SPACE銀河 Library

作:えり子

あ る 作 戦

 私は香谷えり子、20才、都内の女子大に通う学生です。どこから見ても平凡な、今どきの女の子です。ただ、人とちょっと違う趣味をもっています。それは何と「お浣腸」です。
 おことわりしておきますが、私は便秘症ではありません。毎日きちんとお通じがあるんです。それではなぜ「お浣腸」が趣味だ、ですかって?
 そう、それは私が高校生のときの出来事に由来するのです。その理由をお話しいたしましょう。

 高校2年生のとき、不注意で私は左足を複雑骨折してしまったのです。そして、整形外科病院に入院したのです。私は手術を受けなければなりませんでした。ナースが治療計画書を私に説明してくれました。それには見慣れない文字「浣腸」の2文字が2カ所にあったのです。1つは手術前日の夜10時のところでした。そして、もうひとつは手術当日の朝6時でした。
 まだ、手術日までには少し日数がありましたが、私はその2文字のことがとても気になり、いつも頭を離れませんでした。
 それは私には未経験のものではありましたが、決して未知のものではありませんでした。なぜなら、友人達からときどきその処置の経験談を聞かされていたからです。浣腸はお尻をむき出しにされ、お尻の穴からお薬を注入され、しかも、数分間我慢させられ、あげくのはて、出したものをチエックされるという、とても恥ずかしい処置であることがわかったのです。浣腸が未経験の私には、それは想像を絶するものでした。
 今私はあのいまわしい処置を受けなければならないのです。それは決して逃れることができないものなんです。

 毎晩私はそのことが気になってよく眠ることができませんでした。母が見舞いにやってきました。母が言います。
「手術まであとわずかね、調子はどう、傷は痛まない?」
「痛みはないわ。」
「痛むときはがまんしなくていいのよ、看護師さんに伝えるのよ。」
「うん。」
 私はこの病院で初めて経験したことがひとつあります。それは座薬なんです。痛みが強いとき、ナースから座薬を挿入されたのです。それはあっという間のできごとでした。
 痛みが強いとき、がまんしきれずにベッドでナースコールのボタンを押したのです。ブザーからナースの声が聞こえます。
「どうしました。」
「痛くてたまりません。」
「すぐに行きます。」
 ナースは廊下を小走りで、すぐにやってきました。
「えり子さん、痛み止めの処置をしますね。」
「私はお注射かと思っていましたが、違いました。」
「座薬を入れます。」
 それは耳慣れない言葉でした。彼女は私のパジャマとショーツをさげました。そして、お尻に何かを挿入して、指でそれを押し込みました。
 本当に、あっという間のできごとでした。恥ずかしい処置でしたが、そう感じる時間もありませんでした。幸い、それはとてもよく効き、痛みは間もなく遠のいて行きました。

 私はそれから数度座薬の処置を希望しました。ちょっぴりの恥ずかしさと劇的な効果、これは病みつきになります。けれども、このお薬は連続使用ができないんです。少なくとも8時間はおかないといけないんです。それがちょっと不満なんです。
「お母さん、大丈夫よ、痛いときは座薬を入れていただくの、すごくよく効くのよ。」
「そう、それはよかったわ。」
 私は体の様子や処置が行われたときのことを余さず手帳に記録しています。
*月*日 *時*分 採血
*月*日 *時*分 点滴
*月*日 *時*分 座薬挿入
*月*日 *時*分 検温 *度
*月*日 *時*分 排尿
*月*日 *時*分 排便
などです。

 母との会話が続きます。私は是非とも母に聞いておきたいことがあったのです。
「お母さん、ちょっと聞きたいとことがあるの、いい?」
「もちろんいいわよ、何?」
「手術の前に浣腸が2回あるんだけど、それってどうしてもしなければならないの?」
「そう、あれはね、全身麻酔だからおなかを空にしておかなければならないのよ。」
「しなければどうなるの?」
「手術中にうんちをお漏らししちゃうかも知れないわね。」
「へ〜、そうなんだ、やっと理由がわかったわ。」
「あなた、浣腸のことが気になるのね。」
「うん、これまで経験ないので・・・。」
「大丈夫よ、あれって痛くないし、すぐに終わっちゃうから。」
「ところでお母さんは浣腸の経験はあるの?」
「もちろんよ、何度経験したかわからないくらいよ。」
「へ〜、そうなんだ。」
「お母さんが子供の頃はよく浣腸されたものよ、おなかが痛い、うんちが出ない、熱が出た、元気がないなど、何かかあるとすぐ浣腸されたの。」
「それは病院でなの?」
「自宅と病院の両方ね、自宅ではおばあさんにガラスの浣腸器でしてもらったし、病院でもよく浣腸されたわ。」
「そうなの、叔母様もそうなの。」
「そう、妹のきみ子も私と同じでよく浣腸をされたものよ。」
「私と妹のゆり子は浣腸は経験ないわ。」
「今は子供のときはあまり浣腸しなくなったわね、でも、手術のときや、女性の場合お産のときは必ず経験するわよ。」
「ふ〜ん。」

 私と母の浣腸談義はまだ続きます。
「お母さん、お産のときに浣腸されたの。」
「もちろんよ、あなたのときは普通分娩だったけど、陣痛がきて入院すると、すぐに浣腸されたわよ。」
「なぜお産のとき浣腸するの。」
「赤ちゃんがうんちと一緒に生まれると、赤ちゃんはいやでしょ。」
「それはそうね。」
「お産のときのいきみは、うんちをするときのいきみと同じ要領なの、だからおなかにうんちがあると、うんちも当然出るのよ。」
「うん、うん。」(笑)
「それにね、浣腸をすると陣痛が強くなってお産がスムースに行くのよ。」
「よくわかったわ、お産のときの浣腸って大切なのね、私もそのときは必ずしていただくわ。」
「そうよ、だから浣腸ってそれほど心配しなくていいのよ。」
「ゆり子の出産のときもやはり浣腸したの?」
「そうよ、ゆり子は逆子だったから帝王切開だったの、これは外科手術と同じだから、あなたの浣腸の場合と同じケースだわ。」

 母はいったん話しが始まると、止まらないんです。
「まだあるわよ、最近大腸の検査を受けたの、そのとき高圧浣腸も経験したわよ。」
「それって何?」
「普通の浣腸はグリセリン液を入れるでしょ。高圧浣腸はぬるま湯を大量に入れるのよ、おなかの洗浄が目的なの。」
「ふ〜ん。」
「器具もイルリガートルといって点滴の器具のように釣り下げて上から落としながら入れるのよ。」
「時間がかかるでしょ、それに苦しくないの?」
「始めは大丈夫だけど、お終いの頃急に苦しくなるわ、だからおトイレが間に合わなくて、ベッドの横のポータブル便器を使ったの。」
「それは大変だったわね。」
「よくわかったわ、私、もう浣腸には不安はなくなったわ。」
 それにしても母がそんなに何度も浣腸を経験しているとは知りませんでした。

 そして、手術前夜、夜10時頃です。ナースが病室にやってきました。手には浣腸器を手にしていました。それはずんぐりとした透明プラスチック製のもので、長いノズルが付いていて先端の部分の赤いキャップが印象的でした。
 私はパニックになることはありませんでした。浣腸を受け入れる心の準備ができていました。みっともない態度や反応をしないよう、心に決めていたのです。私は体が動かせないので、仰向けの姿勢のまま受けます。腰にまくらを入れて、すこしお尻が浮きます。パジャマの下とショーツが脱がされ、お尻がむき出しにされました。
 浣腸に至る前の序曲として、座薬挿入を経験しているので、この辺までは大丈夫です。
「口で呼吸をして下さい。」
「はい。」
「入れます。」
 お尻に何かが挿入されました。あの赤いキャップに隠れたノズルの先端の部分でしょう。ゼリーのようなものを塗ってあったので、それはするりと入りました。それから、温かいものがお尻から注がれるのを感じました。よれはゆっくりした流れです。これは悪くありません。友人の話ではきもち悪いということでしたが、むしろきもちいいくらいです。
「大丈夫ですか?」
「はい。」
「もうすぐ終わります。」
 若いナースですが、落ち着いて処置をしています。私も負けずに落ち着いて処置を受けます。
「終わりました。トイレに行けないから、便器を入れておきます。できるだけがまんして、出して下さい。5分くらいね。終わったらボタンを押して私を呼んで下さい。」
「はい。」
 私は便器をお尻の下に入れたまま、時計とにらめっこしながらがまんします。まだ注入直後なのにもうおなかに違和感があります。
 1分が過ぎました。かなりの便意を感じます。5分もがまんできるかししらと不安になります。便意は強くなったり弱くなったり、強弱のアクセントをつけながら、全体としてクレッシェンドのように尻上がりに強くなってきます。

 2分が経過しました。これまでで最高のピークが来ました。私は懸命にがまんします。しかし私の抵抗もこれまででした。
 独りでにお尻の穴が開いてしまいました。そして、当然のことながら、液が最初に排出され、続いて固体の排出が続きました。それはとどまることなく自然の流れで排出されました。
 自然ではなく強制排出というべきかも知れませんが。一連の流れが止まったとき、おなかが軽く感じられ、全部が出てしまったことを実感しました。ほっとしました。

 ただ新たな試練が始まります。私が出したものすべてをナースに見られちゃうのです。しかも、臭気とともに・・・。
 浣腸器の挿入、液の注入までは耐えられましたが、新たな試練に耐えなければなりません。放置するわけには行きません。私はボタンを押してナースを呼びます。インターフォンから先ほどのナースの聞き覚えのある声がします。
「出ましたか?」
「はい。」
「すぐ行きます。」
 ナースが小走りにやってきました。ナースはまず窓を開けました。それから私のベッドサイドに寄り、声をかけてくれます。
「たくさん出ましたね。」
「はい。」
「そのままでいいですよ、処置をしますから。」
 ナースはお尻を丁寧に拭いてくれました。それから便器をはずし、下着とパジャマをあげてくれました。腰からまくらをはずし姿勢を元に戻してくれました。それからふとんをかぶせてくれました。
「明日の朝もう一度浣腸があります。この要領で大丈夫ですよ。さあ、明日の手術にそなえてゆっくりお休み下さい。」
「はい。」

 窓を閉めて便器をもってナースは去って行きました。それにしてもすごい臭気でした。自分自身のものなのに、恥ずかしくなってしまいます。4人部屋でしたが、私以外に患者はいなく、実質個室と同じ状態だったのがせめてもの慰めでした。
 これが私の浣腸初体験でした。友人達からいろいろ聞いていたもののやはり体験してみなければ本当のところはわかりません。またこの体験に対する反応も人、それぞれに多様でしょう。
 私の場合は、心配していた割に、少なくとも悪くないと感じました。恥ずかしさもありますが、なぜか再度体験してみたいというきもちがあるのです。そう、明日早朝にまた私は2度目の経験をできるんです。体も心もすっきりした私は目覚ましを5時30分にセットして、深い眠りに入る
のでした。

 目覚ましのベルが鳴りました。5時30分です。私は飛び起きました。もうすぐ期待のあの浣腸があるんです。今日は手術という大きなイベントがあるんですが、私の関心はむしろその前座ともいえる浣腸の方に向けられているのです。
 やや早い5時45分にナースがやってきました。今度は前と別のナースです。若く美人ですが、クールな感じの人です。彼女は事務的に言います。
「えり子さんですね、浣腸をします。」
「はい。」
 浣腸器は前回のものと同じです。姿勢も同じでした。ただ違ったものがありました。それは浣腸液の注入が終わった後のことです。今度は便器ではなく、おむつをさせられたんです。これは驚きでした。赤ちゃんに舞い戻った気分です。仕方ありません、私はただなすがままにナースに従うだけです。
 確かに便器よりも臭気が拡がりにくいでしょうし、後の処理も楽かも知れません。今回は3分間がまんできました。自己記録を1分間更新できたのです。

 ボタンを押してナースを呼びます。ナースは無言でてきぱき処置をします。処置が終わった後私にこれからの処置の予定を事務的に伝えて、部屋を出て行きました。
 手術は無事終わり、その後私は退院できたのです。私には手術そのものよりも術前のあの2度の浣腸が大いに印象深く感じたのです。
浣腸を経験した友人達が恥ずかしいながらもその経験談を仲間に伝えてくれましたが、皆浣腸のことが強く印象に残ったのでしょう。私たち若い女の子にとって、浣腸は心に強く焼き付けられるエポックメーキングなことなのです。
 私の場合は浣腸が単なる一過性の経験に終わらなかったのです。高校3年生になった私はあの感覚が忘れられずに、ごく自然の成り行きで自分で自分自身に浣腸をかけるようになってしまったのです。
 こっそり薬局に立ち寄り、恥ずかしい思いをしながらいちじく浣腸を購入する日々が続いたのです。私は便秘症ではなかったので、頻度こそ多くなく1カ月に一度くらいでしたが、浣腸を決行する日は異常に興奮したものです。

 自室のベッドの上に仰向けに寝ます。あの病院のシーンを頭に思い描きながら一人芝居が始まります。
「えり子さん、今から手術の前の浣腸をします。」
「はい。」
「腰を浮かせて下さい。」
「はい。」
 私は腰の下にまくらを入れます。お尻の位置が少し高くなります。ベッドが汚れるといけないので、バスタオルをお尻の下に敷いておきます。いちじく浣腸を箱から取り出します。そしてキャップをはずします。少し液を出して、先端を湿らせます。
「今から入れますので、お口でハーハーと息をして下さい。」
「はい。」
「入れます。」
 私はゆっくりと先端をお尻の穴に潜らせます。すんなりと挿入されました。ゆっくり容器をつぶします。冷たい液をお尻に感じます。しまったと思います。あのときと感触が違います。温めておけばよかったと後悔しますが仕方ありません。
 注入を続けます。チューブを抜きます。少し黄色に着色した先端部を鼻に近づけてみます。独特の香りがします。ああ、これが私自身の恥ずかしいニオイなのだわと認識します。

 浣腸器をティシュでくるんで、私は下着を戻し、階下のおトイレに向かいます。便器にすわって、できる限りがまんします。手にもったストップウオッチが1秒また1秒と時刻を重ねます。
 便意の大波小波を必死で乗り越えます。私はサーファーになった気分です。何度も何度も繰り返し波を乗り越えます。最後に襲ってきた大波に私はついに飲み込まれてしまいました。時間は3分40秒でした。

 この「お浣腸遊び」は私にとって最高の慰めと気晴らしになりました。これが終わると、私はしばし放心したようになります。それからややあって、今度私は猛然とお勉強にチャレンジするのです。私のお勉強のエネルギー源は浣腸によるように感じます。
 私のお尻から注入されたあのわずか30gのグリセリンのエネルギーが私の体内でトリガーとなって、私の受験勉強の大きなエネルギー源に火を着けるのです。私はまるで鉄腕アトム(の妹)になったかのように、目標に向かって突き進むのでした。そしてやがて私は志望していた念願の都内の女子大に合格できたのです。

 女子大生となった今の私の趣味も当然「お浣腸」です。ただ、イチジク浣腸を購入するのはやはり抵抗があります。高校生のときは1か月に1度だった頻度が1週間に1度にアップしてきたからです。毎週薬局でイチジク浣腸を購入するのはとても恥ずかしいです。「これは何とかならないか知ら?」と私はいつも考えます。
 そこで私は浣腸器の自作を思い立ちます。いろいろと考えたのですがうまいものができません。元々手工芸やクラフトが苦手だった私です。ところがある日偶然立ち寄ったカメラ屋さんに、イチジク浣腸の形とそっくりのゴム球があるのを発見しました。「これはいいわ。」と私は直感しました。それが何に使われるものかも知らずに・・・。写真のプリント代金とその品物の代金を支払って、そそくさとカメラ店を後にし、私は自分のアパートに戻ります。
 それは風を送る道具のようでした。ゴム球のお尻に穴があいていて、そこから空気が取り込まれ、ノズルの先端から勢いよく吹き出すのです。きっと写真の表面のほこりを吹き飛ばすもののようです。

 この穴をふさげば、浣腸器として使用できると私は確信しました。愛用している万年筆のインクカートリッジの先端部をはさみでカットします。
その部分は先細りになっています。それをゴム球の穴に押し込みます。これがストッパー(栓)の役目をして穴は完全にふさがりました。
 早速テストをしてみます。コップに水をくみます。ゴム球をつぶして、ノズルをコップの中に入れます。ゴム球から手を放します。ゴム球は自然に復元していって元の大きさに戻りました。中には水がいっぱい詰まっています。
 今度私はゴム球を握ってつぶします。ノズルの先端から勢いよく水が注出されました。成功です。
 イチジク浣腸型の繰り返し使えるマイ浣腸器がやっとできあがったのです。とても嬉しく感じました。私はマイ浣腸器のゴム球にほほずりをし、先端のノズルにディープキスをしました。

 薬局に行ってグリセリンのボトル1本を購入してきました。レジの男性店員が私の顔を見てとてもうれしそうな表情をしていたのが不思議でした。私は1週間に1回、50%のグリセリンを50cc使います。このボトル1本で何と20週間分がまかなえる計算です。

 私のお浣腸タイムは毎週土曜日の20時です。世の男性方なら、
「一杯やろうか・・・。」
 という時間帯でしょうが、私の場合、お口からではなくお尻から
「1本入れましょう・・・。」
 ということになるんです。
 この時間に私は1週間分の心とおなかの垢落としをするのです。場所はバスルームです。ユニットバスではないので、スペースが少し広く、体位などの制約がないのです。それに万一失敗してもあまり問題が生じません。

 湯船にお湯を入れておきます。私は生まれたときのままの姿になっています。温かいグリセリン液50ccを準備します。ゴム製浣腸器に液を満たします。ノズルにスキンクリームを塗ります。
 私は立ち位を取ります。手を背後に回して浣腸器をゆっくり挿入します。ゴム球をゆっくりつぶします。温かい液の流れを感じます。これは病院のときのあの感覚と同じです。とてもきもちよいものです。
 注入が終わりました。砂時計を倒します。

 やおら、私は砂時計をもって、隣のおトイレに向かいます。便意の大波、小波としばし戯れたあと、私はもう戯れるのをやめます。砂時計は3分50秒を示していました。お尻を始末して私は再びバスルームに向かいます。すっきりした気分で、今度はバスタイムです。
 これが私の最高の道楽です。心と体とおなかが美しくなって、女の子として元気で生きていることを実感する瞬間です。とても幸せです。自分がきれいになる瞬間って、とてもうれしいものなんですよ。
 私の趣味は今もなお継続しています。浣腸器は大型の180ccのものをまたもうひとつ自作しました。銀座に友人と買い物に行き、分かれて友人は地下鉄へ、私は有楽町へ向かいました。駅の近くに大型のカメラ店があるのに気付いたのです。そこに立ち寄ると、あのゴム球の大型のものがあったのです。
 少々高価でしたが私はちゅうちょすることなくそれを買い求めたのです。それがすぐに私の手によって浣腸器に変身したというわけです。これは便利です。3回注入すれば500ccになり、ぬるま湯を用いると大腸洗浄効果もあるのです。

 液のバリエーションも少し増えました。グリセリン、食塩水、石けん水、にがり水などです。また、お茶、紅茶、コーヒー、ハーブ各種も試しました。ただし、濃度や注入量は決して無理がないよう注意しています。液の温度もしっかり管理しています。
 私のお浣腸は心と体の健康維持が目的で、健康を害するような方法はしないと決めているのです。体位も仰向けやよつんばい、立ち居位、座位などいくつかを試みています。毎回のお浣腸ではやはりあの病院でのシーンを意識してしまいます。やはりあの病院での浣腸経験が私のトラウマになっているのかも知れませんね。

 ある日曜日のことです。体調の異常に気づきました。お昼頃おトイレに行き、おしっこをしました。そのとき排尿痛を感じました。それにおしっこが出るとき、ちょっと熱いような感覚があるのです。それから次第におしっこの間隔が近くなるのです。もちろんおしっこの量はちょっぴりなのですが・・・。
「これはやばいわ。」と私は思いました。
 そして夕方から発熱がありました。熱はぐんぐん上昇して、食欲もなくなり、夕食は私の好物のオムライスなのにまったくのどを通りません。まだ9時なのに私はお風呂にも入らず、ベッドの上の人となりました。高熱にさいなまれ、私はうつらうつらと苦しく長い夜を過ごします。
少し眠ってはすぐに起きておトイレに行きます。何度もベッドとおトイレを往復します。夜って、こんなに長いものかともだえるのでした。

 はっと目が覚めます。まだ1時です。明け方までは4時間以上もあります。体温計で熱を計ると、何と39度もあります。寒気も覚えます。「これはいけないわ、明日は泌尿器科を受診しましょう」と考えます。
 ただちょっと心配なことがあります。診察のとき足を開かされて、あのアヒルの嘴のような器具をおしっこの出る部分に挿入され内部を検査される姿を想像するとぞっとします。「やはり診察はよそうかしら、そんな恥ずかしい診察、とても受けられないわ。」
 私は意を決して、朝9時に泌尿器科の看板のある病院を訪れます。泌尿器科、婦人科、肛門科に行くのはとても勇気が必要ですね。始めにおしっこの検査と採血があります。そしていよいよ診察です。

 先生は尿と血液の検査結果を見るなり言います。
「これはひどいですね、膀胱炎と腎盂腎炎です。念のため診察します。」
 あっ、いよいよあの診察だわと私は観念します。ところがさにあらず、診察は実に簡単なのもでした。私は着衣のまま先生と向かい合って椅子に座っています。先生は私の背後に回って、腰の両側を手でとんとんと軽く叩きます。すると、そこは痛みを感じます。
私は思わず、「痛い。」と叫びます。
「やはり間違いありませんね、これはすぐに入院しなければなりません。」
「えっ、そんなに悪いんですか。」
「そうです。」
「原因は何でしょうか。」
「これは女性に特有の病気です。あなた、排便のあと肛門を拭くとき、どちらの方向に拭きますか、前から後ろなのか、後ろから前ですか。」
 突然の質問に驚きます。
「はい、後ろから前です。」
「多分原因はそれでしょう。肛門の大腸菌が尿道へ入ったのでしょう。」

 そういえば昨日の土曜日、私はいつものように「お浣腸遊び」をしたのです。そのときお尻の雑菌が前に入った可能性が否定できません。お遊びとは言え、安全面、衛生面には十分気をつけなければならなかったのです。「これは失敗したわ。」と思ってももう後の祭りです。
 もちろん、昨日「お浣腸遊び」をしたことは先生には内緒にしておきました。

 私は入院して4人部屋に入りました。私、そして中学生の女の子、20代のOL、そして中年女性です。皆それぞれ病名は違います。私は1日中安静にして、2回点滴を受けるだけです。お隣のOLは明日尿管結石の手術だそうです。
 病院の夜は早く、夜9時にはもう消灯です。熱があるので苦しく、なかなか眠りに入ることができません。夜10時にナースがランプとトレイをもってやってきました。隣のベッドに行きます。枕元の蛍光灯が点灯されました。カーテンで仕切られていますが、話声はよく聞こえます。
 私はこっそり聞き耳を立てます。
「*子さん、起きていますか。」
「はい。」
「今から浣腸をしますね。」
「はい。」
 そうか、お隣は明日手術です。それに備えての浣腸なのです。私は隣のベッドの方向に耳と目を近づけます。
 
 カーテンが薄いので、OLとナースの仕草が影絵のようにはっきりシルエットで見えます。蛍光灯の青いスポットライトを浴びた幻想的なシーンです。
「はい横を向いて下さい。」
 ナースが手で浣腸器をかざして、お尻に挿入する動作が確認できました。ファンタジックな映像です。私は胸がどきどきします。あの美人OLが今まさに浣腸されているシーンが私のすぐ近くで展開されているのです。リアルな音響とともに・・・。
「入れますね、ハーハーと息をして下さい。」
 ・・・・・・・・
「終わりました。すぐトイレに移動していいですよ。ただ5分くらいはがまんして下さい。それから出したら流さないで下さい、確認しますから。終わったらボタンで私を呼んで下さい。」
「はい。」
 彼女はベッドから降りておトイレに向かいました。お隣の美人OLさんはついに浣腸されちゃったのですね。数分後に彼女はベッドに戻り、蛍光灯が消され、部屋は再び静寂に包まれました。

 時間は1時です。私はのどの乾きを覚え目が覚めました。ミネラルウオーターを飲んだあと、体温計で熱を計りました。38.8度でした。頭痛もあるので、苦しくてたまらずたまらず私はナースコールをしました。
 ナースがランプ片手にやってきました。
「どうしました。」
「熱が高くとても苦しいです。」
 彼女は私の額に触れて、すぐに言いました。
「熱い。」
 彼女はいったん戻り、すぐに再び現れて言います。
「えり子さん、座薬を入れましょう。」
 私は抵抗しません。それどころか、この処置は浣腸と並んで好きなものなのです。お薬がお尻に入り、それに続いて彼女の指も少し奥の方まで挿入されました。指をしばらくお尻の穴に滞留させた後、指が抜かれました。
「これで熱が下がると思います、お休みなさい。」
「ありがとうございました。」

 尿意を感じ、私は目が覚めました。まだ、6時前でした。おトイレに行き、戻ってまたひと眠りしようとしました。そのときです。ナースがまたやってきました。もうかなり明るいのでランプはもっていません。
 ナースの姿の全体がよく見えました。手には大きな浣腸器を携えています。お隣のベッドに行きました。
 また私は耳と目をお隣のベッドに近づけます。朝日が少し射し始め、今度もカーテン越しに再びシルエットが現れました。今度は赤いスポットライトを浴びてのシルエットです。
「*子さん、また浣腸をします。」
「はい。」
 そしてまた美人OLさんに浣腸の行為が行われたのです。

 何ということでしょう。入院初日というのに、ここでは浣腸や座薬の処置の連続です。しかも、私は偶然間近で美しいルエットの浣腸シーンの動画を1度ならず、2度も見学することができたのです。
 そして、美人OLが浣腸されるシーンを間近に見て、私自身も浣腸されたいと熱望するのでした。
「あ〜あ、私にも浣腸をして欲しい・・・。」

 朝食が済んで、10時になりました。ナースが部屋に来て各患者の状態をチェックします。体温のチエック、前日の昼食、夕食、朝食を食べられたか、排便はあったか、排尿の状態などです。
 OLの美女は手術室に移動して不在です。中学生の女の子が排便がなかったそうです。
「もう二日目ありません。」
 ナースが言います。
「明日なかったら処置をしましょうね。」
 そう言ってナースが部屋から出ていきました。

 中年の女性が口を開きます。
「ここはね、下剤を飲ますのよ、浣腸をしてくれるといいのにね。浣腸が一番なのに、すぐに効くし・・・。」
 私が尋ねます。
「どうして下剤なんですか?」
「どうなんでしょう、婦人科や内科、外科ならすぐに浣腸をしてくれるけど、ここは泌尿器科だからか知ら。」
 この話を聞いて、私はある作戦を頭に描きました。これは私の「浣腸大作戦」なのです。中年のおばさんの言う通り、女の子は三日目に下剤を処方されました。そしてその翌日おなかが痛いといいながら何度もおトイレに通うのでした。

 2日目のナースのチェックのときに、私はお通じがあったのにもかかわらずお通じがないと報告しました。そして3日目は今度はわざわざお通じをがまんし、再びお通じはありませんと報告しました。このままなら、私も明日下剤を処方されるはずです。私の場合、毎日お通じがあるので、お通じをがまんするのはせいぜい1日が限界なのです。このままだと明日の朝は自然排便があるはずです。だから、作戦は今晩実行に移すのです。

 夜10時になりました。部屋は消灯され暗いです。 私は意を決して作戦開始を決意し、ナースコールボタンを押します。いよいよ私の「浣腸大作戦」が実行に移されようとしています。
 ナースがランプをもってベッドにやってきます。
「どうしました。」
「はい、おなかが張ってとても苦しいのです。眠れないんです。」
 あきらかに浣腸を期待しての言葉なのです。おなかには1日分は蓄えているので、浣腸されても出るものはあるわという読みです。
「便が出れば楽になりますか?」
「はい、多分・・・。」
「それではちょっと待って下さい。」
 ナースはいったん控え室に戻ります。

 どうやら私はかけひきに成功したようです。わくわくして、待ちます。
 ナースがやってきました。
「座薬を入れますから横を向いて下さい。」
「はい。」
 これは意外なことでした。解熱用の座薬は想定していましたが、便秘用座薬の存在は頭にありませんでした。私は不満ながらもナースの指示に従います。浣腸大作戦の失敗を予感しました。
「入れました、10分くらいがまんして下さい。」
「はい。」
 私はすぐおトイレに向かいます。

 途中、私は作戦の変更を余儀なくされます。しかし、瞬間、ある考えが浮かびます。私は便器に座るやすぐにいきみます。すると、さきほどの座薬がぽとりと落ちてきました。私はそれを流し去ります。それからしばらく便器にそのまま座り続けます。

 20分くらいが過ぎました。ナースがドアをノックします。
「はい。」
「えり子さん、どうですか。」
「はい、いきんでいるんですが、出なくてとても苦しいです。」
「そうですか、困りましたね、ではちょっと待っててね。」
「はい。」
 ナースがやってくる時間がとても長く感じられます。何かを準備しているのでしょうか。不安な気持ちで時間が過ぎて行きます。

 数分後にナースがやってきました。
「えり子さん、こちらの広いトイレに移動して下さい。」
 私は車椅子用の広いおトイレに移動します。ナースが立っています。手には大きな浣腸器が握られています。
「やったわ。」
 私は心の中で叫びます。作戦、ついに成功です。
「悪いけど浣腸します。」
「はい。」
 私はうれしさを押し殺して、悲しげな表情を取りつくろいます。そして心の中で叫びます。
「悪いなんてとんでもないです。とてもありがたいです。バンザイ・・・。」
「立って、手すりをもって、お尻を突き出して下さい。」
「はい。」
 うれしい瞬間です。ナースはパジャマと下着を下ろします。
「足を少し広げて下さる。」
「はい、こうですか。」
「そう、お尻をもうちょっと突き出してね。」
「はい。」
 ナースは中腰になって、彼女の目を私のお尻の穴のすぐ近くにもってきます。
「口で息をして下さい。」
「はい。」

「入れます。」
「はい。」
あぁ、あの温かい液の感触が素敵です。私は思わずうっとりします。
「大丈夫ですか?」
 ナースが言います。
「はい。」
液はゆっくり注入されます。
「終わりましたよ、できるだけがまんして下さい。出たら流さずに私を呼んで下さい。」
「はい。」
 私はいつものように、便意とのサーフィンをしばし楽しみます。楽しみながら考えます。
「浣腸ってどうしてこんなに魅力的なのでしょう?浣腸には4度楽しみがあるからじゃないか知ら?」
 私は自問、自答します。「1度目の楽しみは浣腸の準備段階ね。ナースとのかけひき、浣腸の宣告、それを受けてのやるせないきもち・・・などよ。2度目は嘴管を挿入され、液を注入されるときのよろこびね。これがピークの快感じゃないか知ら?

「3度目は便意の波とのサーフィンの楽しみよ。 これは苦しい面もあるけど、浣腸の醍醐味とも言える部分ね。そして4度目は排泄、そして結果の観察、お尻の始末ね。たくさん出るとすっきりするし、それをナースに見られる恥ずかしさも味わいのひとつかもね。浣腸はこの4つのプロセスが微妙にかみ合って、全体で大きな楽しみとなるんじゃないか知ら?」
 そんなことを考えていると、いよいよ最後の大きな便意がやってきました。私はそろそろねと感じて、1日半かかっておなかに溜めたものを便器の中に出します。予想していたより量が多く、ちょっと恥ずかしくなりました。お尻をシャワーで洗って、ナースコールをします。あのナースがやってきます。
「えり子さん、すごいじゃない、たくさん出たわね。流していいわよ。」
「はい。」
「これで眠れるわね。」
「はい。」
 私の浣腸大作戦がやっと終わりました。恥ずかしさはあったものの、この成果に私は満足して、ベッドでぐっすり休みます。

 浣腸はその後にもう1度経験しました。今度は便秘ではなく検査の前の浣腸でした。これも予想外のプレゼントで、とてもうれしかったです。
 私は腎臓の造影検査を受けたのです。おなかを空にしておかなければ像が見えないということで、ありがたく浣腸をしていただきました。
 結局、1週間の入院で私は、座薬挿入5回(解熱用4回、排便用1回)、浣腸2回を受けたのです。病気になったのは不幸なことでしたが、これらの処置には大いに満足できました。
 退院後、数日間自宅療養をして、私は全快したのです。最初の浣腸を引き出した「私の浣腸大作戦」はとても印象的でした。


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