SPACE銀河 Library

作:プロメテウス

理  恵

  理恵は焦っていた。もう、せっぱ詰まっている。顔色はすでに青くなって
 いるに違いない。すれ違う人たちのなかで、理恵の顔をまじまじと見て行く人
 もいるぐらいだ。前屈みになってしまいそうになるのを、必死でこらえる。
 今、目立っては、いざというときに最悪の結果となってしまう。体を伸ばして
 お尻にグッと力をいれる。そうすれば、お尻の穴もギュッと閉まるような気が
 する。そう、理恵は大便をこらえているのだ。下痢症ではない。理恵は殆ど下
 痢をしない。女性によくあるように、便秘症である。しかも酷い。色々な方法
 を試してみた。食事、生活、漢方、体質改善・・・どれも、理恵の便秘にはか
 なわなかった。放っておくと、全くといっていいほど出ない。
 結局は下剤に頼ってしまう。出さなければ苦しくてしようがないからだ。おま
 けに、理恵の便秘は固くなってしまうのだった。少々の量の下剤では、焼け石
 に水である。多い目に服用しなければ効かない。出口に栓をしたようになって
 しまい、それを押し出すために相当量の下剤を服用する。その結果として、下
 痢状態のような激しい便意を招くことがよくある。
 今までにも意外な時間に下剤が効いてきて、漏らしそうになったことや、もら
 してしまったことはあった。しかし、漏らしたというのは正確ではない。下剤
 で出そうになってトイレで息んでも、なかなか出ない理恵の大便だから、すぐ
 には漏れない。肛門から固い便の先が頭を出してしまう。いくら理恵が肛門を
 閉めようと思っても、大量の下剤の力はすごいものがある。しかし、非常に固
 くて太い理恵の便は、それ以上は出てこない。だからパンティーのお尻の穴に
 あたる部分を汚しはするが、それ以上広がることはない。
 ただし同じ理由から、理恵はいつもトイレで長時間、悪戦苦闘する。肛門に何
 か固い物をはさまれたまま動かないあの痛いような、なんとも言えない苦しさ
 を味わいながら。他人が来る恐れのない自宅のトイレでは、それこそ獣の吠え
 るような声が出てしまうほど頑張るのだった。洋式だが、便座をあげてその上
 へ乗って和式のようにしゃがんでする。そのほうが踏ん張れる。人にみせられ
 た格好ではないが、背に腹は代えられない。下腹部をマッサージしてみたり、
 圧迫したり、肛門をマッサージして刺激したり、肛門を両手で広げてみたり。
 それでも、なかなか出ない。否、出かかって途中で止まって、前にも後ろにも
 進まなくなることさえある。
 だから今まで漏らしそうになっても、不安はあるものの、「下着が汚れちゃう
 けど、出てしまうことはないわ。」という安心感もあった。
  しかし、今日は違う。今日は外回りの仕事が入っていたので、夕べは下剤の
 服用を止めようと思ったが、あまりにも便秘が苦しかった。それに歩くことに
 よって刺激されて、また、出そうで出ない苦しみを抱きながら、外回りをする
 わけにはいかなかった。当然、確実なように下剤を大量に服用した。
 「朝、ちゃんと出ますように。」と祈りながら。大量だったせいか、理恵には
 珍しく、朝、催して、うれしさとともに苦しみながら、遅刻ぎりぎりまで頑張
 って排泄に成功したのだった。うれしさのあまり、ついうっかり忘れていた。
 理恵の場合大量の下剤を服用すると、1度排泄した後も、1日中、トイレ通い
 になることがあるのを。
  だから、今回は安心などしていられない。文字どおり激しい下痢状態だ。
 いつもだったら、栓の役目を果たしてくれる固い便は、今朝、悪戦苦闘の末、
 排泄してしまっている。その後、柔らかいのが出てきていた。
 背筋を伸ばして少しでも肛門を閉めようと思うが、お腹の痛みと強烈な排泄感
 から、つい前屈みになってしまう。
 もう少しで、駅のトイレがある。ここは少しだが知っている駅だ。
 「確か、こっちの方にトイレが・・・ウッ・・・アッ、あれだわ。」
 もうすぐだ。理恵は太股をすりあわせるような足の運びと、ちょっと前屈みの
 しせいでそっと歩いた。急ぎたいのだが、走ると漏れそうな感じだ。
 「えっ!そ、そんな。」
 ようやくトイレの入り口まで着いた理恵は、思わず声をあげてしまった。工事
 中だった。と、その時、気が散ったのがいけなかったのか、理恵の肛門が弛ん
 でしまった。
 「アッ!イヤッ!で、出ないで。お願い、止まって・・・」
 理恵の心の叫びとは裏腹に、水様便は肛門の隙間を縫うように溢れ出してくる
 パンティーの中で前後に広がっていくのが、その暖かさで理恵にもわかった。
 「ニュルニュル、プリ・・・」という音まで、少しだが聞こえる。
 もう、恥ずかしさと、我慢していた物が溢れ出す感覚とで、理恵はパニック状
 態だった。
 「ど、どうしよう。」
 物音に、はっと我にかえった理恵は、困惑するばかりだ。
 「早くなんとかしないと・・・」
 その間にも、また腹痛が襲ってくる。
 「ま、また・・・ウッ!・・あっ、そうだ。この反対側にもトイレがあった
  はずだわ。はやくなんとかしないと、スカートが・・・」
 理恵は、そっと歩き始めた。パンティーの中に自分のウンチを溜めたまま。
足を踏み出すごとにニチャニチャという音が聞こえるようだった。
 その間にも、また強烈な排泄感におそわれ、何歩か歩くごとに、漏らしながら
 歩いた。パンティーの底部の一番細いところでは、すでに横から溢れ、パンス
 トの内股のほうへ伝っているのが感触でわかる。
 「良かったぁ。ここのは使えるわ。」
 安心したとたんに、再び強烈な排泄感におそわれ、漏らしながら個室に飛び込
 んだ。個室に入った安心感と、スカートをたくし上げた安心感とで、理恵は立
 ったまま、両手でスカートを腰までたくしあげた状態で、どっと漏らしてしま
 った。
 「ウッ!・・・ハァー・・・ンー・・・」
 今度は音もすごかった。ガスがパンティーの中に溜まった水様便の中で、ブク
 ブクとはじけるのだから、よけいに派手な音がする。
 「ブスッ、ブリュッブリュッ・・・・」
 それに加えて、まだ便が溢れ出てくるのでる。パンティーに収まりきれずに、
 股の部分から溢れだした便が、パンストの中にどんどん広がっている。
 「今朝、あれだけ出したのに・・・
  ど、どうしてこんなに・・・ンッ、フンーン・・・」
 理恵は、もう苦しみから逃れたい一心だった。恥ずかしさと開放感とで、頭の
 中は真っ白になってしまっている。
 一段落すると、苦痛を逃れた後の開放感から、ほっとしてしまった。
 強烈な臭いに我に返った理恵は、しばらくはどう対処していいかわからなかっ
 た。スカートを腰のところへあげたまま、そっとしゃがみ込んでみる。パンテ
 ィーの中の便が圧迫されてお尻の上の方まで上がってきそうになって、あわて
 てもう一度立ち上がった。そして、そのままそうっとパンストごとパンティー
 を脱いでいく。足をガニ股に開き、できるだけ足に便が付かないように。
 「ベチャッ!」と音を立てて便が便器の外へこぼれる。その音を聞くと理恵は
 恥ずかしさで真っ赤になってしまった。そうっとパンストとパンティーを足か
 ら抜き取って、開いて見た。股の部分は両側に溢れ、前後にも広がっている。
 それを見たとたん、今度は涙がでそうになった。気を取り直し、トイレットぺ
 ーパーをたくさん使って、下着をくるんで汚物入れに捨てた。次は自分の後始
 末である。狭いトイレの中で、スカートを脱ぎ、下半身裸になって、ガニ股の
 状態でトイレットペーパーを使いながら、拭いていった。
  ようやく、始末を終わった理恵は、ノーパンにスカートという不安な服装で
 トイレを出た。下着をコンビニで買って仕事に戻ることも考えたが、約束して
 あるところは既に済ましたし、何よりもひょっとしたら臭いがするのではとい
 う心配から、会社に連絡を入れて家路についた。
  自宅で丹念にシャワーを浴びながら、今日のことを思い出して体が震えるほ
 どの羞恥におそわれるのだった。
 「下剤を多いめに飲まないと出ないし、多ければ後に下痢になるし・・・
  でも、・・・・浣腸なんて恥ずかしいし、恐くて・・・」
 浣腸の存在を知らないわけではない。職場で同僚の女性が便秘談義をしている
 のを聞いたときに、ちらっとだが話にでていた。そんな話に加わることさえ
 理恵には恥ずかしくてできなかった。下剤を買うのでさえ恥ずかしい理恵にと
 って浣腸を買う勇気は出てくるはずもなかった。


  診察室の処置台に横になって、理恵は体を固くしていた。どんな診察をされ
 るのかと思うと、緊張してしまう。やっぱり来なければよかったと後悔してい
 た。昨夜、いつもの強度の便秘の苦しさに耐えきれず、下剤を飲んだ。先日の
 粗相のことが思い浮かんだが、明日は外勤はなかったはずである。もし、先日の
 ようなことになっても、会社のトイレがある。しかし、あまりたくさん服用す
 るのは、やはり先日のことがあるだけに躊躇した。結局、少し多い目に服用す
 るのにとどめた。心配はあった。いつもより長期間の便秘である。少しぐらい
 多い目に下剤を飲んだところで、いつもの自分の状態を考えると、出るのかど
 うか疑問に思った。  「もっと、たくさん飲んでおけばよかったんだわ。」今
 になって考えても遅いが、後悔してしまう。今朝、腹痛と併せて催してきたの
 でトイレに勇んでかけ込んで、いつものように洋式便器の上にあがりこみ、臨戦
 態勢を整えた。 「この様子だったら、出てくれるかもしれないわ。」 腹痛がそ
 うとう酷く、強烈に下剤が効いてきてでそうな様子だった。しかし、苦しさだけ
 で、結局は出てくれなかった。腹痛に耐えかねて、なんとか出そう と、獣のよう
 な声を張り上げてまで頑張った。しかし、出ない。それだけでは なく、腹痛は
 益々強くなるばかりで、苦しくなる一方だった。約30分の格闘 の後、今日は
 仕事を休むことにした。こんな状態では仕事にならないとわかっ ていた。会社
 に連絡をいれてほっとすると、お腹の苦しさはまだ治ってないこ とに気が付いた。
 恥ずかしさはあったが、結局は苦しさに負けて、受診するこ とにした。家から
 少し離れた通勤途中の病院である。苦しくても家の近所の病 院は嫌だった。受け
 付けで問診票を書かされて、症状のところに正直に「便秘 で腹痛」、便秘は?と
 いうところに「その他(1週間に1回)」と書いた。そ れを渡すと看護婦は、
 「今日も便秘ですか?普段は薬を何か使ってますか?」 と大きな声で聞かれて、
 理恵は耳まで真っ赤になりながら、いつも使う薬と、それを服用しないと出ない
 ことを告げた。理恵の顔色が悪かったのであろう、 看護婦が「大丈夫ですか?
 救急ということで、先に診察を受けますか?」と聞 いたが、そんなに患者が待
 っているわけでもないので、理恵は丁寧に断った。理恵の順番がきて、診察室に
 入って医師の前の椅子に座った。「ンーム、便秘ね。酷いの?何日ぐらい?」 
 「あの・・1週間に1回ぐらいです。」問診票に書いたはずのことを、また口に
 出して繰り返さなければならないの?と理恵は恥ずかしさに真っ赤になりながら
 思った。 横には看護婦が立っている。「何か薬は使ってるの?」 「はい。」
 理恵は、薬の名前と、服用しなければ全然出ないことを告げた。だから、週末
 の夜に飲んで翌日はトイレデーになることも。 「お尻から血が出たりすること  
 は?」  「便は固いの?」  もう、その頃には理恵の頭の中はパニック状態で
 あった。 胸を出すように言われ、簡単な触診を受けた。服を戻すように言われた
 ときに はほっとした。「これでやっと、きついお薬をもらって帰れる。」と思っ
 て、 安心した。 「お腹をもう少し調べるから、そこの診察台に横になって。」 
 と言われた時は、一瞬動けなくなりそうだった。看護婦にやさしく促され、診察
 台に横になってこうやって待っているのである。スカートは脱いでいるから下半
 身はショーツとパンティーストッキングだけである。 ついたてを通して、次の患
 者の診察が簡単に終わった様子がわかった。 医者が横に立った。 「じゃあ、診察
 するから、下着を少し降ろしますからね。」 「膝を立てて。そう。お腹を押さえ
 ます。」 お腹の診察の後、医者の 「じゃあ、今度はお尻から診察するから。」 
 という言葉を聞いたときは、理恵は、一瞬わからなかった。しかし、その意味が
 わかるにつれ、理恵の頭の中は真っ白になっていった。看護婦に助けられ、下半身
 は裸にされた。そして、自分で膝を抱えるように言われ、その姿勢をとったとき
 には、初めてのセックスのときよりも恥ずかしかった。その上、看護婦が理恵の
 足をさらに頭の方へ押し倒していくにしたがい理恵の恥ずかしい部分は、さらに
 オープンになっていった。「じゃあ、今からお尻に指を入れて診察しますからね。
 力を抜いて。」ヒヤッっとした感触と共に、何かヌルヌルしたものをお尻の穴に
 塗られ、広げ るようにマッサージをされた。「んっ・・・。」理恵は思わず
 声を出してしまった。「大丈夫、痛くないですから。じゃあ、指をいれますよ。」
 「んっ・・・。」肛門を押し広げてくる指の感触の気持ち悪さに、理恵はまたも
 声を出してしまった。その指が、グリグリとまわりながら、奥へ入ってくるにつ
 れ、苦しさが 増していった。なにか外から、奥へ押し入ってこられるような感覚
 である。 「んーん。こりゃあ、ひどいな。これだけ固くなると、ちょっとやそっ
 との薬 じゃ出ないよ。 出るかどうかわからないけど、とにかくまず浣腸してみよ
 うか。」 医者の「浣腸」ということばに、一応、ひょっとしたらと覚悟はしてい
 たもの の理恵は、 「あの・・・、下剤か薬はいただけませんでしょうか?」
 と聞いてしまった。 「あなたの便秘じゃ、いくら薬を飲んでも、苦しいだけで
 出ませんよ。 恥ずかしいだろうけど、浣腸してまず、出しちゃわないとね。」
 結局、浣腸されることになったのだが、そのままの姿勢で、浣腸されることに
 なった。
 「はい、じゃあ、浣腸するからね。まず、管を入れるよ・・力を抜いて・・
  そうそう。・・・じゃあ、薬を入れますから・・・・どうです? 苦しくない?」
 「はい・・・・だいじょうぶです・・・・」
 理恵は肛門から侵入した嘴管と薬液のおぞましさに、震えそうになった。おまけ
 に全てを迎え入れるような姿勢で、肛門に管を入れられ、浣腸されてい るのだ。
 全てをさらして、肛門まで見られてる、肛門に管を差し込まれてる、そう思うと
 恥ずかしさで気が遠くなりそうだった。
 「はい、終わりました。抜きますよ。・・・」
 抜いた管を看護婦がガーゼで包み込むのを見た理恵は、それに自分の便がびっし
 り付いているのを見て、真っ赤になった。 「じゃあ、足を降ろしてもいいですが、
 膝は開いて立てといてください。」 「しばらく我慢してくださいね。あなたの
 便秘は酷いから、相当我慢しないと。 こうやってティッシュで押さえといてあげ
 ますから。」 しばらく恥ずかしさを噛みしめていた理恵だが、その後、便意が
 じわじわと広が ってくるうちに、恥ずかしさどころではなくなってきた。
 「あの・・・もう出そうなんですけど・・・・トイレは?」
 「まだ、まだ。えっ?トイレで?トイレに行っちゃうとね、すぐに我慢できなく
  なって、薬ばっかり出ちゃうから・・・。  失敗したら、また浣腸をしなく
  ちゃいけないのよ。」
 お腹のなかをかき回されるような感覚に、鳥肌をたてながら理恵は我慢した。
  今にも中から吹き出してきそうだった。
 「も、もう出ちゃいます!」
 「そう、じゃあ、しょうがないね。そこの隅にトイレがあるから、そこで出して
 ください。流さないようにね。あとで、出た量なんかを調べるから。」
 下半身裸で、理恵はお尻を片手で押さえながらという無様な格好で、よろよろと
 トイレへ入った。流さないように言われたが、今の状態でそれを考えると、地獄
 のようであった。水流の音で、自分の排泄音を消せないのだ。おまけに浣腸して
 いるから、ガスや排泄物が噴火のように吹き出してくるだろうことは、わかって
 いる。しかし、指示はしかたがないとあきらめて、理恵は苦しさから逃れること
 に専念した。 便器にしゃがんだとたん、「ビシュー!ブリブリ!」という自分の
 ものとは思え ないような恥ずかしい音とともに、薬液が噴き出した。死ぬほど
 恥ずかしかったが、今はもうお腹の苦しさを外へ出すことで、頭はいっぱいだっ
 た。「んーんっ!」 理恵は懸命に力んだ。その度に、肛門からたからかなラッパ
 の音がとどろいた。 「もう少しだわ!出そう!んーんっ!」 出そうだが出ない。
 理恵は焦った。便はそこまで来ているというのに。 固い便が肛門に栓をしたよう
 になってしまっている。 「まただわ。もうイヤッ。・・・んーんっ!」 看護婦の
 「失敗したら、もう一度浣腸・・・」という言葉が頭をよぎる。「もう、あんな
 こと・・・・」 しかし、無情にも、肝心なものは、ついに顔を出さなかった。
 トイレから出てきた理恵を見た医者の「どうでした?」という言葉に、理恵は
 「あの・・・お薬だけしか・・・・」
 「あそう。じゃあ、ちょっとつらいけど。摘便しなくちゃしょうがないね。もう
 一度、同じ姿勢をしてください。」
 医者の言ってることがよくわからなかったが、頭の中は恥ずかしさで真っ白にな
 りながら、理恵はもう一度同じ姿勢をとった。今度も看護婦に足を押さ えられ、
 胸の方へ押し下げられ固定されてしまった。
 「じゃあ、また、お尻に指を入れますからね。今度は、固くなって栓をしてしま
  ってる便を少し指で掻き出しますから。」
 「!」 ウンチを指で掻き出される・・・その想像に理恵は、もうなにもわからな
 くなりかけていた。しかし、一つ心配もあった。さっき浣腸の前に、肛門から指
 を入れられたときに、変な嫌な気分ではあったが、なんともいえない、やるせない
 ような、はじめて味わう気分だった。そのときに、少しではあるが感じてしまった
 のではないか、今度、もう一度指を入れられて、おまけに便を掻き出されるとなる
 と・・・。しかし、あの固い便を掻き出すということを想像すれば、痛さの方が、
 勝っているのでは・・・という安心感とも、恐怖ともいえない感じであった。
 「じゃあ、今から始めますよ。ちょっと痛いかもしれませんが、心配いりません
  から。」
 「んっ!」
 その指のおぞましいような感覚と、中で指をかき回されるときの、苦しいような、
 なんとも言えない感覚、便を掻き出されるときの痛いような、苦しいような感覚。
 理恵は、たびたびのけぞって声を出してしまった。部屋中に臭いが漂っているよう
 な気がした。恥ずかしい姿勢で、肛門に指を 入れられるだけでなく、大便まで掻
 き出されようとしている自分に理恵は高ぶりを感じてしまった。指を抜かれたとき
 には「もう少しだけ・・・」と思った自分が恥ずかしくなってしまった。そのうえ
 処置が終わって看護婦に、肛門周辺を拭かれるときに、看護婦が最後に、理恵の女
 性の部分を拭いてくれたことで、理恵は、ひょっとしたらと思い、真っ赤になって
 しまった。
 「さあ、今度はもう少し大きな浣腸をしますからね。そのまま、足を降ろして、
  膝は立てたまま開いておいてください。」
 腰の下に、クッションを入れられ、全てを迎えるような姿勢で待つ理恵の横に看護
 婦が持ってきた浣腸を見て、理恵はぎょっとした。イルリガートルである、そんな
 知識のない理恵には恐怖の対象でしかなかった。「便秘でこんなに苦しいのに、あ
 んあにたくさん入れられると・・・」
 「じゃ、今から、これで浣腸しますけど、今度はちょっと苦しいでしょうけど
  よーく我慢して、今度こそすっきりしましょうね。 はい、じゃあ、膝をもう
  少し開いて・・・」
 看護婦の指が、理恵の肛門を広げるのがわかった。肛門をのぞき込まれてるとい
 う感覚に理恵は、顔を両手で覆ってしまった。
 「んっ」
 管が入ってきて、奥の方へどんどん押し進められていく。薬が入ってきた。ちょっ
 と暖かい。お腹の中へ薬が入っていく。そのうちにお腹が苦しくなってきて、理恵
 は「んーん」と声を出した。
 「苦しいですか?もう少しですから、頑張ってね、大丈夫よ。」
 ようやく終わって、看護婦がティッシュを充てながら抜いた管に、便がびっしりと
 付いているのを見て、理恵は恥ずかしさのパニックになりそうだった。看護婦が理
 恵の肛門のティッシュを押さえながら、お腹をマッサージする。
 「便秘はいつもひどいの?」
 「はい。薬を飲んだりするんですが、うまく効かなくて。」
 「下剤はクセになっちゃうからね。私たちも勤務が不規則だし、ひどい便秘の
  人って多いのよ。そんな時は、ひどくならないうちに自分でイチジク浣腸を
  しちゃうのよ。こんなにひどくならないうちだったら、イチジク浣腸1個か
  2個で十分だし、自分でできるしね。」
 看護婦が話しかけてるうちにも理恵はお腹が痛くなってきて、排泄感が増して
 きた。
 「うっ!」
 「効いてきたのね。でも、さっきみたいになるから、もう少し我慢して。」
 「でも、もう出てしまいそうなんです・・・」
 「ダメですよ。もう少し頑張って。」
 お腹のマッサージをされると、もう肛門から便が飛び出しそうになってしまう。
 「も、もう出てしまいます。漏れてしまいそうです。!」
 「今度はね、お尻に便器を充てておいてあげるから、汚しちゃう心配はいらな
  いから、最後まで我慢して。」
 便器!・・・その言葉に、理恵は、
 「えっ?トイレには?」
 「あなたの便秘はひどいから、ぎりぎりまで我慢しないとね。 大丈夫、ちょっと
  恥ずかしいけど、心配いらないわよ。」
 お尻の下のひんやりとした便器の感触に、理恵は、足を大きく開いて、排便する
 姿までさらしてしまう自分を想像して、泣きそうであったが、今はお腹の苦しさを
 なんとかしたい方が勝っていた。
 「も、もう出ます!」
 「もうダメ?もう少しだけ我慢できないの?」
 「だ、ダメです。うっ!で、出ちゃぅ!」
 どっと排泄が始まってしまった。最初は薬がブシューっと噴水のように吹き出し、
 ガスがバリバリというような音を立てて理恵の羞恥心を煽った。一旦止まったか
 のように見えたが、肛門がみるみる開いてきて、いよいよそのものが頭を出し始め
 た。看護婦がここぞとばかりに、お腹にマッサージをする。
 「出てきたわよ。頑張って。」
 「んっ!。ハーッ、フンッ!」
 理恵は肛門が裂けるのではないかと思いながらも、頭の中は、その長大な苦しみを
 排出すのに精一杯である。顔を覆っていた両手も、今は処置台の縁を手が真っ白に
 なるほどつかんでいる。肛門が思いっきり広げられ、こすられながらその長大な苦
 しみはゆっくりと 出て行った。
 「んーっ、んはー、・・・はぁ、はぁ・・・。」
 その後は、同じように固くて大きなものが、我先にと出てきて山を作った。
 看護婦は、「たくさん出てるわよ。最後まで息んで頑張って。」と言いながら、
 マッサージを続けた。だんだんと勢いもなくなり、息みながら理恵がガスとともに
 排泄する柔らかな便になった。
 ようやく排泄が終わり、看護婦が理恵のお尻の周りを拭いてくれて、後始末を始め
 ると、理恵は恥ずかしさが戻ってきて、また両手で顔を覆ってしまった。
 「大丈夫よ。恥ずかしがることないわ。便秘はみんなするし、浣腸されたり、
  摘便されたりするのは、あなただけじゃないのよ。でも、あんなにひどくなら
  ないうちに出しちゃわないとね。もし、どうしても困ったら、またいらっしゃい。」
 看護婦の言葉に、理恵は小さくうなずくと身支度を整えた。会計で、支払いを
 済ませると、逃げるようにして病院の玄関を出たのだった。

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