SPACE銀河 Library

作:えり子

健康診断

 私、香谷えり子、30才のOLです。
まだ独身なんです。
これまで何人かの彼氏とつきあってきましたが、結婚したいと思う人
にはまだ巡り会っていません。
それに同期入社の子たちもまだ大半が一人なので、決してあせって
いるわけではありません。

 体も健康で、これといった病気もしたことがありません。
ただ、病気には入らないと思うんですが、女性に共通の病「便秘」が
ちょっとした悩みの種です。
でも、ひどくならないうちに「浣腸」をしちゃうんです。
これがあるから大丈夫なんです。

 ただ、病院と縁がないのは確かにありがたいことですが、たまには
病気になって、素敵な先生に診察していただきたいようなきもちに
なることがあります。
 それから便秘で浣腸するときも、看護士さんから浣腸されるシーンを
想像してしまいます。
たとえ同性であっても恥ずかしいかなと思ってしまい、ドキドキします。

 ところが最近突然そういうチャンスが巡ってきたんです。
今日はそんなお話をします。

 私が勤務する会社は全社員を対象に、毎年3月に健康診断があります。
メニューは尿、採血、視力、聴力の検査です。
ただし30才を過ぎると、胃がん検診、大腸がん検診、子宮がん検診が
メニューに新規に加わるんです。
 胃がんは検診車(バス)の中でバリウムを飲んでX線撮影をするんです。
大腸がん検診はスティックにうんちを塗ってそれを提出するのです。
子宮がん検診は子宮(膣)の分泌物を採取して提出するのです。
私、30才になったので今年初めてこの3つの検査を受けました。
ところがどれもすごい事態になったのです。

(その1)
 まず胃ですが、飲んだバリウムがなかなか排出されないんです。
同じ職場の40代の先輩女性事務員が以前にバリウムがおなかに詰まって、
開腹手術を受けたお話を聞いていましたので、そうなると一大事だわと思って
翌翌日に自主的に胃腸科病院の門をたたいたのです。
 まず腹部X線検査を受けると、バリウムはもう下まで降りてきていることが
わかりました。
先生は浣腸をして出しましょうと言われ、看護士さんに「グリ浣してあげて」
と指示を出しました。
 こんなに早く病院で浣腸されるチャンスが巡ってきたのは少々驚きです。
でもこれは私も覚悟していて心の準備ができていました。
病院での経験はありませんが、浣腸そのものは何度も味わっていますから・・・。
 早速120ccの大きな浣腸をされましたが、液だけしか出ず、肝心のバリウム
は排出されませんでした。
苦しさは相変わらずです。
 先生は今度は看護士さんに「掘ってあげて」と言われました。
今度は何をされるのだろうと不安でした。
私はビニルシートを敷いたベッドに横にされました。
看護士さんがガラス浣腸器をもってきて、手袋をして私に言います。
「お湯を入れて、便を軟らかくしながら便を掘り出します。」
「掘る。」って、そういうことだったんです。
看護士さんは浣腸器でお尻にお湯を入れて、アヌスに指を挿入し便をかき出し
始めました。
それはとてもつらく苦しく、恥ずかしいものでした。
でもバリウムの塊が次々にかき出されると、やっと楽になりました。
最後はもう一度仕上げにイルリガートルを使って高圧浣腸をされ、おなかを
洗ってもらって、やっとすっきりした気分になることができました。
ほっとして、医院を後にしました。
初めてのすごくエキサイティングな経験でした。

(その2)
 バリウム事件から1週間が経過しました。
職場の私の机の上に茶封筒に入った書類が届けられました。
それは健康管理室からのものでした。
何でしょうと思って開封すると書類が2毎入っていました。

 1枚の紙には以下のようなことが書いてありました。

*部*課*係 香谷えり子殿   *月*日 健康管理室 ***
<子宮がん検診の結果>
 細胞診の結果、異常が認められました。
つきましては以下医療機関にて、精密検診を受診して下さい。
 *町 ***検診センター
 *町 ***婦人科病院

費用は領収書提出により精算するそうです。
そして、白紙の診断書が添えてありました。
これを病院に渡し、記入してもらうのです。

 もう1枚は便潜血検査に関するものです。

あなたの便潜血検査結果は陽性でした。
下記指定医療機関にて1ケ月以内に精密検査を受診して下さい。
添付の診断書に結果を記入し、提出下さい。
なお、費用は領収書により精算します。

 *町 ***胃腸科病院
 *町 ***大腸肛門病院

こちらもやはり診断書が添付してありました。

 私はまず子宮がんの精密検診を受けることにしました。
私は婦人科病院は抵抗があったので、***検診センターを選びました。
受付で事情を話し、白紙の診断書を渡します。
代わりに問診表をもらい記入するように言われました。
 年令、身長、体重、既婚・独身の区分、妊娠・出産経験の有無、
 性体験の有無、これまでの婦人病歴、アレルギー、持病の有無、
 そして、生理の状態、更には今日の朝食摂取の有無、排便の有無
など、詳細に記入させられました。
 私は性体験なし、生理は順調、程度は軽い、朝食なし、排便なし
と記入しました。
もちろん性体験なしは偽りです。
その他は本当のことを記入しました。

 私は名前を呼ばれ、予備室に入ります。
看護士さんが言います。
「えり子さん、今朝は排便はなかったですね。」
「はい。」
「おなかに便があると検査できませんので、検査の前に浣腸をします。」
 これは予想外でした。
婦人科検診なのでお尻の穴は関係ないのにと思いましたが、郷に入って郷に従えの
言葉があるので、私は指示に従います。
それに、浣腸は私にとってはむしろウエルカムなのです。
予期せぬ幸せでした。
ベッドに横になり、120ccのグリセリンを受け入れました。

 まず超音波検査がありました。
これはおなかにゼリーを塗って、その上から超音波を当てて画像を見る検査です。
 次にX線CTの検査がありました。
これはおなかを輪切りにした写真を撮るものだそうです。
どちらも初めて経験するものですが、確かにおなかにうんちがたまっていては
検査ができないかも知れないと漠然と思いました。

 それが終わると、先生の診察があります。
先生はまず画像を説明してくれます。
画像には特に異常がないそうです。
先生が言います。
「念のため、内診をします。
 あなたは男性経験がないので、お尻から診察します。」
ちょっと驚きましたが、先生の指示に従います。
 私は体を横向きにさせられます。
先生は私の背中側にいて、右手の指を私のアヌスに挿入します。
そして、左手でおなかを押さえます。
腸の壁越しに指で子宮や卵巣に触れるようです。
不思議な感触です。
指が腸を刺激して、うんちを出したい感触に襲われます。
そして、左手でおなかを強く押さえられると苦しいです。
指と手がしばらく動き、やがて苦しい検査が終わりました。
浣腸はどうやらこの内診のためのようだと気づきました。
 これらも苦しく、恥ずかしく、エキサイティングな経験でした。

(その3)
 最後は大腸がん検診です。
肛門科医院は恥ずかしいので、私は胃腸科病院の方を選択します。
 事前に電話をすると、1週間後の*月*日に受診するよう指示がありました。
大腸カメラ検査の予約を入れておきますとのこと、そして次のような
注意がありました。
前日の夕食は具のないうどんを食べること、当日の朝食は食べないように
とのことでした。
 私はやむなく、1週間後、***胃腸科病院を訪問しました。
受付で便潜血検査結果が陽性であることを伝え、診断書を手渡しました。
問診表を渡されたので、年令や身長、体重、そして体調欄に「便秘」と
を記入しました。
 間もなく看護士さんがやってきて、私を3階の病室に案内します。
バス、トイレ付きでソファーがある個室で、ホテルのような部屋です。
TVもあります。
 そこで待っていると、大きなポリ容器と書類をもって別の看護士さんが
来ました。
説明があります。
ポリ容器の中身は腸管洗浄液だそうで、飲み方の説明があります。
2L入っていて、容器には目盛りが書いてあります。
 まず30分で1Lを飲むのです。
30分休んで、残りの1Lを飲みます。
 普通、飲み始めて15分くらいで排便が始まり、6回以上の排便があって、便が
透明になったら検査が可能になるとのことでした。
ただし、最初の1Lを飲んでも排便がない場合は看護士さんに連絡するように
とのことでした。
 後の1Lを飲み始めたとき、排便は流さず、かならず看護士さんを呼び、
チェックを受けることの指示がありました。

 TVを見ながら、私は洗浄液を飲み始めます。
液は冷たく、ちょっとしょっぱく、まずい味でした。
これを1Lも飲めるかしらと不安になります。
 30分かけて、やっと1Lを飲み終えます。
 私は休憩に入ります。
 ドアをノックして看護士さんが入ってきます。
「えり子さん、便は何度で出ましたか?」
「まだ1度も出ていません。
「えっ、そうですか。それは困りましたね。先生と相談しますね。」

 やがて看護士さんが戻ってきます。
「えり子さん、残りの液を飲むことができますか?」
「出ないので、苦しくてまだ飲めそうにありません。」
「それでは別の方法にしましょう。
 ベッドに横になって待っていて下さい。」
 
 看護士さんは注射器をもってきました。
お注射をします。
ちょっと痛いけど我慢して下さい。
何の注射ですか。
「腸の働きをよくするお薬です。」
 私は腕の血管に注射をされました。
 
 また看護士さんがやってきました。
今度は3人です。
一人は薬などが入ったトレイをもっています。
もう一人は点滴のビンとスタンドをもってきました。
もう一人はしろいフタのついた大きな容器をもってきてベッドの脇に
置きました。
2人は部屋を出て行き、1人が残りました。
「えり子さん、今からおなかを洗ます。
 おなかをきれいにしなければ、検査がうけられませんから。」
 そう言って、看護士さんは準備を始めました。
 点滴のビンと思ったのはイルリガートルだったのです。
 私は高圧浣腸をここで受けるんです。
 個室の静かな部屋なのがせめてもの慰めでした。
 トレイの中のオレンジ色ののカテーテルがチューブに接続されます。
「えり子さん、横になって下さい。」
「はい。」
「私は左を下に横になります。」
下着が下げられ、お尻の下にシートが敷かれます。
お尻にゼリーが塗られます。
「きもちが悪いですが、がまんして下さい。」
「はい。」
お尻にチューブが入れられ、すぐにお湯が入ってきます。
高圧浣腸はもう経験済みなので、ちょっと余裕があって、私は
お湯の入る感触を楽しみます。
「大丈夫ですか。」
「はい。」
「もうすぐ終わります。」
「はい。」
「終わりました。」
看護士さんはお尻にティシュの束を当てます。」
「5分くらいがまんして下さいね。
 トイレに間に合わないときはこれを使って下さい。」
 白い容器は腰掛け式のポータブル便器だったのです。
「流さずに見せて下さいね。」
「はい。」
 私は2分くらいでおトイレに入りました。
驚くほどたくさん出てしまいました。
第1回目なので仕方ありません。
これを見られるのは恥ずかしいです。」

「たくさん出ましたね。」
「透明になるまでがんばりましょうね。」
「はい。」

 今度は別の若い看護士さんがやってきました。
「もう一度します。」
「はい。」
その看護士さんはチューブをお尻に挿入したまま、私のお尻に体を密着
させます。
体は前のめりになって、顔は私の前の方が見えるほどです。
そのままの姿勢で液を注入させます。
何だかレズシーンのようで、別の恥ずかしさを感じます。
チューブが抜かれます。
彼女は抜いたオレンジ色のカテーテルの先端を顔に近づけます。
においを嗅いでいるようで、また恥ずかしくなります。
気のせいか。本当なのか、ちょっと不思議な看護士さんの行動でした。
看護士さんが去ったあと、おトイレに入ります。
まだ、つぶが少し残っていて、もう一度浣腸されちゃうのは確実ねと
感じました。
結果はやはりそうでした。

 また別の看護士さんがやってきました。
3度目の浣腸が始まります。
メンバーが毎回変わるので、恥ずかしさはありますが、浣腸そのものは
きもちよく、液が通過する時間は至福のときと感じます。
カテーテルを抜くと、看護士さんはいきなり私のおなかのマッサージを
始めました。
かなり力をいれて、私のおなかをマッサージします。
「これはとても効くのよ。」
「そうですか。」
 突然強い便意が襲ってきました。」
「あっ、漏れそうです。」
 彼女はポータブル便器のフタを上げます。
私はやむなくそのおまるに座ります。
そしてすぐに排泄が始まりました。
 同性とは言え、人の前での排泄はもちろん初めてのことで、たちまち
顔が赤くなってしまいました。
ほとんど透明の液でした。
しかし浮遊物もあります。
 彼女はそれを覗き込み、首をかしげます。
 ちょっと考えて、
「そのままにしておいてね。」
そう言って、部屋を出ます。
やがて、3人の看護士さんがやってきて、私の出したものをそれぞれ眺め、
判定会議が始まりました。
「微妙なところね。」
「3度も浣腸したのよ。」
「そうね、合格にしてあげましょう。」

その判定は私にとって、うれしくもあり、残念でもあり、私にとっても
微妙な判定でした。

 それから私は穴あきのパンツに着替え、階下に移動し、今度はお尻に
カメラを挿入されたのです。
ただし、催眠薬の薬を注射されたので、検査は一切記憶がありません。
目がさめたときはとてもきもちよかったです。
手でそっとお尻に触れると、べっとりゼリーが付着していたので、
やはりお尻にカメラを挿入されたに違いないわと想像できました。

 結果は全く異常なしでした。
検査後しばらくはおなかがツルツルになった感じで、うんちが毎日
きもちよくするするとお出ましになります。
洗浄液と高圧浣腸で、大腸がきれいに洗浄されちゃったようです。
費用は会社もちですが、わずか6,000円でした。

 私、思うんですが、これはとても得をした気分です。
きもちがいい高圧浣腸を何度もしてもらって、おなかがきれいになって、
しかも大腸の健康診断までしていただいたんです。
大腸洗浄施設よりはるかに経済的です。
 来年は自費でも是非この検査を再び受けたく感じました。
あっ、でも健康保険のむだ使いになるのでしょうか?
健康のため、それくらいはお許し願いましょう。

 会社の健康診断の結果、私はとてもよい経験をさせていただきました。
健康診断って、とてもいい制度ですね。

                              (浣)

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