨らむ感じがすると思うけど、そんなに痛くないよ。さっき、これでお尻の中を調べたけれど、痛くなかったでしょ?」
「あ… さっきの潤滑剤?」
「そうだよ。これで滑りをよくして、出しちゃうからね。普通の浣腸みたいに、お腹を刺激して出すんじゃないから。」
「よかった…」
 下剤のどうしようもない腹痛もイヤだけど、浣腸の腹痛と我慢も本当はイヤ。それが痛くないのなら、とっても嬉しいよ…
「それじゃあ、始めるよ?」
「う、うん…」
 でも、やっぱり恥ずかしいよ… また、マナはベッドに顔を埋める。こうしてタカちゃんのにおいをかいでると、少し落ち着く。 …あ、タカちゃんがお尻を開いた… …っ! …お尻に先っぽが…
「じゃあ、入れるよ?」
「…う、うん… うぅっ うぁっ! くあぁぁぁぁぁ…」
 また、お尻から入ってくる。指より小さいけど、やっぱり熱い。そして、お尻から暖かい液体が逆流してくる… き、気持ち悪い… 言葉では言い表せない気持ち悪さが、絶え間なくマナを襲ってくる。それはお尻の中を動き回り、お腹へ向かって進んでいく… その間、気持ち悪くて呻き声を止める事ができない…
「よし、1本目終わり。一度抜くから、お尻、気を付けて?」
「う、うん… ふぁっ!」
 抜かれるとき、一瞬、全身の力が抜けそうになる。あわててお尻を締めて、漏らさないようにする。後ろで、ズズッという、何かを吸い込んでる音が聞こえる。タカちゃんが、2回目の準備している…
「どう? 痛くない?」
「痛くないけど、入って来る時の感触が、気持ち悪いよぉ… お腹の中で、動いてるの…」
「…悪いけど、そればっかりは仕方ないから… じゃあ、次を入れるよ?」
「い、いいよ… ひあっ くぁっ! うあぁぁぁぁぁ…」
 また、さっきと同じように、気持ち悪さがマナを襲う。気持ち悪さはさっきと同じだけれど、いっぱいお薬を入れたせいか、お腹がとっても張ってる。少しでも気を抜くと漏れちゃいそう…
「はい、おしまい。また抜くから、気を付けてね?」
「い、いいよ… くぁっ!」
 また、一瞬力が抜けちゃう。そして、お尻に今までと違う違和感が… お尻が何かヌルヌルしてる。 …え? 少し漏れちゃった? ヤダ… 後ろで何かガサガサ音が聞こえ、手の中に何かを握らされる。 …紙?
「マナちゃん、さっきの潤滑剤でお尻がベトベトだから、一度拭いて? お尻の力を抜かないようにね?」
「う、うん…」
 渡されたのは、トイレットペーパーみたい。そういえば、お尻の中を調べるときにいっぱい潤滑剤を塗ったっけ… それでヌルヌルなんだ… そのままの姿勢で、お尻を拭いた。何かで押さえないまま動いたら、漏れちゃいそうだから… 拭き終わったら、タカちゃんがマナの手からトイレットペーパーを取って、捨ててくれる。そして、マナの手に、また何かを握らせる。今度は、四角く折ったトイレットペーパー?
「…? これ何?」
「しばらくそれでお尻を押さえてて。何かの弾みに漏れるといけないから。それと、そのままベッドに横になって。」
「う、うん… わかった。」
 お尻を押さえて立ち上がり、ベッドに仰向けに寝転がる。
「おっと、そうじゃなくて、左側が下になるように。」
「う、うん… でも何で?」
 体制を変えながらタカちゃんに聞いてみる。
「人間の腸は、こんな風になっているから」
 タカちゃんは、マナのお腹を指差し、そして左回りに指を動かした。これって大腸の形?
「こんな風に左側を下にした方が、薬が奥まで流れて行きやすいんだ。」
 しゃべっている間に、お尻からお腹の方へ何かが動く感じがして、お尻が少し楽になった。
「あ、そうか。ほんとだ、奥に流れていく感じがする。」
 後は、時間が来るまで待っていればいいんだよね?


・第四章 告白
「ねぇ、どのくらい我慢すればいいの?」
 横になったままだからあまり動けないけど、マナはタカちゃんを見上げて聞いてみた。
「んー、我慢出来なかったら途中で行っちゃってもしょうがないけど、大体1時間位かな?」
「え〜? 何でそんなに?」
「時間が経つと、薬が染み込んで、出やすくなるんだって、本に書いてあったから。」
「あ、なるほど。んんっ…」
「大丈夫? 苦しくない?」
「ん、大丈夫だよ。ちょっとお腹が張ってるけど、全然痛くないし。」
「そっか、良かった。なるべく苦しい思いはしてほしくなかったから。」
 タカちゃんが、マナの頭の下に枕を入れてくれる。そして、浣腸器を持って立ち上がる。
「あっ… 何?」
「道具を洗ってくるよ。すぐに戻るから。」
「あっ… うん。」
 『道具』… アレの先っぽが、さっきマナの中に入ってたんだよね? つい、そんな事を考えちゃって、マナの顔はまたユデダコになっちゃっていた。しばらくすると、タカちゃんが戻ってきた。浣腸器をケースのスタンドに置いて、手袋を脱いで捨てる。
「1時間もこのままかぁ。苦しくはないけど、なんか退屈。」
「そうだね、テレビでも観る?」
「ううん、今の時間、あんまり面白い番組無いから。それよりお話ししない?」
「うん、そうしようか。」
 今の時間は本当に面白い番組がない。でも、それ以上に、この状況の中で、ふたり無言でテレビを観ているのはとても気まずいから。タカちゃんはベッドの横の床に腰を下ろした。タカちゃんの顔が、ちょうどマナの顔と同じくらいの高さになった。これで無理に見上げなくても話せるよ。
 …ええっと、何を話せばいいのかな? いざ話そうとすると、それはそれで気まずい… 結局、口から出たのは、マナのお腹の事だった…
「…何でいつも、こんなにひどい便秘になっちゃうのかなぁ…」
 昔から野菜は大好きだし、運動も大好き。トイレを我慢して出なくなっちゃうって人もいるけれど、マナは大丈夫。少し恥ずかしいけど、もし行きたくなったら、授業中でもトイレに行っちゃうし… 本当に便秘になる原因が思いつかないよ…
「うーん… 何でだろ? たぶん水分不足かな? 無理してでも多めに水分を取らないと。」
 言われてみれば、普段あまり水分を取ってなかったかもしれない。休み時間はつい友達と話し込んじゃって、水を飲む暇が無くなっちゃうから… そんな所まで気が付くなんて、やっぱりタカちゃんってすごい。
「うみゅ〜 気を付けてみるよ。」
「あとは毎日出ないから栓になっちゃっているのと、下剤の使いすぎかな?」
「ふぇ!?」
 下剤で便秘? 下剤って、便秘を治すお薬だよね? それで何で便秘になっちゃうの?
「強い下剤は腸に刺激を与えて、無理矢理働かせて外に押し出す薬なんだ。無理矢理働かされた腸はその反動で一時的に働きが鈍くなっちゃうから。しばらく経てば元に戻るけど、今の薬の使い方だと、元に戻る前にまた弱めちゃって、尚更出なくなる悪循環なんだ。その結果薬の量が段々増えちゃったでしょ?」
「…そうか、それであんな量に…」
 …そうだったんだ… マナは、便秘を治そうとして、余計にひどくしちゃってたんだ… でも、下剤をいっぱい飲まないと絶対に出ないし… …ひょっとして…
「…ひょっとして、マナのお腹、もう元に戻らないのかな…?」
 …本当に、もう元に戻らなかったら、マナはどうすればいいの? いつもあんな苦しい思いをして、それが余計に便秘をひどくしちゃって、ひどくなったからまたお薬を増やして飲んで、また苦しんで… そんなの、ヤダよぅ…
「大丈夫だと思うよ? 刺激の少ない薬で栓になる前に出してれば、お腹も回復してくると思うし。出来ればちゃんと、病院で刺激の少ない下剤を処方してもらって…」
 病院!?
「ヤダッ!! 病院は行かないっ!!」
 病院で… また先生に… それだけは絶対にヤダッ!!
「…じゃあ後で、うちの薬から良さそうな物を選んでおくね?」
「…うん、ありがと…」
 う〜、何か気まずいよぉ… タカちゃんがマナの事をチラチラと見てる。やっぱり、病院を何でそんなにイヤがるのかが気になってるのかなぁ…
「…昔、1回だけ便秘で病院に行った事があったの…」
 …いつの間にか、マナはあの時の事を話し出してた… …何でだろう? 思い出すのもイヤなのに…
「小学校6年の時に、あまりにも便秘がひどくて、そこの診療所に行ったの…」
 そこの診療所というのは、ここから歩いて5分位の所にある診療所の事。何でも診てもらえる事と、場所が近いから、この辺の人は大体何かあると、そこに行くの…
「そしたら、ベッドの上で、スカートもパンティも脱がされて、四つんばいにされて、突然お尻に指を入れられて、その後浣腸されたの… 先生から、さっきと同じくらいの大きさの浣腸器に半分くらい入れられて… 他の患者さんもいる中で、下半身裸のまま10分くらい押さえられて… そして、そのままの格好で待合室を通ってトイレに行かされたの… そして、看護婦さんに出すとこまで見られて…」
「…そんな事が…」
 …とっても恥ずかしかった… もうその頃、マナは子供じゃなかった。まだ大人にはなってなかったけど、少なくとも、子供じゃなかった。 …マナの左のベッドには、男の人が点滴を受けてた。右のベッドには、5歳くらいの女の子がお尻に注射をされて、泣いていた。高校生くらいだろうか、その子のお兄ちゃんが付き添っていた。診察室の前のベンチには、おばさんとおじいちゃんがいた。そして待合室には、同い年位の男の子と女の子、4歳くらいの男の子とその子のパパがいた。その中でマナは、ベッドの周りのカーテンも降ろしてもらえず、男の先生からパンティもスカートも取られて、浣腸されて、待合室を抜けてトイレへ… いつ男の人が入ってくるかもしれない共用のトイレで、看護婦さんが、『どのくらい出たか確かめるから』っていって、ドアを閉めさせてくれなかった。そして、見られながら…
「結局出なかったんだけれど、そのままの格好でまた待合室を通ってベッドまで戻されたの… そしてもう1回、今度は1本入れられて、また10分くらい我慢させられて、その前と同じようにトイレに行かされたの… 看護婦さんと一緒に… そして、また見られて…」
 終わった後、看護婦さんは、隠す物ひとつ貸してくれなかった。そのままの格好で、待合室を抜けて、またベッドへ… そして、またさっきと同じ事の繰り返し…
「…いくら何でも無神経すぎる…」
 タカちゃんは、マナの事をまっすぐ見つめて、マナの話を聞いてくれている。
「結局、それでも出なかったの… またそのままの格好でベッドに戻されて… そしたら先生が、『もっと我慢しなきゃ駄目じゃないか』っていって、今度は四つんばいじゃなくて、仰向けにさせられて両足を持ち上げられたの… イヤがったけど、看護婦さん達に両足を押さえられて、今度はいきなり2本も入れられたの… そして、『20分はこのままで』って先生が言うの もうその時はお腹が千切れそうなほど痛かったのに…」
「…酷い…」
 視界がぼやけてる… 目が涙ぐんでるんだ… 声もだんだんと震えてくる…
「…マナちゃん… …もう、喋らなくてもいいよ…」
 それでも、マナは話し続けてる… …何でなんだろう?
「それでも何とか時間が来たんだけど、今度はトイレに行かせてもらえなかった… 『これじゃあトイレまで歩けそうにないね』って言われて… お尻に便器を当てられて… そのまま… ベッドで…」
 左のベッドの男の人は、もういなくなっていた。でも、そのベッドには、さっき待合室にいた男の子が点滴を受けていた。チラチラとこっちを見ているのが分かる。右のベッドにも、待合室にいた女の子が、手首に包帯を巻いてもらっていた。待合室前のベンチから、時々4歳くらいの男の子が覗き込んでくる。そして、『あのおねえちゃん、なにやってるの?』って、誰かに聞いているのが聞こえる。右のベッドの女の子が出ていくと、今度はさっきの男の子がそのベッドにあがった。そのベッドのそばに、その子のパパが立っている。その子のパパは見ないようにしてくれていたけど、その子は目を逸らさずにじっと見ている。そのまま便器を当てられて、隠す物も貸してもらえないまま…
 …あれ、涙が… …どうしよう、止まらない…
「…タカちゃん?… …あっ…」
 タカちゃんが、ベッドに上がってきた。そして、そのままマナの事を抱きしめる… マナの頭を、タカちゃんの胸に押し付けるように… あっ、タカちゃんの鼓動が聞こえる…
「…もう、いいよ… …ずっと昔の事だよ… …忘れちゃってもいいんだよ… …涙でみんな流しちゃって… …ね?」
「…ひっく… …うぅっ… …うえぇ… …うわあぁぁぁぁぁっ…」
 堪えきれずに泣き出したマナの頭を、タカちゃんが優しくなでてくれる。なでられるたびに、心が楽になっていくのが分かる。まるで、心の傷を温もりで消してくれているように…
 …ひょっとしたら、マナはタカちゃんに聞いてもらいたかったのかもしれない。人には言えない、けれど、ひとりで心に留めておくには辛すぎる体験を…


・第五章 再開
「…落ち着いた?」
「…うん… …もう大丈夫… …ありがと…」
 涙が止まったのは、告白が終わってから、かなり経ってからだった。タカちゃんは、マナの事を心配そうに見つめている。大丈夫ともう1回言う代わりに、微笑み返す。 …聞いてくれて、心配してくれて、ありがと…
「…ひとつ、聞いてもいいかな?」
「うん、何?」
「…さっきの話だけど、あんな事があったんなら、今のコレって、凄く嫌だったんじゃない? それなのに、どうして?」
 …タカちゃんなら、絶対大丈夫だって信じてたから…
「…だって… …タカちゃん本当にマナの事心配してくれてたし… …昔からマナのお腹の事知ってたし… …優しいから絶対にひどい事しないって信じてたし… …病院みたいに他の人に見られないし… …それに、マナも、もうこんな辛いのイヤだったから…」
 喋っているうちに、また顔が赤くなってくる。タカちゃんが、またマナの頭をなでてくれる。
「そうか、信じてくれてありがとう。」
「…えへへっ…」
 タカちゃんの手が、とっても気持ちいい… ずっとこのまま、なでていてもらいたい… でも、ふと壁に掛けてある時計が目にはいった。 …え?
「あ、あれ? あ〜っ!」
「な、何? どうしたの?」
「時計見て! 時間!」
 時計は、とっくに一時間を過ぎていた…
「…大丈夫なの? 一時間以上経っちゃったけど…」
「時間が長くても大丈夫だよ。病院でこの薬を使うときは、お尻に栓をして、一晩そのままって事もあるらしいから。」
「ひ、一晩?… 痛くはないから、大丈夫かもしれないけど…」
「まあそれは置いといて。ゆっくり起きあがって、トイレに行っておいで? お尻の紙は、そのまま流しちゃってもいいから。あと、換気扇は付けたままでいいよ?」
「う、うん…」
 お尻を押さえながら、漏れないようにゆっくり起きあがる。そしてそのまま、ゆっくりとトイレに行く。あ、換気扇のスイッチが入ってる。ドアを開けると、ちゃんとスリッパが揃えてあって、便器の蓋は上げてあり、便座は降りている。あわてて駆け込んでもすぐに座れるように… パンツを降ろして、便座に腰を下ろす。お腹に力を入れると、何の抵抗もなく、お薬が出て行った。そして…
「うぁっ!」
 お尻から、文字通り滑るように出て行った。思わずその感覚に、声があがる。完全に柔らかくなっていないけど、今までみたいに、中で引っかかって痛くなったりしない。それが続けて出てくる…
「うっ、うくぅっ…」
 十何年ぶりだろうか? お腹が痛くならず、苦しくなく、ちゃんと出ていってくれるのは… マナは、いったん出すのを止めて、それを見てみた。
「…こ、こんなに…」
 前に下剤で出したとき、量が多くて、トイレを詰まらせちゃった事があったの。またそうならないように、途中だけど水を流した。良かった、ちゃんと流れてくれた…
「…うにっ?」
 流し終わってから、もう1回見てみると、トイレの水が透明じゃない。何か黄緑色っぽい… …これって、浣腸のお薬?
「ヤ、ヤダッ… あっ…」
 お尻から、また出そうな感じがする。もう一度お腹に力を入れると、またいっぱい出てくる… さっき、あんなにいっぱい出たのに…
 やっと全部出てくれたみたいで、お腹がスッキリした。お尻を拭いて、水を流す。
「ふぅ〜 あ、あれ?」
 トイレの水は、まだ黄緑色のままだった。どうしよう… とりあえず、トイレットペーパーを少し多めに捨てて、しばらく置いておく。白いペーパーが黄緑色に染まっていく。このまま流せば、紙と一緒に流れてくれるかな?
「…ふぁっ?」
 お尻から何かが太股を伝わっていく。あわてて拭き取ると、ペーパーには黄緑色の液体が付いていた。これってお薬?
「…まだ、お腹の中に残ってるのかなぁ?」
 もう1回腰掛けて、お腹に力を入れる。けれど、何も出てこない。念のため、もう一度お尻を拭いてから水を流す。
「…ど、どうしよう…」
 やっぱり、お薬は流れていない。どうして? …仕方ない。恥ずかしいけど、ちゃんとタカちゃんに言おう…
 トイレから出て、初めて気が付いた。トイレからタカちゃんの部屋まで、5歩くらいしかない。 …ひょっとして、全部聞こえちゃった? うぁ、また顔が赤くなっていくよ…

「ふにゅ〜 …音、聞こえちゃった?」
 部屋に戻ると、真っ先にタカちゃんに聞いてみた。
「聞かなかったよ。」
 聞かなかった? 聞こえなかったじゃなくて? …タカちゃんの顔をよく見てみると、耳が赤くなってる。耳までじゃなくて、耳だけが、押さえていたみたいに真っ赤になってる。 …そっか、聞かないでいてくれたんだ…
「で、どうだった?」
「本当にこのお薬、凄いね。全然お腹痛くなかったし… …いっぱい出たし…」
 うぅ〜 やっぱ恥ずかしいよぅ… で、でも、ちゃんと言わないと…
「あ、でも、ちょっと流れなくて。いや、アレは流れたんだけど、お薬がいくら流しても残っちゃってて…」
「ああ、気にしなくてもいいよ。油だから流れにくいし。あとでちゃんと洗剤入れて洗っておくから。」
「あ、油? だったの?」
「うん、オリーブオイル。」
 タカちゃんは、さっきの黄緑色の瓶を持ってきて、マナに見せてくれた。
「1000ml… こんな大きいのがあるんだ… でも油がこんなに効くなんて不思議…」
 …あっ、ヤダ… …トイレで流れなかったお薬の方が、もっと黄色い… …でも、そんな事言えないよ… そんな事を考えていると、突然ある事を思いついてしまった。油って事は、高カロリー?
「でも、コレをお腹に入れて、太らないの?」
「大丈夫だよ。大腸は水分しか吸収出来ないから、油を入れても吸収されないよ?」
「そっか、安心。」
 よかった。便秘が治るのは嬉しいけど、太っちゃうのはイヤだから。
「それでね、マナちゃん、申し訳ないんだけど…」
「んに?」
「もう1回浣腸するから、またさっきと同じように…」
「えぇえええっ!? 何で? マナ、ちゃんといっぱい出たよ? あ…」
 な、何で!? もう1回!? びっくりしちゃって、つい余計な事も言っちゃって、また顔がユデダコになっちゃった…
「さっき浣腸したのは油なんだけど、この油ってのが、腸に張り付いちゃって、なかなか全部が外に出て行かないんだ。おまけに腸から吸収されないから、しばらくお腹の中に残っちゃうんだ。そうするとお尻から垂れて来ちゃう事もあるしね。」
「う、うにゅ、そうなんだ…」
 さっき、トイレでたれて来たのは、そういう事だったんだ… もし、このままパンティやスカートやズボンをはいてたら、知らない間にお尻の穴の所に油のシミが…?
「だから、さっきの油を洗い流す薬を入れなきゃいけないんだ。」
「う〜ん、わかったよ…」
「それじゃあ、またさっきと同じように、ベッドに上半身を乗せて床に膝を付いて。」
「は〜い…」
 …恥ずかしいけど、知らない間にシミができちゃって、他の人に見られちゃう方が恥ずかしい… マナは、またさっきと同じポーズを取った。
「じゃあマナちゃん、またさっきみたいに潤滑剤を塗るから。」
「う、うん… ふぁっ! んにゅっ!」
 また、タカちゃんがお尻の穴に潤滑剤を塗ってる… や、やっぱり気持ち悪いよぉ…
「くぁっ! んにゃ! く、くうぅぅぅぅぅっ!」
「はい、もういいよ。じゃあ、これから入れるからね。」
「こ、今度のお薬って何? 油を落とすんだから、石鹸とか?」
 …さっきと違うお薬だよね? 何だか、ちょっと怖い… 少しでも気持ちを紛らわせたくて、ちょっと冗談を言ってみる。
「大当たり。エネマソープって言って、普通の石鹸と違って、浣腸用の石鹸だよ。」
「あ、当たっちゃった…」
 …ホントに石鹸だったんだ… …そんなのお尻に入れて、大丈夫? 苦しくない?
「これをさっきと同じ量入れるからね。今度のは少しお腹が痛くなっちゃうんだ。我慢出来なければ仕方ないけど、出来れば10分くらい我慢してね?」
 …痛くなるのって、本当に少しだよね…?
「う、うん。がんばる…」
「はい、それじゃあ、入れるよ?」
「うん、いいよ… うぅっ くぅっ! うきゅぅぅぅぅぅ…」
 また、さっきと同じように、お尻の穴に先っぽが入って、お尻の中で液体が暴れて逆流していく… ううぅ、やっぱり気持ち悪いよぉ… …あれ? さっきと何かが違う感じがする… 痛くはないけど、お腹が重い…?
「ハァ… ハァ…」
「1本目終わったよ。大丈夫?」
「う、うん。苦しくないけど、なんかさっきよりもお腹が重い…」
「今度の薬は少し刺激があるからね。もう1本入れるけど、大丈夫?」
「う、うん、大丈夫。がんばるから…」
 お腹の中が、少しグルグルいってる… でも、もう1本くらいなら我慢できそう…
「うん、分かったよ。じゃあ、とりあえず抜くから、お尻、気を付けて。」
「う、うん… ひゃっ!」
 抜かれた瞬間、また体から力が抜けそうになって、慌てて我慢する。
「お腹、大丈夫? 準備出来たから、次いくよ?」
「う、うん、早く… くぅっ… くぅぁっ! ひぃぁぁぁぁぁ…」
「じゃあ、おしまい。抜くから、お尻、気を付けてね?」
「うん、いいよ… ひぁっ!」
「マナちゃん、終わったよ。よく頑張ったね? さっきみたいに、ベッドに横になってくれるかな?」
「ハァ… ハァ… う、うん… くぁっ…」
 体勢を変えようと思って動いたとき、お腹の中でグルグルと何かが動く感じがした…
「大丈夫? お腹苦しい?」
「だ、大丈夫… 少し重苦しいけど、まだ痛くないし、我慢できるよ…」
「じゃあ、もう少し我慢してね? それと、またこれでお尻を押さえててね?」
「…うん…」
 タカちゃんがまたベッドの横に腰を下ろして、マナの頭をなでてくれる。…タカちゃんの手、暖かい… …なでてもらってると、ほっとする…
「タカちゃん、ありがと… こうしてもらうと、なんだかとても落ち着くよ…」
 微笑みながらそう言うと、タカちゃんんも恥ずかしそうに微笑んでくれる。
 普通の浣腸だと、もっとお腹痛くて苦しいんだよね… タカちゃん、マナが苦しまないように… …あれ?
「ねえ、タカちゃんってどうして… …このお薬… …の事、詳しいの?」
 何でこんなに知っているんだろう。これって、普通の人はあんまり知らない事だよね?
「…僕も子供の頃は、よく便秘になったんだ。それで、いつも親に浣腸されて、便秘と浣腸の腹痛に耐えていたんだ。」
「…そうだったんだ…」
 …タカちゃんも、苦しんでたんだ…
「といっても、まだ5歳頃の話だけどね。それで、何とか痛くない方法がないかなって家にあった医学書を探したら、この方法が載っていたんだ。まだあまり字も読めない頃だったけど、何となく痛くなさそうだなって思って。結局、この方法はやって貰えなくて、いつも市販の浣腸で苦しいままだったから、無駄になっちゃったんだけどね。それで、さっきマナちゃんが来た時に、この方法を思い出したんだ。で、もう1回医学書を読み直して準備したんだよ。」
「無駄になんかなってないよ。今、その方法でマナが苦しまなくてすんだんだから…」
「そうだね、本当に良かったよ。マナちゃんが苦しむ顔なんて、見たくないから。」
「…やっぱりそういう所、心配してくれてたんだね? タカちゃんの優しさ、感じてたよ…」
 マナの顔に自然に笑みがこぼれる。タカちゃんも少し照れくさそうに笑ってる。タカちゃん、ありがとう…
「あっ…」
 突然、マナのお腹がゴロゴロと鳴り始めた。まだお腹は痛くないけど…
「どうしたの? お腹、痛くなってきた?」
「ううん、痛くはないけど、何か出ちゃいそうな感じが…」
 そんなにせっぱ詰まってないけど、お尻から出ちゃいそうな感覚…
「そうだね、もうトイレに行っていいよ? 起きる時に気を付けてね?」
「わかってるよぉ〜 よいしょっと。 …あ、ありがとう…」
 タカちゃんがマナの手を追って、起き上がるのを助けてくれる。そして、そのままトイレまで連れていってくれた。
「まだ我慢出来るかな? トイレに座ったままでいいから、出来るだけ我慢してね?」
「う、うん… わかったよ。じゃあ、また後でね。」
 マナはトイレのドアを閉める。そしてパンツを脱いで、お尻を押さえたまま便座に腰を下ろす。あ、お腹ちょっと痛くなってきた… でもまだ我慢できる… お腹が少しずつ痛くなってきたけれど、全然きつくないよ。まだ我慢できる。まだまだ…
 どれくらい時間がたっただろうか? お腹は少し痛いけれど、まだ我慢できそう… …もう少し…
 コン、コンッ…
「ひゃぁっ!! タ、タカちゃん!?」
 突然、トイレのドアがノックされた。び、びっくりしたよ… 驚いて思わず大声を出しちゃった。 よかった、お尻からは出てないよ…
「大丈夫? あまり遅いから心配になって…」
 あれ? そんなに時間たってた?
「うん、だいじょうぶだよ。お腹は重いんだけど、我慢できないほど痛くも苦しくもないから、ずっと我慢してたんだけど…」
「マナちゃん、もう出しちゃっていいよ? それを入れてからもう30分経ってるし…」
「えっ!? もうそんなにたったの?」
「うん。だから、もういいよ? 僕は部屋に戻っているから。」
「わかったよ。教えてくれて、ありがとう。」
 タカちゃんの部屋のドアが閉まる音がした。
「んっ… ふあっ…」
 マナはお尻から手を離して、お腹に力を入れると、お尻からすごい勢いでお薬が出ていった… さっきと違って、一気に全部出ちゃったみたい。 でも、まだお腹が重いし、少し痛い。大丈夫かなぁ…? しばらくすると、また何か出そうな感じがしてきた。マナは、またお腹に力を入れる。
「んんっ… うくっ…」
 まるで下痢みたいに、柔らかいのがいっぱい出てくる… けれど、そんなにお腹は痛くない。本当にスムーズに出ていってくれた。それが全部出ると、さっきまであったお腹の重苦しさと痛さはあっという間になくなっちゃった。マナは水を流し、手を洗って、タカちゃんの部屋に戻った。


・第六章 処方
「にぃ〜 終わったよぉ〜」
 タカちゃんの部屋に戻ると、またタカちゃんの耳が赤くなってた。
「お疲れさま。どうだった?」
「…さっきあんなに出たのに… …また、けっこう出た…」
 うぁ、恥ずかしい…
「これでだいぶスッキリしたかな? あ、ちょっと待ってて?」
 タカちゃんは、クーラーボックスの中から小さい瓶に入った液体と、白い液体が入ったペットボトルを取り出して見比べている。
「あ、やっぱり…」
「んにっ? どうしたの?」
「さっきのが効かないみたいだったから、薬を確認してみたんだけど、どうも水の量を間違えちゃったみたいなんだ。200ml分の薬を入れて、水を300ml入れてたみたい…」
「ふにゅ〜 それでなかなか効かなかったんだね? タカちゃんでも間違える事あるんだ〜」
 タカちゃんが心配するほど時間がかかったのは、そういう事だったんだ。 原因がはっきりして良かった。 でも…
「…あ、でも、という事はもしかして… …もう1回?」
 …そんなに苦しくなかったけど、恥ずかしいし、出来ればもうやりたくないなぁ…
「ううん、もういいよ。薬が薄かった分、長時間我慢したしね。それに、ちゃんと出たみたいだし。」
「よ、よかったよぉ〜」
 思いっきりホッとしちゃって、思わず気の抜けた声で答えちゃった。 …あ、タカちゃん笑ってる…
「あ〜 マナの事笑った〜」
 もぅ、タカちゃんったら。ちょっとだけにらんじゃうぞ?
「いや、ごめん。あまりにも可愛いらしかったから、つい…」
「…もぅ…」
 か、かわいいって… うぁ、恥ずかしい… また、ユデダコだよぉ…
「よし、これで今日の治療は終わり。着替えておいで?」
「は〜い。先生、ありがとうございました〜」
 恥ずかしさをごまかすために、少しおどけた感じで返事をして、着替えるために隣の部屋へ行く。紙パンツを脱いで、元のパンティとミニスカートに着替える。あ、この紙パンツどうしよう? 持って帰ったほうがいいのかな?
 マナが着替え終わって部屋から出ると、タカちゃんは洗面台で何かを洗ってた。
「にぃ〜 おまたせ〜 何やってるの? あっ…」
 洗面台を覗き込むと、タカちゃんは浣腸器を洗っていた。また顔が真っ赤になっちゃう… さっき、マナのお尻の中にお薬を注ぎ込んだ道具。その、お尻に入ってた所を洗ってる… 手袋してても、触るのイヤじゃないの? マナのお尻の中、汚いって思わないの?
「あ、すぐに終わるから、もう少し待っててね?」
「うん…」
 タカちゃんの部屋で待ってると、道具を洗い終わったタカちゃんが入って来た。浣腸器の水気をトイレットペーパーで取って、何かのお薬を中に入れて、動かしてる。
「…何やってるの?」
「こうしておかないと、水分が乾いたときに、内側と外側がくっついちゃって、動かなくなっちゃうんだ。そうなってから無理に動かすと、ガラスだから壊れちゃう事もあるし。」
「ふ〜ん… 物知りなんだね?」
「…こういう事で物知りって、誉め言葉になるのかな?」
「え? マナは本気でほめたんだけど…」
 これって、ほめた事にならないのかな?
「そういえば、これってどうしたらいい?」
 マナは、さっき脱いだ紙パンツを持って、聞いてみた。
「あ、それ? ゴミ箱に入れちゃって。」
「んに、わかった。」
 そうだよね。考えてみたら、持って帰るわけにもいかないし。そういえば、初めに使い捨てって言ってたもんね。
「よし、それじゃあ、1階へ行こうか?」
「うん!」

「マナちゃん、はいっ。」
「お、おとととっ? ありがと、いっただっきま〜す。」
 タカちゃんがマナに何かを放り投げる。あわててキャッチすると、スポーツドリンクの缶だった。良かった。汗かいたから、のど乾いてたんだよね。
「さーてと、どの薬がいいのかなー?」
 タカちゃんも同じのを飲みながら、薬局の薬棚の方に歩いていった。そして、お薬の箱の説明をひとつひとつ読んでいる。いいお薬見つかったかな? もし見つからないと…
「ふにゅ〜 いいのあった?」
「うーん、見つからないなー」
「え〜、そんなぁ… マナ、もうあんな痛いのヤダよ…」
 もし、いいお薬が見つからないと、またいつもの下剤を大量に飲んで、あの苦しみに耐えて出さないといけないんだよね… もうそんなのヤダよぅ… そうじゃなければ浣腸しか… でも、それも恥ずかしいし…
「そういえば、まだ開けてなかったけど、新製品が届いたんだった。この中に無いかな?」
 カウンターの内側、タカちゃんの足下に、まだ開けてない段ボールがあった。タカちゃんは、今度はそれを調べ始めた。
「マナちゃん、あったよ! コレなんてどうかな?」
「うにゅ?」
 タカちゃんが見つけてくれたお薬は、『おなかに優しく、痛くならない』『長期間飲んでも、癖にならない』『おやすみ前に飲めば、翌朝にはスッキリ』って箱に書いてある。見つかったのは良かったけど、何か探してたお薬にピッタリ当てはまりすぎて、逆に心配…
「う〜ん、とっても条件にピッタリすぎるお薬だなぁ… …ホントに効くのかな?」
「ダメモトで試して見ようよ? 少なくとも、前の薬よりはいいと思うよ?」
「そうだよね、試してみなくちゃ変わらないよね。じゃあ、コレにするよ。」
「ええっと、240錠で1,795円。早速今晩から飲んでみようか?」
「ふえ? でも、さっき出ちゃったんだけど…」
「浣腸だと、出口の近くのは出せるけど、お腹の奥のは出せないんだ。飲み薬なら、お腹の奥から出せるからね。それに、今なら出口に栓がないから、テストには丁度いいんじゃないかな?」
「う〜ん、そうだね。はい、お金。」
「ありがと。はい、お釣り。1回2〜6錠で、最小量からって書いてあるけど、とりあえず3錠くらいから試し方がいいかな? それと、水分で押し出す薬みたいだから、多めの水で飲んだ方が効くと思うよ?」
「にゅ、さっそく試してみるよ。」
「それがいいと思うよ。それじゃあ、お休み。また明日ね?」
「うにゅ、おやすみなさ〜い。また明日ね〜」

「ただいま〜」
 家に帰ってきたけど、誰もいない。パパとママは共働きで、特に金曜日と土曜日の夜は忙しくて、10時過ぎまで帰ってこない。お台所に行くと、テーブルの上に置き手紙があった。
『マナちゃんへ お腹大丈夫? パパも心配してたよ? 夕ご飯を作って冷蔵庫に入れておいたから、レンジで温めて食べてね。(食べられたらでいいからね?) ママより』
 …ひょっとして、金曜日の夜はいつも、マナのために夕ご飯を作ってくれてたのかな? いつもトイレから一晩中出られなかったから、全然気付かなかった…
「…ありがとう、パパ、ママ…」
 …今日は大丈夫だよ。ちゃんとご飯食べられるし、全然苦しくないよ… 冷蔵庫の中には、卵入りのお粥と、白身魚の煮付け、柔らかく煮込んだ野菜の煮物が入っていた。お腹に優しいご飯。お薬で傷ついたお腹の事を考えてくれたんだね… 本当にありがとう…
 夕ご飯を食べたあと片づけをして、お風呂に入ったら、どっと疲れが出て来ちゃった。今日は早いけど、もう寝ちゃおう… っと、寝る前に… マナはさっきタカちゃんのお店で買ったお薬を取り出す。
「え〜と、『就寝前や空腹時に、コップ2杯程の水でお飲みください』か…」
 説明書通りにお薬を飲んで、ベッドにはいる。パパ、ママ、心配してくれてありがとう。タカちゃん、心配してくれて、楽にしてくれて、本当にありがとう… …とっても恥ずかしかったけど、嬉しかったよ…

「…うぅ〜ん… …んにっ?」
 …あれ、ここは? …ベッド? …マナの部屋? …何で? 今日は土曜日だから、トイレで… …あ、そっか。もう、あんな思いをしなくてもいいんだ…
「う、うう〜ん…」
 ベッドの中で体を伸ばす。時計は6時ちょうどを指していた。今日はお休みだし、お布団が気持ちいいから、もう少しこのまま…
「…うきゅ? お、おトイレ…」
 突然、お腹にあの感覚がやってきた。そうだ、昨日、新しいお薬飲んだんだった。あわててトイレに入って、便座に腰を下ろして、そして…
「…で、出たよ…」
 今までと違って、何の苦労もなく、お腹も痛くならず、それは体から出ていってくれた。出したくても固まっていて全然出ていってくれない便秘とも違う。お薬を使って強制的に起こす下痢とも違う。お尻からお薬を入れて無理矢理出す感覚とも違う。これが普通に出ていく感覚なんだ… …本当に十何年ぶりだろう…
「…タカちゃん、ありがと… …お薬、ちゃんと効いたよ…」

 部屋に戻ると、時計は6時半を指していた。普段なら、これから朝ご飯の準備。さすがに土曜日の朝は、準備できなかったけど…
「…うにゅ、やるぞ〜」
 お台所に行って、まず卵をゆでる。その間にレタスとキュウリとトマトを切って、お皿に盛りつける。コーヒーケトルを火にかけて、コーヒードリッパーの準備をする。冷蔵庫からマヨネーズを取り出して、そして…
「あれ? マナちゃん?」
「んに。ママ、おはよ〜 …あれ、パパは?」
 ママが起きて来ちゃった。ママは心配そうにマナの事を見てる。
「パパは夕べ急な仕事が入っちゃって、会社に泊まり込みになっちゃったの。それよりマナちゃん、お腹大丈夫なの? 昨日薬飲んだんでしょ?」
「お薬飲もうと思ったら、もう無くなっちゃってて、タカちゃんの所に買いにいったの。そしたらタカちゃんが新しいお薬を教えてくれたから、昨日はそれを使ったの。そしたら、全然お腹痛くならないのに、ちゃんと出たんだよ。」
 …本当は、飲むお薬だけじゃなかったんだけどね…
「そうなんだ… マナちゃん、良かったね?」
「えへへ…」
 ママの安心した、そして嬉しそうな顔。そんなママを見てると、マナも嬉しくなっちゃう。
「…ママ、マナの金曜日の夕ご飯って、いつも作ってくれてたの?」
「うん。それと、土曜日の朝ご飯もね。マナちゃんが食べられたらいいな、って思って。」
「…マナ、いつも全然気が付かなかった…」
「それは、しょうがないわよ。マナちゃん、あんなに苦しんでたんだから…」
「…うん、ありがと… あれ? あ〜っ!」
 ふと横を見ると、お鍋もコーヒーケトルも、吹きこぼれんばかりに暴れてる。あわてて火を止める。半熟に仕上げるはずの卵は、きっと固ゆでになっちゃってるだろうなぁ…
「…うにゅ、ちょっと失敗しちゃった…」
「気にしない気にしない。さ、ふたりで作っちゃおうか?」
「うん。あ、でもパパは会社の食堂で食べちゃってるかな? そうすると、材料多すぎたかな?」
「大丈夫。お弁当にして、ちゃんとパパに持って行くから。」
「そっか。それだったら、もっといっぱい作らないとね?」
 ゆで卵とマヨネーズとキュウリのサンドイッチ、トマトとレタスのサラダ、そしてコーヒー。簡単だけど、おいしい朝ご飯をママとふたりで作って食べる。パパのお弁当には、ハムとチーズのサンドイッチを追加して、お仕事しながらでも食べられるように、フィンガーサンドイッチ風にいっぱい作る。ママがお仕事に出かけた後、マナはタカちゃんの家へ行く。昨日のお礼と、新しいお薬の結果報告。そして…


・終章
 あうぅ、やっぱり恥ずかしい… でも、思い切って…
「タ〜カ〜ちゃん!」
 タカちゃんの家の玄関から呼びかける。
「あ、マナちゃん、上がって?」
「は〜い、おじゃましま〜す。」
「すぐ行くから、僕の部屋で待っててよ。」
「は〜い。」
 階段を上がる前にチラッと見ると、タカちゃんはお台所でトーストを食べてた。もう10時なのに、寝坊でもしたのかな? タカちゃんの部屋に入って、ベッドに腰掛けて待っている。すぐに、タカちゃんがやってきた。え? もう食べ終わったの? そして、マナの隣に座る。照れくささと嬉しさで、つい笑みが漏れてしまう。
「…えへへ〜」
「ご機嫌だね?」
「うん。だって、十何年ぶりに迎えられた気持ちのいい土曜日の朝だもん。」
「それじゃあ、昨日の薬は?」
「うみゅ、バッチリ、ちゃんと効いたよ。全然痛くも苦しくもなかったし。」
「そうか、良かったね。」
「えへへ…」
 タカちゃんが、頭をなでてくれる。やっぱり気持ちいい…
「それで、ね…」
「?」
 は、恥ずかしいよぅ… また顔がユデダコになっちゃってる… でも、ちゃんと言わないと…
「あの、ね… …その…」
「何?」
 …うにぃ〜 とても大きな声じゃ言えないよぅ… マナは、内緒話をするみたいに、タカちゃんにそっと耳打ちした。
「あのね… もし、また出なくなっちゃったら、その… …また、治療、してくれる?」
「えっ?」
「…お願い… …こんな事、タカちゃんにしか頼めない…」
 …お願い、タカちゃん… …ダメだったら、また前のお薬で苦しむか、病院で恥ずかしい思いをするしかないから…
「…いいよ。それでマナちゃんが楽になれるんだったら…」
 マナは、そのままタカちゃんのホッペに…
 チュッ
「…えへへ、ありがと…」
 タカちゃんは、何が起こったか分からなかったみたい。でも、すぐにユデダコみたいになっちゃった。あうぅ、そんなになっちゃったら、マナの方が恥ずかしいよぉ…
「そ、そうだ! タカちゃん、今日は何か用事ある?」
「えーと、店は母さんが出てくれるし、マナちゃんからの報告も終わったから、今日は何も無いよ?」
「それじゃあ、どっかに遊びに行かない? 昨日のお礼に、お昼、おごっちゃうから?」
「じゃあ、駅前の高級フランス料理店でフルコースかな?」
「…にゅ〜 そんなにおこずかいないよぅ…」
 …もう、いじわる…
「あははっ、冗談だよ。それより、外に出ようか?」
「うん! 早く早く!」
「うわぁっ! 急に腕引っ張っちゃダメ! 上着くらい着させてよ!」
 タカちゃんと一緒に、いや、タカちゃんを引っ張って遊びに行く。ひょっとして、これってデートになるのかな? なんて考えながら…


−終−


NEXT

第2話 Side-A


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