百 浣 一 首
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春の夜の 夢ばかりなる たわむれに 浣腸してよと 言えず口惜し
春過ぎて 夏来にけらし 白妙の シリンダ乾かす わがテラス
夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 菊やいずこと 彼がさぐりぬ
秋の日の 浣を終わりて 片づけの わが衣手は露に濡れつつ
あしびきの イルリの尾のしだり尾の 長々き夜を 独り楽しむ
今来むと 言いしばかりに 浣を終え 有明のウン 待ちいずるかな
管見れば ちぢに物こそ悲しけれ 我が身一つの 浣にはあらねど
病院で 便秘見抜かれ 心あらば 浣の宣告 今一度待たなむ
イルリ管 わきて流れる 液の川 いつ見きとてか 恋しかるらむ
久方の 光のどけき 春の日に しづ心なく 菊花散るらむ
誰をかも 知る人にせむ 病院の 浣の宣告 我を見る
白露に 浣が吹きしく わがアヌス 貫き止めて ウンが散りける
逢うことの 絶えて久しく なりにける 医師もナースも 恨みざらまし
浣すれば 出るものとは 知りながら なお恨めしき わが秘結
めぐり逢い 見しやそれとも わかぬ間に かべを向かされ 菊を開かれ
ただ今に 浣を終えし わが菊の 今日九重に 匂いつるかな
忍ぶれど 色に出でにけり 我が腹は 便秘ですかと 人の問ふまで
名にし負はば ドラグストアの いちじくを 人に知られて 買うもはずかし
病院に うち出でて見れば 白妙の ナースほほえみ ディスポかざしぬ
浣も惜し 浣も恨めし あぢきなく セルフはむなし 彼かナースに
君がため 街に出かけて 薬局へ わが衣手に いちじくの箱
絶え久し 彼に浣をば 施され 花ぞ昔の 香ににほひけると
心あてに 入れれば入れん 初浣の 入れまどわせる 桃菊の花
このたびは 幣もとりあへず 東京へ いちじく求む スチュワーデス
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