SPACE銀河 Library

作:朱鷺

看護実習の記憶

第三部   卒業の頃

〈また・・大野君にお願いしようかな?〉とも子はちょっと恥じらいながらも、嬉しそうにそう考えていた。〈そう言えばあれからもう2年経つのね・・あれを初体験してから・・〉あれ・・・あの体験はとも子にとって、大きなものだった。看護実習での受浣体験とその前夜の大野との実習の予習という名目での浣腸の経験は、大げさに言えば、その後のとも子の人生にちょっとした彩りを加えることになった。

もちろん浣腸のことなど、友人達にも話せるような事では無い。しかも便秘の治療として自分で行う処置ならばいざ知らず、恋人にしてもらうなど・・ましてそれが好きだなどとは、とても誰にも話せるものでは無い。しかしとも子と大野のあいだで密やかに「あれ」と囁かれるものが浣腸のことであり、それがお互いにどんな意味を持つのか、当の二人にはよく解っているのだ。

二年前の実習の少し後、とも子と大野は体の関係を持つようになった。それはあの浣腸体験が無くてもいずれはそうなる運命だった。最初はためらいがちに、とも子の体を開いて進入していた大野も、回を重ねるごとに大胆なポーズをとるようになり、とも子もそれに答えていった。そしていつの間にか、とも子の秘部だけでなく肛門にも、大野の指が伸びるようになり、とも子の体もその愛撫に反応する様になっていったのだ。

そんな日々のある日 大野はもう一度とも子に浣腸をしたいという欲望を表した。もちろんとも子にはあの看護実習の羞恥と苦痛の記憶が甦り、しばらくはそれを許さなかった。しかしあの実習の前夜、一度は大野に許した事なのだ。またとも子の体が時に便秘気味になるのも事実だった。もちろん市販の薬で直る程度の症状なのだが、そのタイミングで大野に求められた時に、とも子はついに再度大野からの浣腸を受け入れたのだった。そしてあの実習前夜に大野が買ってきて、とも子の薬箱に入っていたイチジク浣腸は、残った3ヶともが、数ヶ月数週間の間を置いて、大野の手でとも子にされたのだった。そしてさらに大野は、数箱のイチジクを購入して機会が有る毎にとも子に浣腸を施した。

大野の行う浣腸が単なる便秘治療であるはずは無い。それは性戯の一部なのだ。肛門を開き愛撫を加え同時に陰部や他の性感帯に刺激を加え、とも子に喘ぎ声を出させながら、いちじくの嘴管を肛門に突き立てる。そして焦らすようにゆっくりとグリセリン液を注ぎ込む。時にはその後、ティッシュで肛門を押さえながらも、後背位でとも子に進入してくる。とも子はもうすぐ来る便意や、その後の恥ずかしい排泄に怯えながらも、大野の体に反応して快感を感じてしまう。そしてその後の便意の苦痛と大野に見られながらの排泄行為。やさしくしかしとも子が自分ですることは許さず、大野が行う後始末。
「はい、おしりあげて・・いっぱい出たね・・拭いてあげるね・・・」何度そんな事をしても、羞恥心は感じてしまう。もし羞恥心を感じなくなったら、大野もこんなには興奮を感じないのだろう。時々とも子はそう考える時もある。他人に知られたら「変態」と言われそうな行為だと解っているが、とも子はその苦痛とも快感とも言えない緊張感を、いつしか受け入れ楽しんでいた。

もちろん とも子は看護婦の卵だから、そんな行為の危険性も知っていたし、そういう性癖に対しての知識もあった。<浣腸の常習性・・肛門部の病菌の危険性・・アナルセックスなどの性癖とそれに伴う危険・・・>しかしそれは常習という程、頻繁には行われなかったし、とも子も職業的な知識を元に、それらに対する予防には十分注意をはらっていた。大野もとも子に浣腸をして、目の前で排泄をさせたり、実習の様子を聞きだしたりして、とも子の羞恥心を煽ったりはしたが、それ以上のアナル攻めやアナルセックスなどは、するつもりも無かったし、とも子に対してはっきりとその事は告げていた。
「とも子は大事な人だから、浣腸したり恥ずかしがらせたりはしても、危ないことや病気になりそうな事はしないよ。それに痔にでもなって医者に行ったりしたら、僕の大事なこのアヌスが、たとえ医者や看護婦にしても誰かの目に晒されてしまうもの。僕以外の誰かに見せるなんて・・・そんなこと・・・したくないよ・・」
「そうね、大野君だけよ。こんな処まで見せてしまうなんて・・やっぱりそんな事・・冷静に考えるととんでもないことだわ。」
「そうだね、君は看護婦さんだから患者さんのを見ることはあっても、他人に見せることなんて無いんだろうな。」
「そうね。・・・でも・・将来結婚して、子供が出来たら・・・」
「子供ができたら?」
「出産の時には、大股開きで分娩台に乗るのよ。それに術前処置で浣腸もされるわ。」
「なんだか今からでも、そんな事を想像するとイヤだな。とも子が誰かの前でそんなポーズ取ってたり誰かに浣腸されたりすると思うと。」
「そんなまだまだいつになるか解らないわよ。それに・・・大野君の目の前でおんなじ様なことしてるじゃない。」
「じゃあ。今のうちにいっぱいしておこう。」
「何をするのよ?」
「そりゃあ・・セックスも・・あれも・・・」
そんな風な会話が何度も交わされて、もう二年が過ぎようとしている。次の春にはとも子は卒業だ。

そして今晩も二人はとも子の部屋で過していた。卒業が近いとも子は卒論のまとめや、国家試験に備えての勉強が忙しい。大野も進級の為の論文を書くために、ここのところ二人で一緒に勉強をする日々が続いている。
「ねえ・・ここのところご無沙汰だよね・・・たまには・・・しない?」大野がそう誘いかける。
「そうね。最近してないよね」
「じつは・・今日ちょっとした買い物をしたんだ」
「なに?・・なに?・・しようって誘っておいて。何かエッチなものを買ってきたの?」
「うん。見せてあげるね。・・・とも子につかってあげるために買ったんだから・・」
とも子はちょっとためらった。〈何を買ってきたのかしら?エッチな道具?バイブとかそんなモノかしら?・・・それとも???〉しかし大野がバッグから取り出した包みを、とも子に渡して開けさせるとその中からは200cc用のガラス製の浣腸器が出てきたのだった。
「ええっ?これって浣腸器?・・・どうしたの?」
「だって・・いつもイチジクじゃ・・・ちょっと気分を変えて見たくてさ・・」
「でも??どこで買ってきたの?」
「××街の裏通りに大人のおもちゃ屋があってね。そこになら有るかなって思って行ってみたんだ」
「よく買ってきたわね?恥ずかしくなかった?」
「ううん。ちょっと恥ずかしかったけど、ああいうお店だからね。みんな何に使うのかは解ってるし、お兄さんいい趣味だねって言われちゃったよ」
「まったくしょうがないんだから・・・こんなので私にすることを考えて、あそこを大きくしてたんでしょう?」
「まあね。それとグリセリンとビーカーも用意してあるんだ。」
「まあ!なんて手回しの良い人なのかしら・・・買ってきたら早速使ってみたくてしょうがないのね」
「ねえ・・いいだろう・・これ使ってみても・・・」そう言いながら大野は優しくキスをする。
「しかたないわね。・・なんて良いタイミングなのかしら?・・見計らっていたんじゃないわよね?」
「えっ?何の事?」
「ちょうど一昨日あたりから調子悪いの・・・お願いしようかな?なんて考えてたんだけどね・・」
そう言いながらも、とも子は大野の軽い愛撫を受け、お腹に溜まったものの事よりも、セックスの快感の期待に気持ちが向いていた。大野はグリセリンの壜とビーカーを取り出すと、手際良く水とグリセリンの溶液を作った。

「まったく、こんな事になると看護婦さんよりもずっと手際がいいんだから・・」
そんな軽口をききながらも、とも子はもう大野の愛撫を受け入れ、すっかりその気になっている。
「体調がそんなならちょうど良かったね。ちょっと早めだけど、クリスマスプレゼントかな?」
「なに言ってんのよ。もう、イヤね。これは私からあなたへのプレゼントでしょう・・・あなたがしたがってる事を、させてあげるんだから。」
「さあ、準備が出来たよ。今日はどんなふうにしてあげようかな?」
「やだっ、そんな・・恥ずかしがらせて・・・そんなのでするの初めてなんだから・・・」
「そうだね。そう言えばとも子は実習の時もイルリガートルだったって言うし、こういうのは初めてなんだ!」
「そうよ。実習の予習って言って初めてしたときもイチジクだったし、その後も大野君がしてくれたのはずっとイチジクだったでしょう」
「じゃあ、今日はセックスぬきで、初体験の時みたいに優しく、してあげるね」
「なんだか、今になってはその方がずっと恥ずかしいわ」
「お医者さんごっこだ!・・・はい横になって・・」
大野はふざけた感じでそう言うと、とも子をベッドに横にならせた。二年前のあの時と同じように、スカートをそっとまくりあげ、パンティーを脱がせる。
「もう!そんなに全部脱がせて・・・」
「いいじゃないか。スカートははいてるんだし・・」
「その方がもっとエッチな感じがするわ。」
「このまま、婦人科のお医者さんごっこもするかい?」
「いやっ!それだけはやめて!!」とも子は羞恥で顔が赤くなる。そういえばセックスで体を開くのも、浣腸されるのも、こんなに明るく灯りを点けたままでしたことは無い。照明は薄暗くされていたし、大野も裸だったので、性行為の延長の遊びの感覚があった。こんな風に灯りを点けたままの部屋で、一方的にお尻だけを出され、浣腸されるのは、2年前のあの晩以来だ。
「お尻の穴までかわいいよ!!」大野が耳元で囁く。
「そんなにしっかりみないで。恥ずかしいから・・・」
「いつもしてあげてるじゃないか」
「だって・・・こんなに明るい部屋で・・・一方的にされるなんて・・・」
「とも子が患者さんにしてあげる時だって同じだろう。・・・さあお尻の穴を開くよ」
そう言って大野はとも子のお尻にハンドクリームを少し塗って、ゆっくりと揉み解しはじめた。
「ああっ!そんなに・・・指先を入れないで・・・中身が付いちゃうわ・・」
「そんなに入ってるのかな?」大野の指先は意地悪く、中にまで進入しようとする様に、肛門を広げて行く。今のとも子には快感とも不快感とも言えぬ感触だ。

「さあ。それじゃそろそろ入れてあげるね」とも子は何も言わずにうなづく。大野は真新しいガラスの浣腸器にビーカーの中の溶液を吸い上げると、とも子の肛門にゆっくりと嘴管を挿入した。とも子にとって、その感触はいつものイチジクのものと明らかに異なっていて、実習でのカテーテルの挿入以来の感触だった。痛みを感じるわけでは無いが、細くすんなりと進入してくるイチジクよりも、しっかりと押し広げながら、肛門を侵してくる。大野にしても、片手で簡単に挿入できるイチジクと違って、両手で中身をこぼさぬよう気をつけながら、挿入する手ごたえはずっしりとしている。
「本当は、ネラトンカテーテルを付けて奥まで入れてあげるんだろうけど・・・・さすがにそんなものは手に入らないからね。このまま入れるよ」とも子の教科書を読んで、そんな医学的知識もある大野は、そんな解説をしなが、ゆっくりとピストンを押し込む。今までのイチジクを押しつぶす感覚よりもしっかりとした手ごたえがあり、自分の手でとも子の体内に液を流し込んでいるという感覚が感じられる。
「ああっ!!いっぱい入ってくる!!!!」肛門付近から内部に向かってじっくりと流れ込む感触がある。その感触は、やがて便意が来るまでは、とも子にとっては快感に感じられる。セックスで大野のモノを受けいれて、体の中に感じる感覚に似ているが、液体がゆっくり体内を犯してくるこの感触の方が、より淫靡な快感なのかも知れない。
「奥まで入らなくて、効き目が悪かったら、何回でもしてあげるからね。」
「もうっ!意地悪ね!・・・イチジクの何倍も入れてるのよ!・・・そんなに何回もしなきゃ効かないなんて、あるはずないでしょ!・・・そんなに、何度もしたいのね?」
「うん。とも子になら何度してもいいな・・・」
「もう・・・それなら次からは微温湯にしてね。グリセリンじゃ効きすぎちゃうわ!」
「それって?・・してもいいってこと?」
「馬鹿ね!!知らない!!」
「とも子・・セクシーだよ!・・とっても素敵だ!」200ccのグリセリン溶液を注入し終わると、名残を惜しむようにゆっくりと嘴管を抜きながら、大野はとも子に囁く。そしていつものように肛門にティッシュをすばやくあてて押さえてくれる。いつもならば、裸同士の二人は体を重ねるように横になって、数分後の展開を待つのだが、今日は二人とも着衣のままだ。とも子のスカートが捲り上げられ、むき出しになったお尻が、室内の灯りにやけに白く見える。その肛門をティッシュで押さえている大野は、裸になって体を重ねている時よりも、刺激的な眺めに興奮を感じていた。とも子もまた、このシュチエーションにいつもと違う興奮を感じている。大野の股間はすっかり大きくなっている。
「ああっ!!こんなに入ってると・・・あんまり我慢できそうにないわ!・・」
「もう、出そうなのかい?」
「ううん。まだそんなじゃないけど・・・いつもよりずっしり感じるわ!」
「ねえ・・・我慢してるあいだ・・」とも子はそう言って、大野の股間に手を伸ばす。ファスナーを下げると、大野のモノは弾けるように顔を覗かせる。それを優しく両手で包み込むと、ゆっくりと口に運ぶ。
「えっ?・・そんなこと・・・今までした事なかったじゃない?」
「いいの!今はこうしたい気分なの・・・いや?」
「いやなんて事は無いけど・・・いいのかい?」
「うん。我慢してるあいだに、最後までしてあげられるかわかんないけど・・」とも子はそう言うとむさぼるように、大野のモノにしゃぶりつく。とも子の体内では、もう200ccの液の効き目が現れ始めている。それを忘れようとするように、大野にしがみつきむさぼる。しかし大野が絶頂に到る前に、とも子の限界はやってきてしまった。

「お願い!!・・・もうダメ!!・・・つれていって!!」二年前のあの時と同じように、大野に肛門を押さえられたまま、とも子はトイレに入った。
「お願い!!・・・このまま・・一緒に居て!!」とも子はそう告げると、再び大野のモノを口にする。
大野もすっかり興奮状態で、すぐにでも絶頂に達して白濁液を放出しそうになっている。しかしとも子の乱れ方は、いつものセックスの比では無い。
〈いつもみたいに、セックスしてるわけでもないのに・・・どうしたのかしら?〉〈こんなに明るい部屋で、患者さんみたいに浣腸されて、恥ずかしい!なのに興奮しちゃう!〉〈もうウンチが出そうだわ!〉
「ああっ!!・・出る!!・・・見て・・いっぱい出るわ!!!」とも子が限界を迎え、そう言いながら肛門を開くと同時に、大野もまた絶頂を迎え、白濁液を放出したのだった。
〈カ・イ・カ・ン!!  浣腸されるのがこんなに感じるなんて・・・どうしちゃったのかしら?〉
いつもは性器への刺激や挿入によって、快感を得ることは有る。浣腸もお遊びとしては羞恥心を煽るし、大野を興奮させるための道具にもなる。しかし今晩は浣腸と排泄だけで、こんなにも快感を感じてしまっている。このエクスタシーはどうしたことだろう?とも子はそんなことをぼんやり考えながら、興奮の波に飲まれていった。

この晩から、大野ととも子のあいだには、もうひとつの秘密の遊びが始まった。セックスだけでなく、純粋に浣腸を楽しむという、あまり世間では口に出来ない羞恥の遊びが・・・
それはとも子が自分でするのでも、大野が他の人にするのでも、またとも子が他人にされるのでも無く、二人がお互いを十分に尊重しながら行う、二人だけの儀式でもあった。


               第三部 了

               看護実習の記憶  完結

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