SPACE銀河 Library

作:えり子

精密検査 (下)

 私はうつぶせの体位をとっています。私のお尻には空になったバリウム浣腸の大きな容器がまだ突き刺さったままです。みじめで、みっともない姿です。しかもその容器を突き立てているのは若い男性なのです。
 技師が言います。
「このまま空気を入れます。苦しいですががまんして下さい。」
「はい。」
 お尻から今度は空気が入ります。おなかがふくらんできます。私はカエルさんのようになりました。確かに苦しいです。
「空気の注入が終わりました。」
「はい、あっ、オナラが出そうです。」
「がまんして下さい。」
「はい。」
「抜きます。」
「はい。」
 お尻からやっと容器が抜かれました。みじめな姿からやっと私は開放されたのです。 でも、今度は押し寄せるオナラが出そうな感覚に耐えなければならないんです。一難去ってまた一難というところです。大腸の検査って、なかなか大変なんですねぇ。

「今から撮影をします。体や台が動きますから、取っ手をしっかりつかんで下さい。」
「はい。」
 それから体が前後、左右に動きます。機械が動くので、遊技施設に乗っているようなおもしろさもあります。
モニターに私の大腸が写っています。黒い塊も移動しています。あれがバリウムなのでしょう。
 私の大腸の全体像がくっきり見えます。基本的には保健衛生の教科書に掲載されているイラストと同じような形をしていますが、私のはもっと大きく、しかも長く、形もまっすぐではなく、うねりがあります。
「腸がずいぶん長いですね。」
検査技師さんが言います。
「そうなんですか。」
 私が感じた通り、私の大腸はやはり普通の人より長かったんですね。これが頑固な便秘の原因なのかなとも思いました。
 動くベッドに対して、ハンドルを手でしっかり保持しながら、撮影が継続します。バリウムの塊も次第に奥の方に移動します。そしてついに撮影が終了しました。

「お疲れ様でした。ここのトイレですぐにガスを出して下さい。楽になりますよ。ただ、腸の動きを薬で止めているので、バリウムは出ないと思います。しばらくすると腸が動き出すので、家に戻ったらトイレでバリウムを出して下さい。」
「はい、お世話になりました。」
 技師さんはにっこりして私に会釈をしました。彼にお尻を開かれ、指を入れられたり、バリウムや空気を注入されたので、何だかきまり悪いです。

 おトイレではガスがたくさん出ました。すごい音が出たので、自分でも恥ずかしくなりました。ただ、やはりバリウムは出ませんでした。すごい経験をして、私は病院を後にしました。

 家に戻ってきました。すごい検査だったので、どっと疲れを感じました。私はベッドの上で休みました。気が付くともうお昼になっていました。空腹感で目が覚めました。でもおなかに急に多くのものを詰め込むのはよくないと感じました。好物のおソバをつくります。
 その日はまんじりと1日を過ごしました。病院でのシーンが走馬燈のように私の脳裏を走ります。浣腸されたこと、そしてその後男性検査技師にお尻をいじられたこと、屈辱のバリウム浣腸、あられもない姿で受けた空気浣腸、そして私の大腸の奇怪な形・・・。
 夕食も空腹なはずなのに、食欲がありません。パンを少々食べただけです。

 翌日の朝におトイレに入りました。バリウムを出さなければなりません。しかし、食事の量がすくなかったせいか、排便がありません。
 お昼にもおトイレに座ったのですが、やはりお通じがありません。午後3時になりました。バリウムを出さなければいけないので、再度おトイレに座ります。バリウムを注入されてもう1日半が経過しています。
 お尻の穴の内側に違和感を感じます。詰まっていて、4、5日便秘をしたときの感触と似た感覚です。いきみますが、成果がありません。
 指にクリームをつけて、お尻に挿入してみます。固い塊に触れました。それはまるで栓をしているかのようでした。
「大変だわ、バリウムが固まっているわ。」
 あの病院は遠いので、この状態で今から出かけるのはつらいです。私は近くのクリニックに行くことを決意しました。

 おなかでバリウムが固まってしまった私は、パニック状態になって、近くの胃腸科、内科の看板のあるクリニックに駆け込みます。
 問診票に「昨日朝、注腸検査を受けたときのバリウムがまだ排出されません。」と書いて提出します。先生の診察があります。ベッドの上に横になって、おなかを押さえられます。
「痛いですか。」
「いいえ、痛くはないですが、苦しいです。」
「ガスもたまっていますね。」
「はい。」
「検査の後、食事や水を十分とりましたか?」
「いいえ、あまり食欲がなかったので。」
「それが原因かもしれませんね。」
「そうですか。」
「いいでしょう、下から入れたものなので、浣腸で出すのが一番いいです。浣腸をかけさせてもらってもいいですか?」
「は、はい、とても苦しいので早くお願いします。」
 先生はナースに言います。
「浣腸、それから便を掘って、崩して下さい。」
「はい。」
 どうやら浣腸されて、摘便があるようです。大変なことになりました。

 処置室のベッドに横になります。ナースが言います。
「浣腸をかけますので、かべを向いて下さい。」
「はい。」
「失礼します。」
 ナースは下着を下げます。
 昨日、グリセリン浣腸、バリウム浣腸、そして空気浣腸を受けたのに、またグリセリン浣腸を受けなければなりません。本来、浣腸が大好きな私ですが、これまでの度重なる浣腸攻撃と、今回はトラブル対策のための浣腸なので、さすがにうれしさはなく、不安が100%という感じです。
「浣腸をかけます。」
 ナースの言葉にはっとします。
「はい。」
 お尻にゼリーは塗られませんでしたので、ゼリーは嘴管に塗ってあるのでしょう。温かい液が入ってきました。私は不安を感じながらも、わずかながら喜びも感じている自分に気づきました。そして自分に言い聞かせます。「バリウムが詰まったと言ってもお尻の内側まで来ているわ、命に別状はないはずよ、 ナースに任せて、処置の過程を楽しみましょう。」「そういう余裕があるかしら。」「きっと大丈夫よ、恥ずかしいかも知れないけど・・・。」「そうね、昨日の恥ずかしさに耐えた私よ、きっと今日も耐えられるわ。」

「液が入りました、できるだけ我慢して下さい、トイレはこちらです、出たら流さずに、私に見せて下さい。」
「はい。」
 トイレに入ります。今回はとても苦しいです。私のおなかは、バリウム プラス グリセリンのダブルパンチに見舞われているのです。この苦しみに耐えられるでしょうか。
 強烈な便意がやってきました。どうしてもがまんできません。お尻の穴が開きます。おなかに力を入れます。
勢いよく浣腸液が飛び出します。でも、その後が続きません。まるで、お尻に栓をしたかのように、お尻の中に塊がとどまっているのです。とても苦しい状態です。

 やむなくナースコールボタンを押します。ナースがやってきます。
「どうですか?」
「はい、液しか出ないんです、苦しいです。」
「先生に聞いてみますね。」

 すぐにナースが戻ってきました。
「ベッドで処置をしましょう。私が指で便をかき出します、苦しいかも知れませんが がまんして下さい。」
「はい。」
 私はベッドに横になって、ナースの摘便の処置を受けます。ナースが言います。
「お尻にゼリーを塗ります。麻酔の効果もあるゼリーですから、肛門が少ししびれるかも知れません。」
「はい。」
 ナースが手袋をして、指を挿入します。
「あっ、かなり固まっていますね。」
「そうですか。」
「少しずつかき出しますね、苦しいときは言って下さい。」
「はい。」
 恥ずかしいことになりましたが、ナースに身を任せます。ナースは私のウンチをほぐしながら、少しずつかき出します。白い塊がすこしずつ膿盆に入れられます。だんだんおなかが楽になってきました。
「もうかなり出ました、仕上げにもう一度浣腸をかけましょう。」
「はい。」
 2度目のグリセリン浣腸を受けます。何と昨日から数えて5度目の浣腸です。 今度はうまく行きました。おトイレで白い塊のすべてが排泄されました。白い塊の後に黄色のものも出たので、もう大丈夫でしょう。

 あんなに苦しかったおなかが、すっきりしました。先生とナースにお礼を言って、クリニックを後にしました。
費用もわずか600円台ですみました。浣腸だけなら費用はお安いものなのですね。
 私は2日間で十分過ぎるほど、浣腸を堪能したのでした。家で自分の顔を鏡で見ると、そこには満足感あふれる表情の自分が写っていました。

 注腸検査を受けた病院に検査結果を聞きに行きます。バリウムが詰まった件は内緒にしておきます。
 先生がフィルムを見ながらいいます。
「あなたは大腸がずい分長くて太いですね、虫垂も長いです。」
「そうですか、それが便秘の原因でしょうか。」
「それはそうとも言えますが、断定できません。腸が長くても便秘しない人もいます。」
「そうですか。」
「おおむね、腸はきれいですが、1カ所だけ気になる点があります、ここに黒い点が あります、小さいですが、何なのかわかりません。ポリープなのか、あるいはガンなのか、あるいは便なのかも知れません。」
「えっ、私の年令でガンになるんですか?」
「確かにガンは50代から増えます、しかし20代、30代でも大腸ガンはあります。」
「どうすればいいんですか。」
「内視鏡で見ましょう、S状結腸は問題ないですが大腸全部を診ましょう。」
「はい。」
「それではナースに予約をして下さい。」
「はい。」

 ガンかも知れないと聞いて、私は落ち込みます。そして検査の予約をして、暗いきもちで病院を後にします。自宅で病院でもらった説明書を読みます。注腸検査のように食事や下剤はそれほどきびしくありません。当日は朝食抜きで、洗浄液2Lを飲んで、それから検査があるようです。今度は「浣腸」の2文字がないのがちょっと寂しいです。

 私は大腸内視鏡検査を受けるため、4たび、あの病院を受診します。ガンがあるかも知れないということで、暗いきもちです。もちろんこのことは主人や家族には内緒にしています。ガンと宣告されたら、当然皆に知らせなければなりませんが・・・。
 受付で検査に来たことを告げると、2階にある個室に通されます。検査専用の個室のようです。細長く、狭い部屋ですが、机とソファーとTV、それにカーテンに仕切られたおトイレがあります。
ここなら、検査まで室外に出ることなく過ごせるようです。
 ナースがやってきます。私と同じくらいの年令です。薬剤の載ったトレイをかかえています。
「香谷えり子さんですね、今日は全大腸の内視鏡検査ですね。」
「はい。」
「午前中は前処置があります、この薬を飲んでいただきます、そして検査は午後からに なります。」
「はい。」
「お薬の説明をします。1時間かけて2Lの薬を飲んでいただきます。途中、トイレに何度か行っていただきます、6回以上行って下さい、そして便の状態をチェックさせていただきます。」
「はい。」
 ナースは写真で説明します。そこには便器にたまったうんちが写っています。何段階かの写真です。最後の写真を見ながらナースが言います。
「この写真のように、透き通ってオシッコのような色になったら検査オーケーです。このようになったら、流さずに私に見せて下さい。」
「はい。」
「ほかにご質問がありますか。」
「私、注腸検査で黒い点が見つかったんです、ガンかも知れないと言われました。」
「そういう患者さんは多いですよ、大抵は便の塊にバリウムが付着したものでしょう、 あまりご心配なさらないようにして下さい。」
「はい。」
「そうならないように、今日は腸を徹底的にきれいにして検査を受けていただきます。」
「はい。」
 なかなか感じのいいナースです。しかも美女です。

 検査着に着替えます。お尻の部分が露出しているので、ソファや椅子に座るとお尻が直接触れて、冷たく感じます。こんなファッションで街を歩いたら、きっと注目を浴びちゃうわ、などと余計なことを思います。
 時計を見ながら、10分で150ccくらいのペースで飲みます。味がよくなく、飲みにくい薬です。
 30分後におなかに違和感を感じたので、おトイレに座ります。第一弾の排便がありました。時間と回数をメモしておきます。
 1時間かけてやっとお薬を全部飲み終えました。あのナースがドアをノックして、入ってきます。
「全部飲みましたか?」
「はい。」
「お通じはどうですか?」
「はい、1回ありました。」
「そうですか、まだ何度か出ると思います、頑張って下さい。」
「はい。」

 午後1時になりました。私はまだお通じが3度しかありません。目標の6度には達していません。もちろん、うんちの状態もまだ汚れていて、検査できる状態にはほど遠いものです。
 ナースがやってきます。
「お通じどうですか?」
「3度しかありません。」
「まだ出そうですか?」
「いいえ。」
「そうですか、1度浣腸をしてみましょうか?」
「は、はい。」
 私は思わず返事をしてしまいました。
「それでは準備しますので、お待ち下さい。」
 ナースが去りました。今はお通じの気配はまったくありません。もう便意が止まってしまったので困っていたのです。ナースの言葉は渡りに船というところでしょうか。「浣腸は仕方ないわね、早くしていただいた方がいいわよ。」「そうかな?」私は自問・自答します。事前の説明書には今日は浣腸の文字はなかっただけに、それは意外なプレゼントと感じられ、私は驚くとともに、うれしさがこみ上げて来るのを覚えます。

 また、ナースがやってきました。トレイには120gのディスポ浣腸器とゼリーとティシュが載っています。「それではお通じをつけるために浣腸をしますね、ここでお尻を出して下さい。」
 私はソファの上に手と膝をつきます。ソファの幅が狭いので、横にはなれません。いわゆる四つん這いの姿勢です。恥ずかしいですが、同性でしかも同年令のナースなので、何とか許せちゃいます。大きな穴のあいた検査着なので、私はそのままお尻を差し出します。
「浣腸が入ります。」
「はい。」
 また浣腸です。最近もう何度も経験していますが、毎回、恥ずかしさとうれしさが混じり合った不思議な気持ちで浣腸を受けることになります。
「全部入りました、少しがまんして下さいね、チェックしますから出たものは流さないで下さいね。」
「はい。」

 私はおトイレに座ります。グリセリンはあまりがまんできません。いつも3分間でギブアップです。出たものを見ます。まだ汚れています。写真の4段階のうち、2段階くらいです。
 間もなくあのナースが来ます。
「えり子さん、出ましたか。」
「はい、でも・・・。」
「あ〜ぁ、まだだめですね。排便は確かこれで4回目ですね、このまままだと時間がかかっちゃうから、洗腸をしておなかをきれいにしましょう。」
「はい。」

 ”洗腸”という言葉にドキッとしました。
「洗腸って何ですか?」
「お尻に管を入れて、お湯で大腸を洗います。」
「あっ、そうですか。」
 これは浣腸の一種だと感じました。
ただ、液はグリセリンではなくお湯のようです。胸が更にときめく私でした。

 私は洗腸をしてもらうことになりました。想定外の展開の私の頭は真っ白になります。ナースが部屋に鉄製のスタンドと大きなガラス容器を持ち込みます。何だか仰々しいことになりました。
 ガラス容器がスタンドの上にセットされました。そして、容器にぬるま湯が入れられました。
「何だかこわ〜ぃ。」
「大丈夫ですよ、心配しないで下さい、苦しいときは止めますから、でもおなかをきれいにしなければ検査が受けられませんし、頑張りましょう。」
「はい。」

 私はまた四つん這いの姿勢をとらされます。スタンドの上に吊されたガラス容器からあめ色のゴムチューブが伸びて、先端はオレンジ色の穴のあいたチューブに接続されています。そして、そのチューブが私のお尻の穴と結ばれます。お尻とガラス容器の距離はおよそ1mです。まるでお尻に点滴装置が取り付けられているようです。
 医療処置とはいえ、また私はあられもない姿で恥ずかしい処置を受けなければなりません。空気浣腸に続いて私は恥ずかしい処置を受けます。ただ、今度は施術者が同性のナースであることがせめてもの救いです。
 私のお尻にオレンジ色のゴム管が深く、しっかりと挿入されました。あの大きなガラス容器と私の体がしっかりドッキングしたのです。
「お湯を入れます。」
「はい。」
 その容器の液量はグリセリン浣腸よりはるかに多いのです。ガラス容器に目盛りが刻んであって、1000の位置までお湯が入っています。あのバリウム浣腸の容器もずいぶん大きく感じたのですが、それでも300ccでした。今度は更にその3倍以上の1000ccなのです。

 私は検査技師の言葉を思い出しました。そして自分に言い聞かせます。「X線検査のときに技師さんが言ってたわ、大腸には2000cc以上入るって、だから 1000ccは大丈夫よ。」「うん、そうね。」
 不安の中で洗腸がスタートしました。
「液を入れます。」
「はい。」
 温かい液がゆっくり入ってきます。私の不安に反して、液の感触は心地よいものです。
「大丈夫ですか。」
「はい、きもちいいくらいです。」
「そう、苦しくなったら言って下さい。」
「はい。」
「なおも液の侵入は続きます。」
「どうですか。」
「まだ大丈夫ですか。」
「少しおなかが苦しくなりました。」
「がまんできますか、もう少しで終わりますが。」
「はい。」
「終わりましたよ、あまりがまんしなくていいですよ、出たら見せていただきます。」
「はい。」

 おトイレではさすがに多くの排泄がありました。何しろ1Lものお湯がおなかに入れられたのです。でもまだにごりがあります。ナースの宣告がありました。
「まだダメですね、あと2回くらいは洗腸を繰り返しますがいいですか。」
「はい。」

 結局、洗腸が2回ではなく、2回多く、4回繰り返されました。5回目でやっとおなかがきれいになりました。3度目以降はもう慣れてしまって、洗腸のきもち良さを堪能することができました。「これならもう何度でも歓迎よ・・・。」それほど私はこの浣腸にウエルカムのきもちがありました。これはグリセリン浣腸とは別の趣があります。
 想像していたほど苦しくなく、むしろきもちいいのです。浣腸される時間が長いし、器具や姿勢から被虐感をお大いに感じます。でも、これは私にとってはうれしいものでした。どうやら私にはマゾの気があるのかも知れませんね。ナースは洗腸といいましたが、実際は高圧浣腸というものであることを後で知りました。
 私は内心思います。「高圧浣腸、とてもいいじゃない、やみつきになりそうね。」

 この病院では3度のグリセリン浣腸、バリウム浣腸、空気浣腸、そして5度の高圧浣腸を受け、私は浣腸の気持ちよさ、奥深さを味わい尽くすことができました。この病院に感謝しなければなりませんね。

 すっかりおなかがきれいになった私は、いよいよ内視鏡検査を受けます。内視鏡室に移動します。ベッドで横になります。
 指に脈拍計が取り付けられます。横向きの姿勢をとらされます。検査着はお尻に大きなスリットがあって、ほとんどお尻が丸出しの状態です。もちろん、お尻の穴だけではなく、お隣の部分も見えちゃうのが恥ずかしく思います。腕に点滴をされます。
「何の点滴ですか?」
「水分とぶどう糖です、朝食と昼食抜きですし、何度も下痢があったので、糖分と 生理食塩水を補給します。」
「わかりました。」
 お尻にゼリーがたっぷり塗られます。先生が入室されました。ナースが言います。
「腸の動きを止める薬を注射します。」
 点滴のチューブを介して薬剤が注射されました。
「鎮静剤を注射します、眠くなりますが、眠ってかまいません。」
「はい。」
 やはり点滴のチューブを介して注射がされます。すぐに私はボォ〜として、間もなく意識を失います。
 ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・
 ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・
 ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・・
 私が気が付いたのは内視鏡室の隣にある休息室のベッドでした。もう検査はとっくに終わったようです。時計が3時を示しています。内視鏡室には2時に入ったので、それから1時間が経過していました。
 私はナースに声をかけます。
「あのぅ、検査はもう終わったんですか。」
「あっ、気がつかれましたね、気分はいかがですか。」
「大丈夫です。」
「そうですか、それでは先生からお話があります。」

 私は着替えて、診察室に移動します。先生からお話があります。結果を聞くのは、どきどきものです。でも、先生のにこやかな表情で、深刻な結果ではなさそうに感じました。
「えり子さん、お疲れ様でした。」
「どうもお世話になりました。」
「結論から申し上げます。あなたの大腸はとてもきれいで、問題ありません。」
「そうですか、注腸検査の黒い点は問題なかったのでしょうか?」
「あれは多分便でしょう、注腸では腸を完全にきれいにするのは難しいのですよ。」
「内視鏡検査のようにすればよいのでは?」
「ああいう風にすると、腸は確かにきれいになりますが、腸壁へのバリウムの付着が
 悪くなるのです、今の医学ではあれがもっとも良い方法なのです。」
「そうですか、異常がないことがわかってよかったですし、それに私の腸の状態を知る
 ことができました。」
「若いと言って安心できませんよ、またいつか検査を受けて下さい。」
「はい、来年また検査をお願いします。」
「はい、もちろんいいですよ、どうもお疲れさん。」

 私は自宅に戻ってほっとします。ちょっと気になることがありました。何度も浣腸などがあって、お尻の穴の状態が心配なのです。早速、鏡に写してみたり、指で触れてみたりします。特に異常はないようで、安心しました。「私のお尻の穴って、案外タフなのね・・・。」私はそう思いました。

 それにしても、結果が何ともなくって本当によかったです。それに、何といっても今回の検査はとてもエキサイティングでした。大好きな浣腸を何度となく経験できたのです。この病院と家の近くのクリニックで何度浣腸をされたことでしょう。
 数を数えてみます。グリセリン浣腸7回、バリウム浣腸と空気浣腸を各1回、そして高圧浣腸が5回です。 短期間に浣腸のフルコースを味わうことができました。体位もシムスの体位はもちろん、四つん這い、そしてあのうつぶせでの空気浣腸です。
 浣腸ばかりではありません、先生やナース、検査技師から何度もお尻を開かれ、指や器具、カメラまで挿入されました。おまけに摘便まで経験できたのです。
 私は恥ずかしさも十二分味わいましたし、浣腸のきもちよさも満喫しました。浣腸って奥が深いんですね。それがわかって、また体験できて、私はとてもしあわせです。そして、もちろん浣腸のおかげでウツなどあちらに吹き飛んでしまいました。

 私は思います。「大腸の精密検査、必ず、来年も受けるわよ、そしてまた浣腸のフルコースをしっかり堪能 させていただくわ・・・。」


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