SPACE銀河 Library

作:えり子

夢 七 夜

 ある春の日曜日の午前のことです。
えり子は自分のアパートにいます。
彼女は都内の女子大に通う20才の女の子です。
遅い朝食を終え、朝の定期便を順調にすませ、ゆったりした気分で、
コーヒーをすすりながら、物思いにふけっています。
「もう、すっかり春ねぇ。
 だんだん暖かくなるから嬉しいけど、春って何故かゆううつな感じがして、
 私、あまり好きじゃないな。
 それに、この季節にはよく怖い夢を見るの。」

 しばらく、そういうことを思った後、彼女は新聞を読み始めます。
生まれつき、好奇心が旺盛で、新聞や雑誌を読むのが好きです。
 最近は美容やダイエットのことが、気になって、医学や健康に関する記事に
着目することが多いのです。
今、読んでいるのも、医学に関する記事なのです。

今朝新聞を賑せているのは、医療ミスについての特集記事です。
患者を撮り違えたとか、メスをおなかに置き忘れたとか、違う薬を注射した
とか、誤って消毒薬を点滴したとかの事件が多く紹介されています。
「最近多いのよね。恐いわね。」

 えり子は一人でつぶやきます。
「例えば、浣腸されるとき、もしグリセリンの代わりに、劇薬を注入されたり
 したら、大変だわ。
病院では、うっかり、浣腸も受けられないわね。
 あっ、最近はディスポ浣腸が多いから、それは心配ないか。
ちょっと、考え過ぎだったわね。
 でも、待って。
最近のナースって、浣腸の実習をしないらしいから、何をされるか
わからないわよ。
 浣腸器をお尻の穴ではなくて、別の部分に挿入されたりしたら、
どうしましょ。」

 えり子は心配症なのです。
気になることがあったら、なかなか気持ちを切り替えることができないのです。
恐い映画を見ると、その日の夜には必ず、恐い夢を見ます。
ジュラシックパークを見たときは、恐竜に追いかけられて、お尻を噛みつかれた
夢を見ました。
タイタニックを見たときは、冷たい海に裸で投げ出される夢を見たのです。

そして、今夜もいやな夢を見ることに・・・。

(第一夜))

 夢七夜の第一夜です。
えり子はその日から7日間も続けて、病院に関する怖い夢を見ました。
初日の夢です。

えり子は外科病院に入院しています。
これから、手術を受けるのです。
麻酔を打たれ、ストレッチャーに乗せられ、今手術室に向かっています。
もう、意識はもうろうとしています。
一人のナースがストレッチャーを押しています。
私の体にはチューブがいくつか、くっついています。

 そのときです。
もう一人のナースが追いかけてきました。
「ちょっと、待って。」
そのナースは手に、大きなディスポ浣腸をもっています。
追いついたナースは言います。
「この患者さんね、浣腸するのを忘れていたのよ。
戻って、浣腸していい。」
「あらそうなの。でももう時間切れよ。手術室に着いたわよ。
無理して浣腸する必要もないんじゃないの。」

私はもうろうとしながら、その話を聞いていました。
そのときです。
手術室のドアが開きました。
中からまた別のナースが出てきました。
「患者さんはえり子さんですね。確かに受け取りましたよ。」
そう言って、私は中へ入れられます。

  私は懸命に叫びます。
「待ってちょうだい。
私まだ浣腸をしてもらってないのよ。
浣腸は是非して欲しいわ。
引き返して、浣腸して。」

  私は叫んだつもりでしたが、声がまったく出ません。
そして意識が遠くなってきました。
浣腸、浣腸、浣腸・・・」
 意識を失いながらも私は訴え続けます。
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・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
私は目が覚めました。
病室に戻っています。
ナースがやってきました。
「目が覚めたのね。ご気分はどう。」
「はい、悪くないです。
 体も痛くないです。
それより、ちょっと気になることが・・。」

「何、お話して。」
「私、手術の最中に、大の方をおもらししませんでしたか。」
「それは大丈夫だったわよ。」
「よかった。」

「ただ、あなた、手術室から戻って、ず〜っと、うわごとを言ってたわよ。」
「えっ、うわごとを。
 それで、私、何て言ってたの。」
「ふふふふ・・・。」
看護婦さんは笑って、答えてくれません。
「あぁ、恥ずかしいな。きっと私・・・」

(第二夜)
第二夜のお話です。
 えり子はまた、病院の夢を見ました。

 私は胃腸科病院に来ています。
おなかが苦しくて、しかたありません。
今、処置室のベッドの上で処置を待っています。
看護婦さんが、器具をもって来ました。
私に言います。
「はい、左を下にして。
下着を下げます。
足を曲げて、おなかの力を抜いて下さい。
あっ〜と言って下さい。」
私は素直に指示に従います。
看護婦さんが言います。
「入れます。」
お尻の穴に違和感を感じます。
次の瞬間に、暖かい液の感触を感じました。

「あれっ〜。」
私は声を出します。
私は言います。
「これ、浣腸じゃないですか。」
「そうよ。
あなたはひどい便秘だから、浣腸したのよ。」
私はまた、言います。
「いや〜ん。」

そのとき、別の看護婦さんが、道具をもって、やってきました。
「あれ、えり子さん、浣腸されちゃったの。」

先にいた看護婦さんが答えます。
「そうよ。」

後に来た看護婦さんが言います。
「浣腸はより子さんという方よ。隣りのベッドにいる人よ。
こちらは、えり子さんよ。ひどい下痢なの。
O157の疑いがあるから、細菌検査のため、肛門に採便棒を入れることに
なっているのよ。」

(第三夜)

夢七夜の第三夜のお話です。
今夜もえり子は夢を見ました。

私は婦人科検診のために、総合病院へ来ています。
待合室で待っていると、看護婦さんから呼ばれます。
「えり子さん、7番診察室へお入り下さい。
番号を確かめ、私は診察室へ入ります。

 中には先生と看護婦さんがいます。
看護婦さんが、言います。
下着をとって、ベッドへ上がって下さい。
私は指示通りにします。
 また、看護婦さんが言います。
足を少し広げて下さい。
私はそうします。

 先生が、鳥の嘴のような金属製の検査器具をもって、言います。
「内診します。」
 器具が挿入されました。
違和感を感じます。

 私は思わず声がでます。
「うっ、そこは・・・。」
先生が言います。
「おかしいな。この人どこも異常ないな。
看護婦さん、カルテを見せて。」
そう言って、先生はカルテを見ます。

 再び、先生は口を開きます。
「おや、誰ですか。
 婦人科の患者をこの肛門科の診察室に案内したのは。」

(第四夜)

夢七夜、第四夜の話です。
えり子はまた夢を見ました。

 えり子は産婦人科の分娩室にいます。
今、陣痛で苦しんでいます。
おなかが痛くてたまりません。
痛みがあまりにひどいので、半分意識がなくなっています。

 もうろうとして、ベッドに横たわっているえり子のところに、
看護婦がやってきます。
「えり子さん、今から浣腸をしますよ。
赤ちゃんが生まれるときに、汚れるとかわいそうでしょ。
浣腸をして、おなかを空にしておきましょうね。」

私は痛みのために、もう何もわかりません。
なおも、看護婦は言います。
「妊婦さんって、便秘の人が多いのよね。
でも、グリセリン150CCを浣腸すれば、大丈夫よ。
では、お尻を出してね。
入れますよ。
入りました。
楽にして下さい。
すぐ終わりますよ。
今、液が入っていますよ。
もうすぐ終わりますよ。
終わりました。
しばらく、このままがまんしてね。
体を元に戻していいですよ。

 看護婦はベッドの上を見ました。
「おや、これは何?
 あれ〜、大変、もう生まれちゃってるわ。」

(第五夜)

夢七夜です。
今日は第五夜のえり子の夢です。
 私、えり子はまた、病院でのできごとの夢を見ました。

 友人の*子が体調を崩して、胃腸科病院へ行くことになりました。
一人では不安なので、私に一緒に行って欲しいと頼まれました。
友人の依頼とあっては、断れず、やむなく私も同行します。

 待合室で待っていると、友人の名前が呼ばれます。
「*子さん、診察室へお入り下さい。」
「頑張って。」と私は声をかけます。
友人は不安げに診察室へ入りました。

 しばらくすると、青い顔をした*子が診察室から出てきて、急いで私の
ところへ、来ます。
「えり子、大変よ。私、浣腸しなければならないの。
 私、あれ苦手なの。
 えり子、私の代理で受けてくれない。」
  驚いて、私は答えます。
「代理出産は聞いたことがあるけど、代理浣腸なんて、聞いたことないわよ。」
また友人が言います。
「お願い。一生のお願い。お礼はするから。」

  あまりに真剣に友人が頼むので、私はしぶしぶ、代わって受けることに
 同意しました。
「いいけど、ただし今日1日だけよ。」

  でも、言葉とは反対に、私の内心は嬉しかったのです。
「浣腸をされるの好きだし、そろそろ病院で浣腸されたいなと思ってたところだわ。
 渡りに船と言うところかな。
 ラッキー、ラッキー。」
  そう私は思いながら、喜びの表情を隠しつつ、処置室へ入ります。
「*子さんですね。」
若い看護婦さんが言います。
「はい。」
私は低い声で答えます。
  また、看護婦さんが言います。
「今日は、今から処置や検査があります。
 ちょっと、大変だけど、頑張って下さいね。」
「はい。」

「それでは、これからの処置と検査について、ご説明します。」
「はい。」

「まず、肛門に体温計をいれて、体温を測定します。
 次に、肛門に圧力計を入れて、腹圧を測定します。
 次に、肛門に採便棒を入れて、細菌の検査をします。
 次に、肛門に潜血検査棒を入れて、潜血がないか検査します。
 次に、肛門に排便浣腸をさせていただきます。グリセリン150CCです。
 次に、肛門に高圧浣腸1Lを4回します。
 次に、肛門に肛門鏡を入れて、肛門の検査をします。
 次に、肛門に指を入れて、直腸の検査をします。
 次に、肛門に大腸カメラを入れて、大腸の検査をします。
 次に、肛門にバリウム浣腸をして、X線検査をします。
 次に、肛門に排便浣腸をして、バリウムを出します。
 次に、肛門に高圧浣腸をして、腸を洗います。
 次に、肛門に腸の薬を浣腸します。
 次に、肛門に栄養剤を浣腸します。

  これで、終わりです。
 大変だけど、頑張って下さいね」
 
「ぎゃ〜っ、助けてぇ、私、実は・・・。」

(第六夜)

夢七夜です。
今日はえり子の夢第六夜です。
 えり子はまた、病院でのできごとの夢を見ました。
 
 えり子はひどい便秘になってしまい、近くの胃腸科病院へ行きます。
恋人の良太が同行してくれます。

 診察の結果、えり子は医師から浣腸を命じられます。
えり子は浣腸を受けるため、処置室へ入って行きます。
 そこには、やさしそうな看護婦さんがいました。
「えり子さんですね。今から浣腸をしますね。」
「はい。」
  その前に、今日はあなた、一人でここへ来たの?」
「いいえ、恋人の良太と来ました。」
「それはよかったわ。ここへ良太さんを連れてきて下さい。」
「えっ、ここへですか。わかりました。」

 良太がえり子と一緒に処置室へ入ってきました。
看護婦さんが言います。
「良太さんですね。今からえり子さんに、浣腸をします。
 あなた、立ち会って下さる?」
「えぇ。」、「えぇ。」
 良太と私は驚いて、一緒に声が出てしまいました。」
  私は訴えます。
「恥ずかしいわ。良太、ここから出て行ってよ。」

  看護婦さんが口を開きます。
「あなた達、立会い出産ということはご存知ですね。
 ご主人が立ち会って、奥さんの手を握ると、奥さんは安心して、出産が
 できるのです。
 あれと、同じで、ここの病院では立会い浣腸をするのです。

  若い女の子の場合、浣腸をすると聞くと、拒否したり、泣いたり、
 わめいたりと大変なのです。
 恋人が手を握ると、落ち着いて、すべてうまく行くのです。

  それでは、えり子さん、ベッドに横になって下さい。
 良太さん、えり子さんの手をしっかり握っていて下さいね。」
 
  私はベッドに横になります。
 良太が私の手をしっかり、握ってくれます。
「さあ、えり子さん、入れますから、あ〜っと言って。」
 私は言われた通りにします。
「あ〜っ。」
良太も一緒に言ってくれます。
「あ〜っ。」
浣腸液がおなかに入ってきました。
「うっ〜。」
良太も手を握りながら、言います。
「うっ〜。」
終わりました。
看護婦さんが、言います。
「良太さん、時計を見て、えり子さんを励まして下さい。」

良太は私の手をしっかり握りながら、言います。
「えり子、しっかりがまんするんだぞ。頑張って。あと4分。」
「うっ〜、うっ〜、う〜っ、う〜っ。」
「えり子、しっかりがまんするんだぞ。頑張って。あと3分。」
「うっ〜、うっ〜、う〜っ。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
「えり子、しっかりがまんするんだぞ。頑張って。あと1分。」
「うっ〜。」
「5分経ったぞ。よく頑張ったね。さあ、いっしょにトイレへ行こう。」

 えり子は良太に支えられながら、おトイレへ向かいます。
良太は左手で私のお尻をおさえ、右手で私の手をとって、進みます。
えり子は良太と一緒に歩きながら、思います。
「うん、立会い浣腸って、いいかも知れない・・・。」

(第七夜)

夢七夜、えり子の夢第七夜(最後)です。
今日もえり子は恐い夢を見ました。

私、えり子は外科病院に勤務している20才の看護婦です。
ナースの中では一番若いので、毎日張り切って、働いています。
先輩達は汚れる仕事はすべて私に押しつけるのです。
特に、浣腸は私の役目になっているのです。
でも、これ、私きらいじゃありませんよ。
するのも、されるのも大好きです。
1日10人は面倒見ているから、1年では、3000人以上に
浣腸することになりますね。
今や、私、浣腸の達人ですよ。
もう、いちいち数えなくても、一目見ただけで、お尻の穴のシワの本数が
わかっちゃうようになりました。

入院患者のおじさんには、
「浣腸は是非えり子さんに・・・」
とか言って、ご指名もかかるんです。

 また、中には、Hな患者さんもいるんですよ。
「えり子さん、浣腸された経験ある?」
とか、
「えり子さん、今まで何回浣腸された?」
と聞くHなおじさんもいるんですよ。
だから、私
「そう、100回くらい経験したかな。」
なんて、言ってご返事するの。
おじさんったら、目を丸くしてたわ。
でも、実際はそれよりもはるかに多く経験しているけれどね。

ある日、10才のかわいい女の子が入院してきたの。
私、その子に浣腸をすることになったの。
その子の病室に入ったとき、私思った。
「あれっ、この子、誰かに似ているなって。」
でも、どうしてもそれが誰か思い出せないの。

イルリガートルの準備をしながら、また考えた。
のどのところまで、出ているのに、思い出せないの。
準備ができたので、彼女のお尻の穴を開いて、
キシロカインゼリーを塗ろうとして、あっと驚いた。

お尻の穴の形、色、香り、それにシワの数、さらに決定的なのは
お尻の穴にほくろがあるの。
私、背筋が一瞬冷たくなった。

10年前のことを突然、思い出した。
私、病気になって、大学病院に入院してた。
ある先生が私の部屋へやって来て、
「研究のために、君の細胞を少しもらうよ。」
 と言って、私、処置をされた。
 実験に是非必要だからと言ってたわ。
「今、やっと気がついたわ。
 この子が似ているのは外でもない、実に、この私なのよ。
 この子の肛門は私のとまったく同じよ。
 顔も私が10才のときとそっくりなのよ。
 この子は私のクローン・・・?。」。

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