SPACE銀河 Library

作:えり子

新しいお友達

 私は香谷えり子、27歳、主婦です。結婚して2年になります。子供はまだいません。主人は都市銀行の銀行員で、1カ月前に私は主人と一緒にこの土地に転勤してきました。

 私は今、ある病院に来ています。今日は予約していた胃腸の検査を受けるのです。 実は私、病院に行くのが好きなんです。病院に行って検査や処置を受けると、日頃の単調で暇な生活の退屈しのぎになるんです。
 先日も少し胃腸の調子が悪かったので、この病院を受診したのです。そして、先生にカメラで胃腸を診ましょうと言われたのです。

 今日は胃カメラと大腸カメラを予約した日なのです。大腸カメラは大腸の全部を診るものと、大腸の下部のみを診る2種類があるらしいのですが、今回は大腸の下部のみを診るものです。全大腸検査は前処置が大がかりで、準備を含めるとほぼ1日がかりとなる検査なのですが、下部のみの検査の場合、事前の準備は朝食を抜くだけでいいのです。検査も数分で終わるそうです。
 受付を済ませ、内視鏡室の前に来ました。数人の人が長椅子に座って順番待ちをしています。
「おや、香谷さん、えり子さんじゃない。」
 声のする方を見ました。同じマンションにいる吉川とも子さんでした。彼女はなおも私に声をかけます。
「どうなさったの、調子が悪いの?見た感じ、お元気そうだけど。」
「はい、それほど調子は悪くないんですが、一応検査を受けるんです。」
「そうなの、私もそうよ。」
「そうですか。」
 彼女は名前とお顔を知っている程度で、顔を会わせると会釈を交わすだけの関係でした。引っ越して間がないので、まだこの土地に親しい人はいないのです。彼女は私と同年代に見えます。外見はとても美人なのですが、少し近寄りがたい雰囲気もありました。でも、気軽に声をかけて下さったので、見かけによらず気さくな方なのかも知れません。

 彼女とゆっくりお話をする間もなく、内視鏡室のドアが開いて、ナースが呼びます。
「吉川とも子さん、お入り下さい。」
「はい、えり子さん、お先に失礼します。」
「はい、お気をつけて。」
 私は椅子に座って思いにふけります。「こんなところで知人に会うとは思わなかったわ、意外だわ。でも仕方ないわ、予定通り、胃腸の内視鏡検査を受けるわ。」
 
 私は病院に行くのが本当に好きなのです。いわば病院フェチと言うべき趣向があるのです。一人でいることが多いので、ときどき病院に行くことで、寂しさを紛らわすのです。
 こうなったのには理由があります。子供の頃、体が弱くてよく病院のお世話になりました。入院、手術の経験もあります。子供で病院が好きな子は少ないと思います。私も初めは病院が好きではありませんでした。でも、いつしか病院が好きになっていたのです。大人になって、私は体が丈夫になり、ほとんど病気をしなくなりました。それでも病院に行くのは好きなのです。そして、病院での検査や処置の中でも私がもっとも好きな処置があるんです。それを言葉に出すのは恥ずかしいのですが、実はそれは”浣腸”なのです。
「どうしてなの?」とお思いかも知れませんね。それについては少しお話しましたが、おいおい詳しくお話いたしましょう。今回の検査では実は”浣腸”されるのを密かに期待しているんです。

 待つことしばし、内視鏡室のドアが開いてナースが顔を出します。
「香谷えり子さん、お入り下さい。」
「はい。」
 病院は慣れているとは言え、やはりドキドキします。この緊張感がたまらないのです。

 室内に入ると、まずあるものが私の目に入りました。バスケットの中にディスポタイプの大きな浣腸器がたくさん置いてあったのです。「やはり浣腸があるんだわ。」 私はそれを見て確信して、胸の高まりが増すのを感じるのでした。 
 次に目に入ったのは、検査を終えて眠っている患者さん達です。安楽椅子が数台置いていて、5人の患者さんがその上で休んでいました。検査で催眠剤を使ったのでしょうか、皆眠っているようです。もちろん、あのとも子さんもいます。
「えり子さん、更衣室で着替えて下さい。衣類はすべて脱いで、検査用パンツと 検査着に着替えて下さい。パンツは穴のあいた方がお尻です。」
「はい。」
 ナースの言葉が響きますが、他の人は眠っているので、聞こえることはないはずです。
 着替えを済ませた私にナースが事務的に言います。
「えり子さん、ベッドへ上がって下さい、浣腸をします。」
「はい。」
 やはり私は浣腸の宣告を受けたのです。私は大腸カメラの検査を受けるために、浣腸されちゃうのです。

”浣腸・・・”それは何という響きでしょう。これはもう覚悟していたものです。もっと正確に言えば、これは私が期待し、望んでいた処置なのでした。病院の処置の中で、浣腸は最も好きなものなんです。

 平然としたナースの言葉に私は大いに感動したのでした。本来、人前での浣腸の宣告は恥ずかしさがあります。でも今はこの浣腸の宣告は他の人には聞こえていないので安心です。ただ医療フェチの私としては、他の人に”浣腸”の宣告を聞いて欲しいというきもちも半分はあるのです。
 聞かれれば恥ずかしいし、聞かれなければ物足りないようだし、いつも浣腸の宣告の瞬間は複雑なきもちになるのです。

 私は浣腸の処置を受けます。カーテンで仕切られたベッドで、体は左を下にさせられます。ナースは手際よく処置を進めます。今日は私で6人目のようです。
 薄いカーテンなので、ナースの声は室内では他の人に聞こえます。しかし皆眠っています。ここでも聞かれないことの安心さ、逆に寂しさという相反する気持ちが胸を交錯します。
 私は気持ちを切り替えて、浣腸のプロセスの一つ一つを味わうことにします。通常の浣腸では、スカートやジーンズを下げて、下着もずらせて、お尻を出さなければならない恥ずかしさがあります。しかし、今回は検査用の穴あきパンツを着用しているので、その恥ずかしさはありません。反面、お尻が露出されない物足りなさもあるんです。

 ナースが手にした浣腸器はジャバラ型をしたディスポタイプの120gのものです。日頃使っているいちじく浣腸30gの4倍もの量です。ビニル手袋をしたナースが指先にゼリーを落とします。それから私のお尻にゼリーが塗られます。
「浣腸します。」
「はい。」
 ノズルが入って来ました。
「液が入ります。」
「はい。」
 お尻に温かいものを感じます。浣腸器はあらかじめ湯煎をしてあったようです。 
 この感覚がいいんです、まさに今私は浣腸されているんです。ナースは液をゆっくり注入します。120gなので、注入時間がずいぶん長く感じます。
「終わりましたよ、できるだけがまんして出してくださいね、トイレはこちらです。」
「はい。」
 ナースはティシュの束を円錐状にして、その先端を私のお尻の穴に詰め込みました。通常はティシュをそのまま当てがう感じの場合が多いのですが、ここではまさに押し込む感じなのです。ちょっと驚きました。これは一種のアナル栓ですね。

 私はいちじく浣腸の4倍ものグリセリンを注入されたのです。私の体はグリセリンに敏感で、30gでも十分な効果があるのです。120gでは便意が怒濤のごとく押し寄せます。失敗してはいけないと思い、早めにおトイレに入ります。
 おトイレは内視鏡室の内部にあって、検査専用なので、安心です。早めにおトイレに入ったことは正解でした。1分を過ぎたくらいで、もう限界です。
 ティシュの束の栓をお尻から抜きます。ティシュの先端は黄色に染まっていました。そして、すぐに噴出が始まりました。
 おトイレから出ると、ナースはにこやかな表情で、言います。
「さあ、検査を始めましょう。こちらへ来て下さい。」

 いよいよ大腸の検査が始まります。ナースに導かれて、部屋の奥の方へ移動します。カメラやモニタが設置されたベッドに横たわります。
浣腸のときと同じ体位を取らされます。
 先生がやってきました。お尻にゼリーがたっぷり塗られます。先生が言います。
「カメラが入ります。」
 どうやら麻酔はかけないようです。
「大腸の下部を診ますが、カメラが入ることができるところまで入れます。」
 カメラがお尻から奥へ奥へと進みます。
「まだ腸はきれいですね。もう少し入れます。」
 おなかに少し違和感を感じます。腸の曲がり角をカメラが通過すると、少し楽になります。
「この辺が限界ですね。」
 モニタ画像にうんちの塊が見えました。うんちが壁になって、カメラはそこから先には進めないのです。前処置が120gのグリセリン浣腸のみなので、腸のクリーニングは下部のみなのです。

 私はいまお尻の穴からカメラを挿入されて、モニタを通してお尻の内側を覗かれているのです。しかも自分のうんちまでがモニタに写っているのです。恥ずかしさの混じった不思議な感覚です。
 大腸カメラの検査はこれまで数回経験がありますが、いつも眠らされて受けるので、カメラを挿入されるのを感じたり、自分のおなかを見るのは初めての経験なのです。
 カメラは後退します。先生はカメラを操作しながら説明します。
「S状結腸は問題ありません。直腸もきれいです。肛門も痔はありません。
 ”直腸”、”肛門”、”痔”などの恥ずかしい単語が先生から次々に発せられました。

「抜きます。」
 の言葉とともにカメラが抜かれました。ナースがお尻を拭きます。ナースが言います。
「今度は胃を診ます。その前に注射をします。」
「はい。」
 腕がちくりとします。液が少しずつ入ります。頭がボ〜ッとしてきます。そして・・・。

 私が目を覚ましたのは安楽椅子の上でした。私は眠らされて胃の検査を受けたのです。苦しさを感じなかったのでよかったです。検査を受けてから、かなり時間が経過しているようです。
 近くで声が聞こえます。カーテンに囲まれたのベッドの中からです。
「浣腸をしますね。」
「はい。」
 ナースの大きな声と患者の女性のか細い返事です。私がされたように、浣腸が行われるところでした。耳をすませて聞きます。
「液が入ります。」
「はい。」
・・・・・・・・・
「終わりましたよ。できるだけがまんして出して下さい。トイレはこちらです。」
 30代の女性がベッドから降りて、お尻を押さえておトイレに入ります。この方も大腸カメラの検査を受けるのです。流れ作業のように浣腸が行われます。毎日数10人がここで浣腸をされちゃうようです。

 私はナースに声をかけます。
「香谷ですが、目が覚めました。」
「気分はいかがですか。」
「とてもきもちいいです。」
「香谷さんは胃も大腸も特に異常はありません。明日以降に来院すれば先生から詳しい説明があります。」
「はい、明日また来ます。」
「それでは着替えをして、会計を済ませてお帰りになっていいですよ。」
「お世話になりました。」
 私は検査の結果が問題なかったことより、浣腸をされたことの方がうれしかったのです。

 私は会計のところに向かいます。何と、そこには吉川とも子さんが待っていました。
「えり子さん、もう検査は終わったのですね。」
「はい。」
「そのお顔では異常なかったでしょう。」
「はい。」
「とも子さんも大丈夫ですよね。」
「もちろんです。」
「それはよかったです。」
「えり子さん、どうかしら、近くの喫茶店で、ご一緒にお茶でもいかが?」
「はい、私でよろしければ、特に予定もないので・・・。」
 私はとも子さんと一緒に病院の前の喫茶店に入ります。そして、しばし、おしゃべりをします。
「とも子さんはとてもおきれいで、ちょっと近寄りがたいような雰囲気を感じていましたので、日頃は失礼しました。」
「えり子さんこそ、とてもチャーミングよ、私と同じくらいの年齢じゃないかしら?」
「私は昭和52年生まれなんです。」
「そう、、私は51年よ、少しお姉さんね。」
「そうなの。ところで検査はときどき受けるの?」
「はい、ちょっとワケありなんです。」
「差し支えなければ教えていただけるかしら?」
「ええ、実は私、母を大腸がんで亡くしたんです。だから定期的に大腸の検査を受けるんですよ。」
「それはまた偶然ね。実は私もそうなのよ。」
「えぇ、そうですか。」
 とも子さんは言います。
「8歳のときよ。とても悲しかったわ。」
「私は10歳でした。」
 とも子さんはなおも続けます。
「検査のとき浣腸があるでしょ、あれ、お嫌い?」
「いいえ、私、大丈夫ですよ。」
「そう、私もそうなのよ。」
 とも子さんは続けます。話は意外な方向に展開するので驚きました。でも、何だか興味を覚えそうな方向です。この美女の口から”浣腸”の言葉が聞かれるなんて、全く驚きでした。

 とも子さんは続けます。
「私、母を亡くしてからよくおなかが痛くなったの。そのとき父は私を病院に連れて行ってくれたわ。病院ではいつも浣腸をされたの。浣腸をされると、おなかお痛みはウソのように消えたわ。腹痛の原因は便秘だったのね。ただ、父はその都度会社を休んでた。でも、あるとき、私がおなかが痛いと言ったとき、父はもう病院に私を連れて行かずに、家でいちじく浣腸を使って私に浣腸をしてくれたの。父はトイレに近い和室にバスタオルを敷いて、私にモーさんの姿勢を取らせたの。そして、私の背後に回って、下着を下げてお尻にいちじく浣腸器を差したわ。液を注入した後、脱脂綿でお尻を押さえてくれた。私がうんちが出そうよと言うと、すぐトイレに行かせてくれた。うんちが出ると、おなかの痛みも消えてしまって、とても気持ちよくなった。それから私はその後すぐに学校に行き、父も会社に遅れなかった。その後、そういうことが何度もあったわ。」
「そうですか。そんなことがあったのですか。」
「それから私はおなかが痛くないときも仮病を使って、ときどき父に浣腸をしてもらったのよ。私は浣腸されることで、父に甘えていたかったのね。私は父から愛の浣腸を受けたのよ。」
「そうなんですか。」
「私は親子のコミニュケーションを浣腸の行為を通して求めていたのね。」
「そうなんですか。」
「浣腸だけではないわ。私、お父さんと一緒に毎晩お風呂に入ったの。お風呂では私の体を隅々まで丁寧に洗ってくれたわ。特に、足の指、や前の部分、お尻の穴など汚れやすい部分は指を使って洗ってくれたのよ。前とお尻を洗うときははモ〜さんの体位をさせられた。」  
「それは素敵なお話ね。」
「そうね、でも、それも私が中学生になると、それは終わったわ。生理が始まったし、私の体も変化して、女の体になって行ったから・・・。」
「そうですか。」
「ただ、中学になって、浣腸をしてもらえない代償からかしら、自慰をするようになったの。指で性器や肛門をいじったの。あるとき、それが原因で、膀胱炎から腎盂腎炎をおこしちゃって、高熱が出て入院したの。そのとき腎臓の造影検査があって、検査前に浣腸されてうれしかったことを覚えているわ。久しぶりの浣腸だったもの。」 
「なるほど、とも子さんは浣腸には特別の思い入れがあったのね。」
「そう、ところでえり子さんのお話も聞きたいわ。」

 私はとも子さんに私の経験を話し始めました。同じような境遇から、同じような趣向をもった二人が偶然会えたのです。もう私は過去のことを隠さず、自然にお話をしました。
「私の母は私をとてもよくかまってくれたわ。だから母がいなくなって、私をかまってくれる人がいなかった。父はやさしかったけど、母とは違っていたわ。」
「それはそうね。」
「私は子供の時は体が弱く、よく病気をしたの。でも、病気になると、私は嬉しかった。病院ではナースがかまってくれたし、入院したときは親戚や友人が見舞いに来てくれたし。」
「そう、それはよかったわね。」
「病院ではよく浣腸をされたの。おなかが痛いときは通院で浣腸されたし、扁桃腺が弱くて入院して手術をしたときは何度も浣腸されたの。」
「そうなの。」
「まず手術の前に浣腸されたわ。おトイレに連れていかれて、トイレの中で立った姿勢で浣腸された。病室ではなかったからよかったわ。手術の後も体を動かさないので便秘したの。ナースは四六時中、熱、おしっこ、排便の有無をチェックして、お通じがないときはすぐに浣腸をされた。このときは、病室のベッドの上だった。ナースは浣腸の後、おなかのマッサージをしてくれて、オマルを入れてくれて、お尻も拭いてくれたわ。このときはちょっと恥ずかしさもあったわ。でも、浣腸されるときナースがやさしくかまってくれて、しかも浣腸の後、おなかがすっきりするし、私、浣腸はもうすっかり慣れっこになったこともあって、浣腸がとても好きになったの。」

 私は同じ境遇のとも子さんと、すっかり打ち解けて、お話を続けました。彼女はご主人が海外勤務で単身赴任中なんだそうです。ただ、事情があって、彼女はしばらくご主人と一緒に住めないのだそうです。
 彼女は元々ひどい便秘症であることと、大腸がんのリスクがあること、そして寂しさを紛らすためとで、病院に行って大腸の検査や大好きな浣腸をしてもらうそうなんです。それは私も同じで、私もときどき病院に出かけて浣腸をしてもらうんです。大腸の検査も1年に2回ほど受けるんです。まったく、何から何までよく似た2人でした。

 とも子さんは私に尋ねます。
「最近、病院に行っても、便秘くらいでは浣腸はしてもらえないわね。」
「本当に、そうですね。浣腸をしてもらえるコツはあるのかしら?」
 とも子さんは言います。
「コツと言うわけではないけど、私の経験や友人から得たお話するわ。」
「それは是非お聞きしたいわ。」
「まず病院を選ぶことね。医者一人、ナースが1、2人の小さな個人病院では手間のかかることはしないから、便秘程度では浣腸はまずないわ。」
「そうなんですか。」
「浣腸は保険の点数が少ないから手間がかかる割にはもうけにならないの。」
「なるほど、ではどんな病院がいいのですか。」
「大きな総合病院は患者の数が多く、やはりダメね。胃腸か消化器が専門の中規模の病院がよさそうよ。」
「そう、私も偶然そういう病院を選んで、検査や処置を受けるんです。浣腸されることが多いです。」

「私の経験をお話するわ。」
「それは是非聞きたいわ。」
 とも子さんがしゃべります。
「まず、胃の検診を受けたときのことよ。胃の調子が悪く、X線検査を受けたの。バリウムを飲むんだけど、それが翌日には出なかったの。バリウムがおなかの中で固まると大変なことになるそうよ。だからすぐに胃腸系の病院に行ったわ。診察を受けておなかのX線撮影をされるわ。先生はフィルムを見て、バリウムは下まで来ているから、出しちゃいましょうと言うわ。そして、ナースにグリ浣してあげて・・・と言うの。」
「なるほど、それで浣腸されちゃうのね。」
「後は大腸検査のときですか。」
「そうね、胃腸系の病院で、おなかの調子が悪いと言って受診するの。すると、大腸の精密検査をしましょうということになるの。大腸の精密検査は2種類あって、大腸X線検査か大腸カメラよ。」
「私、大腸カメラは経験あるけど、X線検査は経験ないんです。」
「X線検査では、まず検査の前にグリセリン浣腸があるの。それからバリウムを300〜400ccも浣腸されるわ。その後空気浣腸があるわ。」
「そうなの、すごいですね。」
「えり子さんも一度経験されるといいわ。撮影のとき、体と一緒に機械が動くので、遊技器具に乗っているようようなおもしろさもあるのよ。」

 とも子さんのお話はまだ続きます。
「最近は大腸の検査は大腸カメラが多いわね。」
「そう、それは私も経験あります。」
「検査前の処置なんだけど、以前は高圧浣腸を何度もしてたそうだけど、今はニフレックなどの大腸洗浄剤を2L飲む場合が多いのね。」
「そうですね。」
「私はひどい便秘症だからあれだけでは大腸がきれいにならないのよ。だからその後、たいてい高圧浣腸を数回受けることになるの。」
「それも偶然ですね。私は生まれつき大腸が長いので、そのせいか、やはりとも子さんと同じなんです。」
「そうなの。高圧浣腸はいいわね。グリセリン浣腸もいいけど、私は高圧浣腸が好きよ。」
「そうそう、私も高圧浣腸は大好きなんです。」」
「高圧浣腸は浣腸されている時間が長いし、温かい液が入ってくる、あの感覚がとてもいいわよ。」
「それはそうですね。」
「あれって大腸洗浄と同じなので、美容と健康にもよいそうよ。」
「そうですか。」
「先日、女子大時代の同窓会があったの。」
「へぇ。」
「20人くらい集まったわ。」
「そう。」
「話題は仕事や家庭のこと、男性のこと、ファッションのこと、趣味のこと、芸能界のこと、そして最後は美容、ダイエット、健康のことで終わったわ。」
「何かおもしろいお話はありました?」
「健康についてだけど、便秘の子って多いのね。もちろん私も含めてだけどほとんど全員が悩んでるわ。そして病院で大腸カメラを経験した子が半数いたわ。」
「そうなの。若い子でも大腸カメラ検査を受ける人は多いんですね。」
「そうなのよ。それについておもしろい話があったわ。」
「そう、高圧浣腸を受けた子もいたわ。」
「そうなんですか。」
「その子は前日の夕食に、うっかり牛乳を飲んだらしいのよ。そして夕食の時間が仕事の関係で夜10時になったらしいの。」
「確か、乳製品はおなかに残りやすいから検査の前日はとらないようにとのことでしたね。」
「そう、それに食事も7時までには終わらなければならないのよ。」
「それで高圧浣腸になっちゃったわけね。」
「大腸カメラのついでに高圧浣腸による大腸洗浄もしてもらおうと思ってる子がいたわ。」
「洗浄剤を飲むのではないの?」
「その子はわざわざ高圧浣腸をしてほしくて、小鳥の餌を持ち込んだそうよ。」
「えっ、それって一体何?」
「大腸洗浄剤を飲んだ後、排便後、ナースがうんちを見るでしょ、いわゆる観便よ。その観便の前に小鳥の餌をうんちの上に少し置いておくの、そするとそれを見たナースはうんちの中にまだツブが残っていると判断して、NGという判定が下されるの。そして、高圧浣腸を命じられるそうなの。」
「そんなことをしてはいけないわ。医療関係者に迷惑をかけることになるわ。」
「そう、私もそう思うわ。」
「うんちにツブが残っていてはまずいんですか?」
「カメラを入れたら、カメラを通して大腸内部をチューブで吸引するらしいの。そのチューブがツブで詰まっちゃうそうよ。それに、場合によっては、そのツブがじゃまになって、病気の部分があると見にくくなって、見落としになることもあるそうよ。」
「そうですか、だから高圧浣腸でおなかを完全にきれいにしなければならないのね。」
「そう、洗浄剤の後高圧浣腸をすれば大腸洗浄はパーフェクトよ。」
「よくわかりました。」

 とも子さんが最後に付け加えます。
「えり子さん、私達が今日受けたのは大腸下部だけの検査よ。今度一緒に全大腸検査を受けないこと。」
「それはいいわ。私達、遺伝的に大腸がんのリスクがあるわけだから、検査は毎年欠かせないわ。一人では寂しいので、ご一緒できたら安心だわ。」
「そうね。そして高圧浣腸も一緒に受けましょう。」
「それはいいわ。」
「私、いい病院を知ってるわ。」
「よろしく。」
 とも子さんと私は完全に意気投合して、検査の約束をしました。
 
 それから1カ月後のある日の朝です。私はとも子さんが運転する車で二人そろってある病院に向かいます。中規模の胃腸科専門病院です。
 予約をしていたので、二人そろって2階の内視鏡室に通されます。広いロビーがあります。安楽椅子と小さな机がいくつかあります。とも子さんと私は隣同士の椅子にすわります。他に男女あわせて20人くらいの患者がいます。
 ナースがやってきて、机の上に2Lの液体が入ったペットボトルを置きます。そして、一人一人に説明があります。
 2時間かけてこれを飲み干すこと、そして、うんちの状態を撮影した見本の写真を見ながら、このように透明でにごりがなくなったら検査O.K.ですという説明がありました。うんちがきれいになったら、それを流さずにナースに見せるようにとのことなんです。トイレに通った回数をメモするための鉛筆と用紙も渡されました。

 とも子さんとニフレックを飲み始めます。ニフレックを飲むのは10人くらいで、のこりは胃の検査のみの人のようです。男性5人、女性5人がニフレックを飲んでいます。
 飲み始めて30分、男性数人がおトイレに立ちます。1時間後、とも子さんと私はまだおトイレに行きません。他の男性と女性はもう何度もおトイレに通っています。
 その10分後にまずとも子さんがおトイレに立ちました。そして10分後に私もおなかに違和感を感じ、おトイレに行きました。おトイレは男女別で、洋式で、ウオシュレットとナースコールボタンが備えてありました。
 2時間後には男性のほとんどと、女性の数人が検査O.K.になりました。検査O.K.になった人は更衣室で検査着に着替えて、順次ベッドに横になります。そして、血圧測定などをして、ベッドに寝たまま内視鏡室へ送られます。

 検査が終わった人はベッドのまま内視鏡室からこのロビーへ移動します。皆眠っています。麻酔をして検査が行われるようです。
 3時間が経過しました。とも子さんは3度、私は2度おトイレに行きましたが、まだ検査O.K.の状態ではありません。検査の準備ができていないのはとも子さんと私だけです。二人は3時間が経過したことを確認して、互いに目を合わせ、にやりとしました。
 ナースがやってきて、二人にうんちの状態を問います。二人ともまだ汚れがあることを報告しました。

 ナースはちょっと怪訝な表情をしましたが言います。
「まだ便が出そうですか。」
 とも子さんは「いいえ。」、そして私も「いいえ。」の返事をします。ナースは去って行きました。
 数分後にナースが戻って来ました。
「先生の指示で、浣腸をかけてみます。」
 その声を聞いて瞬間、私は胸が踊るのを感じました。とも子さんは平然とした表情で、軽くうなずきました。

 浣腸を宣告されたとも子さんは、ナースに導かれて処置室に入りました。しばらくして、処置室のドアがあき、ナースが出てきました。その後、とも子さんが出てきておトイレに向かいます。
 ややあって、ナースコールのブザーが鳴って、ナースがおトイレに向かいました。とも子さんが戻ってきました。私にこっそり言います。
「成功よ。」
 とも子さんにとっては事がもくろみ通りに進んでいるようです。

 間もなくナースがやってきて、私に処置室に入るように言います。私はとも子さんに見送られて処置室に入ります。処置室は狭く、ベッドが一つ、そして流し台があって、その脇には鉄製のスタンドがあって、それには1Lのガラス製のイルリガートルが吊されています。この部屋はまるで浣腸を行うための専用の部屋のようです。
 ナースが言います。
「便が出ないようなので、浣腸をかけて便を見せていただきます。」
「はい。」
「それではベッドに横になって下さい。」
 私は心を踊らせながら、ベッドに横になります。何しろ、心待ちにした浣腸をしてもらえるのです。こんな幸せなことはないのです。
 ナースはディスポタイプのずんぐりと大きい浣腸器を手にしています。先端の赤いキャップが印象的です。
 ジーンズと下着が下ろされます。お尻にゼリーが塗られます。すぐにお尻にノズルが挿入されました。そして温かい液が入ってきます。いつものパターンですが、私は幸せ感を感じます。
 もう何度も経験していることなのに、毎回恥ずかしさとうれしさが混じった感動があります。
「終わりました。ベッドで体を左右に回転させて下さい。」
 ナースは私に指示します。私は言われた通りに、体を左右に回転させます。これは体を動かすことによって、腸内に注入されたグリセリンを動かして、浣腸の効果をより高めるのでしょう。
「トイレに行っていいですよ。できるだけがまんして下さい。出たら、流さずにボタンを押して下さい。便をチェックさせていただきます。」

 私は早くもおなかに違和感を感じています。急いで下着とジーンズを上げて、おトイレに向かいます。
 注入後、まだ2、3分しか経過していないのですが、自然にお尻の穴が開いてしまいました。グリセリンとニフレックの混じり合った液体が排出されました。かなり透明に近い液ですが、まだ汚れが残っています。
 私は今日の第一の目標であるグリセリン浣腸をしてもらうことに成功しました。その結果、第二の目標である高圧浣腸の期待も高まるのを感じました。ウオシュレットでお尻を洗い、ティシュでお尻を拭いて、ナースコールボタンを押します。すぐにナースがやってきました。
 便器の中を覗きます。また恥ずかしさを感じます。
「あ〜ぁ、まだダメですね。あちらでお待ち下さい。前の方の処置がありますので、しばらくお待ち下さい。」
「はい。」
 前の方とはきっと、とも子さんのことでしょう。どうやら、とも子さんも私も同じ処置を受けることになるようです。その処置は高圧浣腸に違いありません。あのイルリガートルが私達のために使われるのです。また、胸がどきどきし始めました。

「吉川とも子さん、処置がありますから、まず更衣室で検査着に着替えて下さい。着衣は全部脱いで、パンツと検査着を着用して下さい。パンツは穴があいた方がお尻になります。」
 ナースがやってきて言います。
「はい。」
 とも子さんは、私に軽く会釈をして、平然として動揺することなく更衣室に移動しました。
 ナースは私の顔を見て言います。
「香谷えり子さん、あなたも着替えをして下さい。」
「はい。」
 とも子さんに私が続きます。更衣室で私はとも子さんと一緒に着替えをします。

 互いにすっぽんぽんの状態です。とも子さんはすらりとした体型です。ただし胸とお尻は豊かです。しかも色白で、とても美しい体をしています。
「えり子さん、あなたの体、バランスが良くてとても魅力的ね。」
「いえ、そんな、恥ずかしいです。とも子さんこそ、とても美しいです。」
「体型を維持するため、スポーツクラブに通っているのよ。」
「そうですか、私は特に何もしていません。」
「体重の方はいいんだけど、運動しても便秘は治らないのよ。」
 とも子さんはにこりとして言いました。
「私、今から高圧浣腸をさるのよ、あなたは?」
「私も多分そうなりそうです。」
「そう、よかったわね。計画通りね。」
 私達はお互いに顔を見合わせながら、ほほえみを浮かべるのでした。
「吉川とも子さん、着替えが済みましたね。それではまた処置室に入って下さい。」
 ナースが促します。とも子さんは、穏やかな表情でナースと共に処置室に消えました。

 私はロビーで待ちます。私の目は処置室のドアに釘付けです。今、どんな処置が行われているのだろうと想像します。
 あの美しいとも子さんのお尻の穴に嘴管が挿入され、ぬるま湯が注ぎ込まれるシーンを頭に描きます。そして次の瞬間には私自身がそうされる姿に変わります。鼻の頭と手にひっとりと汗がにじみます。そして、私の前の部分が濡れてきました。
 数分が経過したでしょうか。処置室のドアが開かれ、ナースが出てきました。手にはプラスチックのバケツのようなものをもっています。
 しばらくして、またあのバケツをもったナースが処置室に再び入りました。そして数分後にまたナースがバケツをもって出てきました。とも子さんは処置室にこもったままです。
 こんなことが4回ほど繰り返された後、とも子さんが処置室から出てきました。その顔は満足感にあふれていました。彼女はにこやかな表情で、私に向かってガッツポーズをします。どうやら彼女は数回行われたであろう高圧浣腸に満足したようです。

 とも子さんはベッドに横になり、血圧測定をされた後、内視鏡検査室へ移動しました。いよいよ彼女は大腸内視鏡検査を受けるのです。彼女に異常がないことを祈ります。
 とも子さんを検査室に送り届けたナースが私のところにやってきました。
「香谷えり子さん、処置がありますので一緒に処置室に入りましょう。」
「はい。」
 今度は私が処置をされる番です。多分処置はあれでしょう。

 ナースと共に処置室に入りました。流し台には使用済みと思われる橙色のゴムのカテーテルが置いてあります。これはきっととも子さんのために使用されたものなのでしょう。先端部が濡れて光っています。この部分がとも子さんのお尻の中に挿入されたのです。
 ベッドの横にあのイルリガートルがあります。そしてベッド脇の下部に白い色をした腰掛け式のポータブル便器があります。お道具が一式そろっているようです。それらを見ると、胸の鼓動が一層高まります。
「えり子さん、このままでは検査ができませんので、今から洗腸をします。お尻からお湯を入れて腸を洗います。」
「はい。」
 やはり処置は期待通りのものでした。高圧浣腸という言葉こそ使いませんが、その処置に違いありません。
「ベッドに横になって、壁を向いて下さい。」
「はい。」
 検査着なので、お尻に穴があいていて、下着を下げる必要はありません。お尻がむき出しではないので、恥ずかしさは少し軽減されるようにも思います。でもやはり恥ずかしいことに変わりはありません。パンツの穴はスリット状に長いのです。私はスリットを通して、お尻の穴のみならず、前の部分まで見られちゃうのでしょう。
「ごめんなさいね。」
 ナースはそう言ってカテーテルを挿入します。
カテーテルが少し奥深く挿入されたのを感じます。
「お湯をおなかに入れます。」
「はい。」

 お尻に温かいものを感じます。この感じがしばらく持続します。通常のグリセリン浣腸と違うのはこの点と、おなかにそれほど違和感を感じないことです。とても心地よいです。
いかにもおなかが洗われている感じです。ついでに私の心まできれいになって行く気がします。
「終わりました。」
「はい。」
「おなかをマッサージします。」
「はい。」
 私は仰向けになってナースのマッサージを受けます。ナースは「8」の字を描くように手を動かします。
「気持ち悪くないですか。」
「はい。」
「はい、終わりました。できるだけ我慢して下さい。この便器を使って下さい。出ましたら中をチェックしますので、呼んで下さい。」
「はい。」
 ナースが部屋から出て行きました。イルリガートルを見ると、まだ半分の液が残っていました。私のおなかに入ったのは500ccだったのです。私はベッドから便器に移動します。
 便器のフタを取ると中にバケツの形をした容器が入っています。とも子さんのときもこれが使われたのです。ナースがバケツのようなものをもって部屋から出入りしたのは、うんちの処理をするためだったのです。そして今度は私がそうされるのです。
 これまでグリセリン浣腸や高圧浣腸の経験は何度もありますが、排泄はほとんどがおトイレでしました。オマルを使うのは扁桃腺の手術のとき以来のことです。あのときは私はまだ子供でした。でも今は大人なのです。恥ずかしいことですが、もうどうしようもありません。

 私のおなかには500ccのお湯が注がれています。これを放置できないのです。このオマルの中に出さなければないません。しかもナースのチェックを受けるのです。お湯だけならいいのですが、私はまだおなかが汚れているのです。 
 私は意を決してオマルに座ります。私は思います。「浣腸やオマルへの排泄は純然たる医療行為なのよ。ナースは1日に何度もこういう行為を経験しているの で、患者に対して何の感情も抱かないはずだわ。それは、婦人科医が診察のときにいちいち興奮しないのと同じよ。私は自然に振る舞いましょう。恥ずかしがったり、涙を流したりするのは不自然ね。」
 勢いよく排泄が始まりました。それは間欠的に何度も何度もありました。私はもうこれ以上出ないわというところまでおなかに力を入れました。

 うんちは色は薄くなったものの、まだツブ状のものが混じっています。ナースを呼びます。
「えり子さん、どうでした。」
 ナースは明るい顔で問います。自然な笑顔なので、あまり恥ずかしく感じませんでした。 
「あぁあ、まだダメです。悪いけど後何回か洗腸をします。いいですか。」
「はい。」
 私は悲しそうな表情で答えますが、内心はしめたわという感覚なのです。大好きな高圧浣腸がこの後数度予約されたのです。それは願ってもないことでした。

 私は再びベッドの上に横になります。ナースはオマルからバケツ状の容器を取り出し、それを室外に運びます。これはとも子さんのときとまったく同じです。とも子さんもこういう行為を何度か経験したのです。
 再びナースが来ます。ナースが洗浄した容器をオマルに収納します。口を開きます。
「さあえり子さん、もう一度洗腸します。」
「はい。」
 私は再びきもちよい処置を受けます。おなかと心が同時に洗れるかのようです。こんな気持ちの良い処置を受けられるのが幸せです。
 ナースが出ていって、私は再びオマルに座ります。座ったまま、オマルを使う理由を考えます。ナースの手間から言えば、おトイレで排泄する方が楽に決まっています。しかし、オマルを使う理由があるはずです。
 私は考えます。「患者は私達のよいうに若い人ばかりではないはずよ。それに病気の人もいいるはずだわ。高圧浣腸をされた後、おトイレまで歩いて行くのはしんどいのかも知れないわ。間に合わなくって、途中で失禁した人もいるかも知れない。そうなると、清掃するのはとても大変だわ。オマルの処置の方が楽かも。それにうんちのチェックはおトイレの便器よりオマルの方が確実よ。そいうことでオマルを使うのかしら?」

 私は結局4度高圧浣腸を受けました。偶然とも子さんと同じでした。何かにつけて、とも子さんとよく似ていることが不思議でした。
 おなかがやっときれいになった私はベッドに乗せられ、内視鏡検査室に運ばれます。血圧測定があって、注射がありました。注射の途中で頭がボゥ〜として、意識がなくなりました。
 私が目が覚めたのは控え室のベッドの上でした。ベッドから降りて先生の説明を聞きました。格別異常は認められないとのことでした。
 待合室に降りるととも子さんが待っていてくれました。とも子さんの車に一緒に乗って、満足な気分で病院を後にしました。

 数日後、午後2時に私は同じマンションのとも子さんの部屋を訪ねました。とも子さんからおしゃべりしましょうとのお誘いを受けたのです。
「とも子さん、こんにちは。」
「えり子さん、いらしゃい。」
「あの、これロールケーキですが、どうぞ。」
「ありがとう。ご一緒にいただきましょう。」
「素敵なお部屋ですね。」
「主人がいないものだから、私の好きなように部屋を飾っているの。」
「そうなんですか。」
「飲み物はコーヒーでよくって。」
「はい。」
 とも子さんはお湯を沸かし始めました。お湯が沸くと、大きなネルの布を使ってコーヒーをドリップします。ずいぶんたっぷりとコーヒーができあがりました。大型のガラスのサーバーに2個分もあります。きっと残りは冷やしてアイスコーヒーにするのでしょう。
「抹茶のロールケーキね。おいしそうだわ。」
「*町の*というお菓子店のケーキがおいしいという評判なんですよ。」
「そうなの。」

 ケーキとコーヒーをいただきながら、私はとも子さんとおしゃべりをします。
「えり子さん、先日は病院ではお疲れ様でした。」
「はい、おなかがきれいになったから、とてもきもちよかったです。」
「そうね。あの検査は大腸洗浄もかねるから、1年に2度くらい受けるといいわね。」
「そうですね。」
「私、高圧浣腸を4回も受けちゃったわ。えり子さんは?」
「私も4回でした。オマルを使わせられるのが恥ずかしかったです。」
「そうね。あの病院、以前はトイレに行かされたのだけど、最近はオマルになったのよ。」
「そうなんですか。きっと間に合わない人がいたんじゃないでしょうか。」
「そうかもね。そうなると、お掃除が大変だよね。」
「今日はね、私、えり子さんに体にとても良いことをお教えしようと思って・・・。」
「えっ、そうなんですか。それはうれしいわ。」
「これはね、高名な医学博士もご推薦の方法なのよ。」
「そうなんですか、それは一体何でしょう。」
「コーヒーエネマよ、つまりコーヒー浣腸よ。」
「あっ、それは聞いたことがあります。まだ経験はないですが。」
「今から経験するのはどう。」
「うれしいです、是非経験したいです。」
「そう、コーヒーはもう準備できてるわ。」
 あの大量のコーヒーはアイスコーヒー用ではなく、私のためのコーヒー浣腸用だったことに今気がつきました。

「ところで、えり子さん、今日はお通じあったの?」
「いいえ、まだなんです。」
「そう、それじゃあ、先にグリセリン浣腸をする方がいいわね。」
「私、器具をもってきていないわ。」
「大丈夫よ、私にすべて任せなさい。」
「それでは、ちょっと恥ずかしいけど、お願いします。」
 平日の昼下がり、互いに暇をもてあました若い専業主婦2人による浣腸ショーが行われようとしているのです。ショーと言っても観客はいませんが・・・。ここは病院ではなく、また私は浣腸をされなければならない必然性もないのです。しかし、なぜか自然にこうなったのです。
 このショーの主役は患者役の私なのです。ディレクター兼脇役(ナース役)はとも子さんです。

 私ととも子さんはおトイレに近い洋間へ移動します。ここはご夫婦の寝室で、ベッドが2つ並んでいます。
 私は素敵な香りを感じました。
「あっ、とてもいい香りね。」
「お香を焚いたの。」
「素敵ね。」
 とも子さんがベッドの上にゴムシーツを敷きます。テーブルワゴンの上にお道具が一式そろっています。50ccのガラス製浣腸器、ビーカー、お湯の入ったピッチャー、グリセリンの容器、ゼリーのチューブ、ティシュ、薄いゴム手袋です。
 子供のときに経験したガラスの浣腸器を見て私はノスタルジーのようなものを感じました。ガラスから私はシンデレラを連想しました。私はシンデレラのように、主役を務められるのです。とも子さんはあくまで脇役なのです。シンデレラは足にガラスの靴をはきますが、私はお尻にガラスシリンダを迎え入れるのです。

 私はベッドに横になります。とも子さんがベッドの脇から言います。
「えり子さん、ふだんはグリセリンは何g使うの?」
「私、30gで十分なんです。」
「そう、それでは余裕を見て50ccにするわ。」
 とも子さんはガラスコップにお湯とグリセリンを入れて混合します。それを私に見せます。
「これでよくって?」
 鼻先にコップに入ったグリセリンがあります。それはほのかに甘い芳香を放っています。
「良い香りがするわ。」
「ハーブを少し入れたの、カモミールよ。」
「そうなんですか。」
「私は、いつもはグリセリンは150ccを使うの。それにハーブやバニラエッセンス、抹茶などを混ぜるの。こうすると、排泄のときにきついニオイを軽減できるのよ。」
「そうなんですか。」
「抹茶も異臭を除去する作用があるわ、それに色もきれいよ。」
 彼女はハーブ入りのグリセリン液をガラス浣腸器にすくい上げます。

 ガラスの靴は美しいですが、ガラスの浣腸器も威厳をもった美しさがあります。「誰も私に逆らうことはできないのよ。」と主張しているかのようです。
 とも子さんはとても美しいのですが、ガラスの浣腸器をもったとも子さんは、一段と美しく輝いていて、まるで女王様のようです。こんな美しいお方に浣腸をしていただけるなんて、夢のようです。女王様とシンデレラ、素敵な想像の世界です。でも現実は違います。私は浣腸をされ、排泄を強制されようとしているのです。それはメルヘンの世界とはかけ離れた淫靡な世界なのです。
 とも子さんは手にゴム手袋を着用しています。一連の作業はよどみがなく、まるでベテランのナースのようです。
「えり子さん、準備ができたわよ。体を横にしてくれる、左を下にして。」
「はい。」
 とも子さんとは知り合って間がないのに、まるで古い友人のようです。最初に病院で出会って、お話をして、彼女が浣腸が好きだということがわかったとき、私はいずれこうなるのではという予感を感じたのです。それが早くも今、現実のものになっています。
 私は彼女を信頼して、彼女の前にむき出しのお尻を露出します。彼女は右ひとさし指にゼリーをつけて、左指で私のお尻の穴を開きます。
「おぉ、とても美しいお尻の穴ね。」
「あぁ、恥ずかしいです、あまり見ないで下さい。」
「いいじゃない、見ても飽きないほど美しいわ。」
「いやん。」
「ゼリーを塗るわよ。」
「うん。」
 そいうやりとりがあって、ついに彼女はお尻に指をもぐらせます。私は深い挿入感を感じました。そしてうんちがしたくなる感覚を覚えました。
「あ〜ぁ。」
「ごめんなさい、ちょっと深く入っちゃたわ。あらっ、指先に少しお通じがついちゃったわよ。」
「やだぁ、恥ずかしい。」
「いいのよ、今日はまだお通じがなかったのなら仕方ないのよ。」
「う〜ん。」
「さあ、グリセリンを入れるわよ。」
「はい。」
 お尻に小さい異物が挿入されるのを感じました。それから温かい液が少しずつ入ってきます。幸せな時間です。

 液の流れが止まりました。そして、ゆっくり浣腸器が抜かれました。
 とも子さんはティシュを丸めてお尻に当ててくれます。
「さあ、えり子さん、お尻を押さえてるからできるだけがまんするのよ。」
「はい、でも私あまりがまんできないんです。」
「そう、でも最低3分間はがまんしなければいけないわ。」
「それは無理かも。」
「お尻おさえているからだいじょうぶよ。」
「う〜ん。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「今、何分ですか。」
「まだ1分30秒よ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「何分経ちました?」
「2分よ。」
「私、もうだめです。」
「オマルを使う、それとも・・・。」
「部屋にニオイが残るといけないから、おトイレに行かせて下さい。」
「いいわよ、じゃあ、いっしょに行きましょ。」
 とも子さんは私のお尻に手を当てがったまま、二人でおトイレに向かいます。便意がきつく、がまんするのが苦しいです。グリセリン浣腸は何度経験してもがまんができないんです。
 とも子さんと別れて私は便器にすわります。安堵感もつかの間、間もなくお尻の穴が開いてしまいました。私はゆっくり時間をかけて排泄をします。うんちが残っていてはこの後のコーヒーエネマに影響があるかも知れないからです。
 うんちがすっかり出たので、私をウオシュレットを使ってお尻を洗います。すっきりした気分になりました。

「さあ、えり子さん、今度はコーヒーエネマよ。これはとても体にいいのよ。私達、お互い大腸がんのリスクをかかえているんだから、これからコーヒーエネマを続けるといいわ。」
「そうですね、そうしましょう。」
「普通、300ccから500ccくらい入れるんだけど、えり子さん、どうなさる?」
「はい、初めてですから300ccでお願いします。」
「わかったわ。」
 私は再びベッドに横になります。彼女はビーカーにコーヒーを注ぎます。コーヒーの芳香が漂います。そしてオレンジ色のゴム球を取り出します。ゴム球の両端にチューブがついています。
 私は問います。
「それは何ですか。」
「これはエネマシリンジという器具よ。500cc以内ならこの器具が手軽よ。1Lになると、イルリガートルがいいんだけど。」
「そうなんですか。」
「さ、えり子さん、また横になってね。」
「はい。」
 彼女はまたゼリーを付けた指を私のお尻に深く挿入します。
「うぐっ。」
「ごめんなさい、また深く入っちゃたわ。今度は指にお通じは付着していないわ。」
「よかった。」
「さあ、お尻からコーヒーをたんと召し上がれ。」
「とも子さんたら、いや〜ん。」
 イルリガートルのノズルがお尻に挿入されました。それから、とも子さんがゴム球をつぶします。”シュポ、シュポ”という音とともに温かいコーヒーが入って来るのを感じます。いいきもちです。お尻でコーヒーをいただくなんて、ちょっとぜいたくな気分になります。味はわからないけど・・・。

 コーヒーが間欠的に入ってきます。イルリガートルを使う高圧浣腸は液の流れが連続ですが、エネマシリンジの場合はとも子さんの操作で断続的な流れになります。しかし、リズミカルな流れです。おなかには違和感はなく、とてもいもちいいです。
「どう、苦しくない?」
「全然大丈夫です、すごくきもちいいです。」
「そう、もう少しの辛抱よ、頑張って。」
「はい。」
”ズポッ”という音とともに、液の流れが止まりました。ノズルが抜かれます。
「終わったわよ、またしばらくがまんするのよ。」
「はい。」
「おや、前がぬれてるわよ、拭いておくわ。」
「恥ずかしい。」
 とも子さんはティシュで私の前の部分を拭いてくれました。それからまたティシュを束にしてお尻に当てます。そのまま押さえてくれます。
「どう、ご気分は。」
「はい、とてもいいです。」
「このまましばらくがまんするのよ、すぐに出したら効果がないから。」
「はい、グリセリンじゃないからしばらくがまんできそうです。」 じっとお尻を押さえ続けてくれるとも子さんは、まるで実のお姉さんのようです。一人っ子で兄弟、姉妹のいない私には、とも子さんがいとおしく感じられるのです。

 とも子さんが言います。
「私は一人っ子なの、だからこうしていると、えり子さんを妹のように感じるわ。」
「私も今、とも子さんがお姉さんのように思えてならなかったんですよ。」
「そうなの。」
「私、こんなお姉さんがいたらよかったのに・・・・」
 そう思うと、目頭が熱くなって、目に涙がにじんできました。とも子さんが気が付いて、もう一方の手で私の涙をそっと拭いてくれました。そのまま時間が静かに流れて行きます。

 私は現実に帰ります。私のおなかには300ccのコーヒーが入っているのです。しばらくはこのままでいいのですが、いずれ体外に出さなければならないのです。 少しおなかに違和感を感じます。
「とも子さん、おトイレに行ってもいい?」
「もう少しがまんできないの。」
「がまんします。」
 便意がかなり強くなってきました。
「おトイレに行かせて。」
「いいわよ。」
 私はおトイレの便器に座ります。そしておなかに力を入れます。コーヒーが少しずつ排出されました。おトイレがコーヒーの香りで充満します。おなかに違和感がなくなったところで、すべてを流し去ります。さわやかな気分になりました。

 コーヒーエネマ、悪くないですね。病みつきになりそうです。

 私がおトイレから戻ると、とも子さんはすっかり後片づけをしていました。
「どう、ご気分は。」
「はい、とてもいいです。」
「それはよかったわ。」
「今日はありがとうございました。」
「いいのよ、お互い、浣腸を続けて大腸がんにならないようにしましょう。」
「はい。」
「えり子さん、これからもわが家に来るといいわ、いつでも浣腸をしてあげるわ。」
「ありがとうございます。」
「グリセリン浣腸、コーヒー浣腸、それに大腸洗浄もオーケーよ。」
「はい、またお世話になります。」
 偶然のことですが、突然私に新しいお友達ができたのです。同じような境遇に育ち、同じように浣腸に魅せられた友なのです。

 それから私はとも子さん宅にしばしば通うようになりました。目的はもちろん浣腸をしていただくことなのです。グリセリン浣腸、コーヒー浣腸、そしてイルリガートルを使った高圧浣腸です。
 おかげで、便秘がちな私の大腸は常にクリーンな状態を保っています。それに、1年に2回の大腸検診も欠かしません。もちろん、それはとも子さんも同伴します。私はもう大腸がんなど決して怖くはありません。
 それに私はとても幸せです。希望すればいつでも、美しいお姉さんがやさしく浣腸をして下さるのです。こんな幸せ、いつまで続くのでしょうか。


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