SPACE銀河 Library

作:えり子

実  習

 私、えり子は長男龍一を寝かしつけて、やっと一息ついています。
今、居間でお茶を飲みながら、新聞に目を通しています。
このお昼下がりの時間は私にとって、ほっとする時間帯なのです。
でも新聞にはあまりよい記事がありません。
「政治はごたごたしているし、経済もデフレだそうだし、この分だと、
 龍太のお給料も あまり上がらないわね。」
 と、えり子は感じています。

 社会面に目を通します。
潜水艦の事故やJRの事故関連のことがまた出ています。
そして、さらに気になることがあります。

 まず、看護士さんが関与した事件のことです。
「こんなことがあるなら、安心して、点滴も受けられないわね。
 どんなお薬を注入されるかわかったものじゃないわ。
 浣腸だって、安心じゃないわ。
 ディスポは心配ないけど、ガラスシリンダやイルリガートルの浣腸は不安はあるわ。」
 
 もうひとつ気になる記事があるんです。
それは助産士に関する記事です。
法律が改正されて、いよいよ助産士が誕生するかも知れないんです。
「助産士に出産を委ねるとなると、どんなに恥ずかしいことでしょう。」

 私はまた心配になります。
と言うのも、早くも私は第2子を身ごもっているのです。
長男はまだ、やっと1才半だと言うのに、もうおなかは大きくて、9か月を迎えています。
看護士も助産士のこともひとごとではないのです。

「あまり心配しても仕方ないわね。
 何だか眠くなってきたわ。
 私も子供に添い寝することにしましょ。」

 私は長男に添い寝をして、至福の時間を迎えました。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ハッとして、私は目が覚めました。
時計を見ると、たった30分しか寝ていません。
気になることを思い出したのです。

 私は母親へ電話します。
「お母さん、私、明日、病院へ検診に行こうと思うの。
 龍一の面倒を見てくれない。」
「いいわよ。
 朝、7時にこちらを出るから、8時には着くわよ。
 ところで、龍一と龍太さんは元気なの。」
「うん、とても元気よ。」
「あなたは順調なの。」
「うん、むくみなんかもないし、体重の増加もふつうだし、特に異常はないわ。
 おなかの赤ちゃん、とてもよく動くわ。
 ただ、ちょっと・・・。」
「どこか具合悪いの。」
「うん、便秘がひどいの、そのせいか、ぢも悪いの。
 明日は婦人科だけではなく、内科と肛門科も受診しようと思うの。」
「そう、それがいいわね。

「ところで、引っ越したばかりでしょ、よい病院が見つかったの?」
「うん、龍太が評判のいい病院を探してくれたのよ。
 総合病院だから心配ないわ。」
「そうなの、時間のことは気にしなくっていいわよ。
 ゆっくり診察してもらうといいわ。」
「ありがとう、じゃあ、明日はお願いね。」


<実習その2>

 私、えり子は長男の龍一を母に託して、病院へ向かいます。
この地域の中核的な総合病院です。
立派な建物で、安心感があります。
病院の玄関に案内板があります。
その脇に注意書の看板があります。

「当病院は医師、看護婦、看護士の養成に協力しております。
 実習生もおりますが、ご協力下さい。」
それを読んで、えり子は何だか悪い予感を感じます。

 受付をします。
この病院は初めての受診です。
健康保険証や前の病院の紹介状を見せます。
婦人科の他に内科と肛門科を受診したいと告げます。
問診票に、妊娠9カ月、便秘、痔と記入して、待ちます。

 しばらくすると、アナウンスがあります。
「**えり子さん、内科3番のドアからお入り下さい。」

 先生の診察が始まります。
先生は50代の素敵な感じのお方で、あのタレントのTさんによく似ています。
それはいいのですが、気になることがあります。
ふつうは先生と看護婦さんが1人ですが、今日は様子が違います。
別に若い看護婦さんがいます。
20才前後で、にきびがあって、初々しい感じです。
胸には実習生と書いた名札をつけています。

 3人に囲まれて、えり子は気後れします。
先生に便秘の日数を聞かれます。
4〜5日出ていないと答えます。
ベッドに横になるように言われます。
先生がまた言います。
「おなかが大きいので、おなかの診察はできません。
 代わりに、直腸診をします。」

 恥ずかしいことになりました。
でも、あのTさんによく似たこの先生なら許せます。

 ベテランの看護婦さんが、体を横にするように指示があります。
私はベッドで大きなおなかを横にします。
看護婦さんが言います。
「下着を下げます。」
恥ずかしいけど、仕方ありません。
指示に従います。
見習い看護婦さんも、きょとんとしながら側で見ています。
先生が、指にゴム手袋をはめて、言います。
「きもち悪いですが、我慢して下さい。」

 この診察は前にも経験したことがあるのですが、今日は3人に
見られながら受けるんです。
私は恥ずかしくてたまりません。
でも、実習に協力するためにはがまんしなければなりません。

 お産を経験すると、怖いものも恥ずかしいものもなくなると
いう話を聞いたことがありますが、そんなことはありません。
お尻の穴を見られるって、今でもとても恥ずかしいです。

 先生の指が侵入してきました。
お尻の穴の内側をぐりぐりとかきまぜます。
う〜ん、きもち悪いような良いような不思議な感覚です。
指が奥に動くと、うんちがしたい感覚に襲われ、思わず
「あ〜ん、あ〜ん」と声が出てしまいます。
恥ずかしいながらも、きもちよさも感じてしまいます。
しかも、あのT先生にされているんです。
なおさら、感じちゃいます。

 でも、こんな先生の行為って、ふつうなら、犯罪行為にもなりそうな
光景です。
若い女性のお尻の穴に指が挿入され、中をかきまぜられているんです。
病院の中だからこそ、許されることなんだと、私は思います。

 先生の指が抜かれました。
看護婦さんがティシュでお尻を拭いてくれます。

 T先生が言います。
「かなり、たまっていますね。
 苦しいでしょう。」
「はい。」
「ぢも少し悪いようですね。
 このまま放置しておくとよくないですよ。」
 すぐに、楽にしてあげましょう。」
「はあっ。」
「看護婦さん、浣腸の準備をして。
 イルリで500!」

 私は心配になって、先生に聞きます。
「妊娠しているんですが、大丈夫でしょうか。」
「安定しているようだから、よいでしょう。
 それに、グリセリンは使いませんから。」


<実習その3>

 浣腸を命じられた私は私はとなりの処置室に通されます。
ここは机と椅子が4つ、ベッドが4つあって、1つの椅子では患者さんが採血を、
もう一つの椅子ではやはり患者さんが血圧測定を受けています。
そして、手前のベッドでは患者さんが、寝ていて点滴を受けています。
患者さんは皆男性です。

 私は奥のベッドに寝るように言われます。
看護婦さんと実習生の二人で作業が進められます。
看護婦さんがトレイにキシロカインゼリーやチューブ、ティシュを載せて、持って
来ました。
 実習生がイルリガートルとスタンドをもって来ました。
また、実習生が戻って、今度はお湯のたっぷり入ったピッチャーを持ってきました。
そして、もう一度奥から白い椅子のようなものを持って来ました。

 看護婦さんが言います。
「えり子さん、今から浣腸をしますね。
 心配しなくていいですよ。
 おなかはあまり痛くなりませんから。
 すぐ終わりますからね。」

 看護婦さんが私に言います。
「えり子さん、実習生が処置をしますが、いいですね。」
「はい、お願いします。」
 やはり、掲示板に書いてあったことが現実になりました。
私の予感は当たったのです。
でも、少しでも医学の発展になればと、私はあきらめます。
それに、浣腸は私、きらいじゃないし・・・。 

 他の患者さんがいるこの場所で、浣腸の宣告と施行です。
これは恥ずかしさが増します。
青いカーテンが引かれます。
 看護婦さんが指示をしながら、実習生が作業をします。

 看護婦さんが実習生の*子さんに言います。
「あなたが経験して見たいと言ってた浣腸の実習が早速できますね。」
「はい。」
看護婦さんが実習生にまた、言います。
「私が看護学生のときは、浣腸の実習があったのよ。
 学生同士がペアを組んで、互いに浣腸をし合うのよ。
今はそういう実習はないそうね。」
「はい、講義があるだけなので、皆、是非実習したいと感じています。」

 また、看護婦さんが実習生に言います。
「*子さん、よい機会だから、浣腸のこと、よくお勉強してね。」
「はい。」

「おやおや私は実験台ですか。」
私はちょっと情けなくなります。
ナースがまた口を開きます。
「去年の新人ナースは浣腸のとき、ノズルを入れるとき、
 入れる穴を間違えちゃったのよ。
 ほんとうに、看護学校で浣腸の実習がないのは大問題ね。
 私は目が離せなく、困っちゃうんだから。」
その話を聞くと、私、えっと驚きました。

 私、ちょっと別のことが気になったので、看護婦さんに聞きます。
あのボトルのお薬は何ですか。
「ああ、ご心配なく、あれはお薬ではなく、ただのぬるま湯ですよ。」

 看護婦さんは手取り足取り、操作を指導しながら作業を進めます。
看護婦さんが言います。
「穴を間違えないでね、そう、肛門の方よ。」
実習生が私のお尻を開いてゼリーを塗ります。

それから嘴管を挿入します。
 もう浣腸は何度も受けているので、この感覚はなつかしいものです。
 看護婦さんが言います。
「えり子さん、お尻の方に入っていますね。」
「はい。」
私は小声で答えます。
 また、看護婦さんが実習生へ言います。
「*子さん、いいですか、嘴管を挿入したら、必ずこうして患者さんに
 入っている位置を確認するんですよ。」
「はい、わかりました。」
*子さんが、答えます。
何だか、私にとっては、とても恥ずかしいやりとりでした。

 また、処置を実習生にさせながら、看護婦さんが言います。
「液を入れます。」
 そして、
「えり子さん、液が入って行くのがわかりますか。」
「はい。」

 うん、温かい液の感触は悪くありません。
むしろ、きもちいいくらいです。
私にとって、浣腸の処置は恥ずかしいながらも、半ばきもちいいものに
なってきています。

「終わりましたよ。
 しばらくがまんして下さい。」
「はい。」
「おなかが大きいからトイレに行くのは大変でしょ。
 ここで出して下さい。」
看護婦さんは先にもってきた白い椅子を示します。

 驚きました。
これはポータブル便器だったんです。
これは初めての経験です。

 看護婦は引っ込みますが、実習生は私の側を離れません。
あっちへ行ってとも言えずに、私はがまんします。
もう限界です。
おなかをかかえて、私はやっとの思いで、ベッドから降りて
便器に座ります。
すぐに放出が始まりました。
人に見られながらの排泄は超恥ずかしいです。
これも、他では大変恥ずかしいことです。
やはり、病院だから、これが平気で行われるんです。

 やっとすべてが終わりました。
実習生がティシュでお尻を拭いてくれます。

 実習生が看護婦さんを呼びます。
看護婦さんと、実習生は便器の中を覗きます。
「えり子さん、たくさん出てよかったですね。」
「はい、すっきりしました。」
 私は恥ずかしさがこみ上げる中、やっと答えます。

 実習生が便器をもって行きました。
カーテンが開かれます。
 点滴の男性患者が私の顔をジロッと見ます。
また、恥ずかしさで顔が赤面します。
看護婦さんに外で待つように言われます。

 浣腸は何度受けても恥ずかしいですが、回数を重ねる毎に
何かうれしさのようなものが次第に芽生えている気がしています。
 確かに、女性として生まれた場合、便秘や出産のため、一生のうちに
何度も浣腸の処置を受けなければならないんです。
これは避けられないことなんです。
そうであれば、浣腸を受ける度に、それは恥ずかしく、いやなものと
感じるばかりではつまらない気がします。
そうではなく、むしろ、その中にうれしさやありがたさも見い出す方が
よいのではと思っています。
そうすれば、いやなものが、うれしいものに感じられるんです。
浣腸されるのも、恥ずかしいながらも、うれしく、楽しく、それが
歓びになっちゃうんです。
私の考え方って、おかしいですか。


<実習その4>

 私は浣腸の興奮から冷めて、待合い室で静かに待ちます。
アナウンスがあります。
「**えり子さん、肛門科1番へお入り下さい。」
肛門科という言葉の響きが、また、恥ずかしいことです。

 私はあわてて、そこへ向かいます。
今度は先生と看護婦さん、それに若い男性の3人がいます。
また実習生でしょうか。
今度は男性なんです。
看護士さんでしょうか。
しかも、ここは肛門科なんです。
また、私は恥ずかしい思いをしなければならないようです。

 看護婦さんが言います。
「えり子さん、ベッドで横になって、お尻をこちらに向けて、
 下着を下ろして下さい。」
 私は指示通りにします。

 ベッドが電動で上方へ持ち上げられます。
 先生はカルテを見ながら言います。
「えり子さん、内科で浣腸をしましたね。
 便は出ましたか。」
「はい、たくさん出ました。」
「そうですか、それでは診察します。
「あっ、もっとお尻を突き出して下さい。
 そう、それでいいですよ。」

 今日は私と、研修医の両方が診察をします。」
「はい。」

 この若い男性は看護士ではなく、お医者さんだったんです。
今度は若手タレントのあのN君に似ています。
お医者さんの姿がぴったりです。
N君なら許してあげちゃいます。
私は喜んで研修に協力する気になりました。

 先生はまた、ゴム手袋をして、私のお尻の穴に指を挿入します。
内科でも受けた診察がまた繰り返されます。
でも、これは私、もう好きになっちゃいました。
うれしいくらいです。

 先生は指を挿入して、内側で指をぐるぐる動かします。
いいきもちです。
ずっと続けてほしいくらいです。
指がすぽっと抜かれます。

 今度は研修医さんの番です。
同じようにされます。
ラッキーです。
N君にそっくりなこんな先生にお尻を診察していただけるんです。
何とラッキーなんでしょう。

「どうぞ、この先生なら、私、お尻をお貸しいたしますから、たっぷり
 研修して下さいな。」
私は心の中で叫びます。
N君は私の心を読んだかのように、時間をたっぷり取って、
私のお尻の中を指で探索しています。
いいきもちです。
うんちをしたい感覚が度々襲ってきて、天国にも上るような感じです。

 触診が終わり、今度は肛門鏡を使っての内診です。
金属製のアヒルの嘴のような器具をお尻に挿入されます。
まず、先生が診察をします。
指とは違う冷たい感触です。
器具が開かれ、私のお尻の穴がこじ開けられて、すーすーした感じです。
お尻の中を覗かれるなんて、恥ずかしいことですが、成り行きに任せる
しかありません。

 器具が抜かれ、今度はN君が同じ診察をします。
やはり、時間をかけて、調べます。
N君にお尻の中まですっかり見られてしまって、嬉し恥ずかしという感じです。
研修制度のおかげで、私は恥ずかしいながらも、いい思いを2度もしたんです。

 診察が終わりました。
先生が言います。
「いぼ痔がありますが、軽傷です。
 座薬を出しておきますから、排便の後に挿入して下さい。」
「はい、ありがとうございます。」


<実習その5>

 私はまた、待合室で待ちます。
まだ、肛門科での診察の興奮の余韻が残っています。
 私は思います。
「あ〜あ、また恥ずかしい診察を受けたわ。
 そう言えばこれまで、私、世の中のために役に立つことを何もしたことが
 ないわ。
 でも、今日は私のお尻の穴が実習生達のために、少しは役に立ったかも
 知れない。
 そう考えると、あの恥ずかしさも無駄ではないわね。
 それに、私自身、とてもエキサイティングだったし・・・。」
 
 また、アナウンスがあります。
「**えり子さん、婦人科2番へお入り下さい。」

 処置室で看護婦さんが血圧測定をします。
その後、検尿のコップを渡されます。

 しばらくして、診察室に呼ばれます。
そこにはまた3人のスタッフがいます。
また、男性2人と看護婦さんです。
男性は若い方で、何とタレントのあのT君に似ています。
実習生という名札を胸につけていて、どうやら今度は看護士さんのようです。

 先生がカルテを見ながら言います。
「えり子さん、9カ月ですね。
 何か変わったことはありますか。」
「いいえ、順調です。」
「糖もたんぱくも異常ありませんよ、内診します。」

 私は下着を取って、検診台に乗ります。
台の中央にカーテンが引かれ、先生や看護婦さんの顔は見えません。
先生の内診が始まりました。
カーテンの向こうでT君が私のあの部分を見ていると思うと、
恥ずかしくなります。
 でも、かわいいので、許しちゃいます。
 
 それから超音波の検査がありました。
やはり、あのT君が付き添ってくれました。
T君はちゃんと私に気を使ってくれています。

 診察を終え、廊下に出ると、私はおなかに痛みを感じます。
下痢の前の痛みに似た感じです。
すぐにおトイレに向かいます。
お尻からではなく、前の方から水のようなものが出ていて、出血も
ありました。
 私は婦人科窓口に行き、異常を訴えます。
T君がいて、先生に話をしてくれます。

 先生の内診が再びありました。
私はその場で入院を宣告されます。
このまま出産になるかも知れないというのです。
子宮が開きかけているそうなんです。

 T君が私の家族に連絡します。
私は病室で着替えをします。

 ナースとT君がやってきます。
手には剃刀と石鹸、蒸しタオルをもっています。
ナースが言います。
「えり子さん、出産に備えて、剃毛をしましょうね。
 自習生が担当しますが、間違いがあるといけないので、
 私が立ち会います。」
 
 驚きました。
男性に剃毛をされるんです。
でも、T君ならかわいいから、許します。

 看護婦さんの話によると、T君は助産士志望だそうです。
T君はぎこちない手つきで作業を始めます。
体毛を男性に剃られるなんて、通常なら異常な行動です。
まるで、SM小説の世界のようです。
「病院だから、こんな行為も許されるんだわ。」
私は毛を剃られながら思います。
でも、T君は真剣に仕事をしてましたよ。
ぎこちなかったけど、まじめな態度は好感がもてました。

 剃毛が終わって、また、ナースとT君がやってきます。
「えり子さん、浣腸をしましょうね。
 えり子さんは、出産は2度目だから、なぜ浣腸をするか、
 もう、説明はいらないわね。」
「はい、お願いします。」
「実習生が施浣します。やはり間違いがあるといけないので、私が
 立ち会います。」

 やはり、浣腸があるんです。
しかも、男性からされるんです。
これは、女性にとっては大変恥ずかしいことです。
もし、助産士制度が確立したら、こういうことは日常茶飯事に
行われることでしょう。

 う〜ん、どうなんでしょうね、これは。
 私の場合は、元々浣腸されるの好きだし、今回はかわいいT君が
担当するんです。
当然、許しちゃいます。
でも、やはり恥ずかしい。
しかも、2人がかりでやられちゃうんです。

 T君は大きなディスポ浣腸を握っています。
150CCはある代物です。
浣腸を手にもったT君の姿って、様になって、似合っていますよ。
T君が何だか済まなさそうな表情で言います。
「えり子さん、楽にして下さい。
 入れますよ。」
「はい。」
「今、入っています、もうすぐ注入が終わりますよ。」
「終わりました。」
「はい。」
 T君は紙でやさしく私のお尻を拭いてくれます。
 仕事はとてもていねいです。
「トイレはこちらですよ。」
 T君は私の手をとって、おトイレへ誘導してくれます。
ちょうどエスコートされるように・・・。
 私は感じます。
「これなら、男性に浣腸されるのも悪くないかも・・・。」

 私はベッドに戻ります。
また、T君がやってきます。
律儀な態度で私聞きます。
「えり子さん、出ましたか。」
「実は内科でも浣腸があったので、ほとんど出ませんでした。」
「そうですか、いいでしょう。
 何かあったら、ブザーで呼んで下さいね。」
「はい、ありがとう。」
何て、ていねいで、やさしいんだろう。
いいわね、これって。

 浣腸の後、おなかの痛みが一段と強くなってきます。
私はブザーを押します。
今度はT君が先生とやってきました。
先生は言います。
「えり子さん、分娩室に移りましょう。」
 私は出産用の衣に着替えて、分娩室に移動します。


<実習その6>

 私は分娩室のベッドの上にいます。
いよいよ私の出産が始まります。
ナースとT君が私をベッドの上にのせ、私の体に分娩監視装置をつけます。
「えり子さん、頑張って下さいね。」
T君が励ましてくれます。
「はい、ありがとう、頑張るわ。」

 助産婦さんと、助産士志望のT君が私にずっと付き添ってくれます。
2人の前で、私は手足をしばられ、足を大きく開いて、前はもちろん、
後ろの部分も露出させられているんです。
確かに、恥ずかしいことです。
でも、これも病院だからこそ、許されるんです。
私は自分に言い聞かせます。
でも、そういうことをいちいち気にする余裕はありません。
痛みが波のように次々に押し寄せてくるからです。

 T君が私に声をかけます。
「いきんで下さい。」
「いきみをやめて。」
「また、いきんで下さい。」
 ・・・・・・
 強くいきむと、うんちが出ないかと心配になります。
T君の目の前で、うんちを漏らしちゃったら、どうしよう。
・・・・・・・
 でも、幸いなことに、浣腸の効果か、うんちは出ませんでした。
・・・・・・・ 
 私のおなかの痛みはどんどん強くなって、ピークに達します。
「赤ちゃんの頭が見えてますよ、頑張って。」
 ・・・・・・
 T君が大きな声で叫びます。
「生まれましたよ、えり子さん、おめでとう、女の子ですよ。」
T君は感動のあまり、目にうっすらと涙を浮かべています。

 私はほっとしました。
生まれたばかりの赤ちゃんは大きな声で泣き始めます。
T君が赤ちゃんを手で抱えて私の前に差し出します。
 赤ちゃんは大きな声で泣きながら、手足をばたばたと動かしています。
そして、私の顔の前で、大きな声で泣きながら、足で私の顔を蹴ります。
ちょっと、顔が痛いです。
そして、なおも、その子は私の顔を蹴り続けます。

 声はますます、大きくなります。
その声は聞き覚えがあります。
「あれっ・・・」
 
 突然私の顔の前に龍一が現れます。
そして、私の顔を手で叩いています。
私は我に帰りました。
私、眠っていたんです。
あまり時間が長いんで、龍一が目を覚まして、私を起こそうとしているんです。
全部夢だったんです。

 私は感じます。
「何だ、夢か。でも、すごい夢だったわ。
 最近、よくTVで医学系のドラマを見るせいかな・・・。」
 
「ごめん、ごめん、ママったら、いい夢を見ていて、つい寝過ごしちゃった。」
私は龍一をなだめます。
 
 突然、電話が鳴ります。
受話器を取ると、母からでした。
「あなた、明日病院に行く予定でしょ。
 どうするの。」
「もちろん、行くわよ。
 そして、ちゃんと検査をしてもらうわよ。
 婦人科だけではなく、内科と肛門科も受診するつもりよ。」
「そう、それはいいわね。龍一は私が預かるわね。」
「うん、ありがとう、それから、お母さん、最近助産士制度が話題に
 なってるでしょ。
 お母さん、あれ、どう思う。」
「どう、思うって・・・。」
「うん、あれって、私、絶対いいと思う。」
「えり子、突然どうしたの。」
「うん、ちょっと、・・・。」

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